カナダでは日付が変わってしまってから書いていますが、金曜日は朝4時ごろに目が覚めて、家人を起こさないよう暗闇の中をスマホとパソコンを持ってゴソゴソとリビングへと移動。
そこでGPFのペアFSの演技をフォローしました。(その前のジュニア女子のFSも観ていたんですけど)
すごい試合展開でしたね。
上位3チームに限定して感想を述べますと:
予想通り、ハーゼ&ヴォロディン組が彼らの強みであるフリーの演技でノーミスを披露し、150点に届こうかという高得点を叩き出しました。GPスケートカナダ、そしてGPフィンランディアでちょっと珍しいミスが続いていたので、「ハセヴォロらしい」演技が見れてとても気持ち良かったですね。
今シーズンの彼らのフリー・プログラムはブノワ・リショーさんの振り付けで、かなり重厚な曲に乗せているのでミネルヴァ&ニキータ達のように高身長で彫刻的なペアでなければ演じるのは難しいと思われます。
しかし逆に言えば、彼らだからこそ似合う、という曲調をリショーさんはあてがったのでしょう。クリーンに滑ると効果絶大、といった感じのプログラムです。
2位に入ったサラ・コンティ&ニコロ・マチー組は、SPに続いてパッションの溢れるフリー演技でした。
(あまりステレオタイプ化するのも何ですが)「イタリアっぽい」チームである彼らは、感情表現に長けていて、主なエレメンツがそこそこ決まると一気に勢いに乗って観る者を引き込んでいきます。
今回、名古屋のファイナルで見せたような演技を自国開催のオリンピックで再現出来たら会場はどんなに盛り上がるだろう、と思った事でした。想像するだけでもゾクゾクします。
3年前に初めてGPスケカナでりくりゅうと一緒に表彰台に乗った彼らでしたが、本当に華のある強いチームになりました。
そして最終滑走で三浦&木原チームの登場です。サラとニコロ達の作った良い流れに乗ろうと思った、と三浦選手は言っていましたが、そんな発言にも彼女のメンタル・ストレングスの成長を見ることができますね。
「グラディエイター」の曲が流れ始め、りくりゅうの世界観が徐々に繰り広げられていきます。浮遊感のあるツイスト・リフトから、3連続ジャンプへ。このエレメントはドイツのチームもイタリアのチームもしっかり決めているので、着氷させたいところでしたが、珍しく木原選手の二つ目のアクセルにミスが出ます。
でもそこからはスムーズでスピード感のあるアクセル・リフトが展開され、スカッとするようなスロー・3フリップが決まります。
デススパイラルが終わり、プログラムの後半に入ったところでアンドレア・ボチェッリの歌声が静かに流れ出す箇所は何度聴いてもグッと来ます。
木原選手の肩に身を委ねる三浦選手の表情が本当に美しい。
(ここまで長久保カメラマン撮影)
さあ、ここから一気にエンディングに持って行きたいところ。
どんどん勢いがついていき、終盤ではスロー・3ループで着氷が少し乱れるが、最後のリフトからコレオシークエンスに、
(日本経済新聞・積田カメラマン撮影)
極めつけの「重量璃来挙げ」は璃来選手のダブル拳突き上げ付き!
フィギュアスケートGPファイナル2025⛸️
— オリンピック (@gorin) December 5, 2025
ペアでは三浦璃来選手・木原龍一選手組が優勝👏
今後も目が離せません👀🌟#りくりゅう #RoadtoMilanoCortina@miurariku1217 @ryuichi_kihara @skatingjapan
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演技終了直後、木原選手が一生懸命パートナーに向かって手を合わせて謝る姿を見て、地元で滑る彼に掛かっていたであろう重圧を想いました。
そしてそれを慰める三浦選手の包容力にも感動。
(長久保カメラマン撮影)
(朝日新聞・西岡カメラマン撮影)
そしてキスクラに座ってスコアを待つ二人と、ブルーノコーチを見ていて、私はフリーは負けただろうけど、最終的な勝負はまだ分からない、と思っていました。
これまで何度か似たような局面があり、特にボストンの世界選手権が記憶にあったからかも知れません。
そしてスロー再生が終わると、何となく頭の中に「147」という数字が浮かびました。エレメンツの基礎点を空で言えるほど知識もありませんし、GOEがどれくらい付いているかの速報も見ていなかったので、単なる勘(というか、あてずっぽう?)でした。
スコアが出て、三人はそれぞれにうなずき、驚き、感涙にむせぶ。
思うに、キスクラでは選手はもちろん、コーチでさえもそれまで滑った他のチームの成績をすべて把握しているわけではないんですよね。
プロトコルを見るまではその日のテクニカル・パネルやジャッジ達の傾向も掴めないし、何点獲れば何位になるのかを咄嗟に算出できるのでもないから。実際自分たちのスコアが出るとこうやって様々な反応が表れるのだろうと思います。
個人的にはボストン・ワールドと良く似た感覚だったと言いましたが、りくりゅうはこれまで大きな大会で僅差の勝負を何度も争い、制してきました。2022年のトリノGPF、2023年のさいたまワールドなどもそうです。(2024年のモントリオール・ワールドは負けましたが)
相手がノーミスに近い演技をして、りくりゅう側に幾つかミスが出た場合でも、総合力で勝つ。
その強さの秘訣は、毎試合後の徹底的なプロトコルの分析から改善点や課題を導き出して、練習でそれらを克服していく、地道な日々の努力に根差しているのだと思います。
派手な技を追求するのもスコアを上げる手かも知れませんが、レベルの取りこぼしを減らしたり、技の精度を高めてGOE上げるのも大事ですからね。
もちろん、他のチームも同じことをやっているのでしょうが、りくりゅうの場合は全ての技やトランジションを「高スピードで」こなすことを必須としているのが特徴です。
ゆっくり丁寧にやるのであればエレメンツの成功率は増すのかも知れませんが、それでは自分たちの持ち味が失われてしまう。彼らの口からは「自分たちらしい滑りが出来た」という言葉が良く出て来ますが、それはつまり「スピードと滑らかさと攻めのスケート」ではないかと思います。
そしてオリンピック・シーズンには最大限にその「らしさ」を追求するために、プログラムはとにかく最初から最後まで「途切れない」ような構成になっている。これまで代名詞であったリフトの「ニー・スライド」を封印したのも、「出」の部分で速度が落ちてしまうからでした。
そんな努力が高評価に繋がっている要因の一つかな、と、感じています。
なお、当然のことですが僅差の勝負は勝った側と破れた側では全く受け止め方が違います。選手もそうですが、応援しているファンにとっても、紙一重で(大げさに言えば)「天国と地獄」の差が生まれることもあります。
ジャッジによって結果が決まる競技では議論が巻き起こるのも仕方がないことだと思います。








