皆様
前の記事でもアナウンスしましたが、坂本花織選手のフリー曲のフランス語歌詞についてちょっと書きたいと思いましたのでこの記事を急いでアップします。
使用されているのはオーケストラ部分を含めて、フランスの伝説の歌手、エディット・ピアフの "La vie en rose"、 "Hymne à l'amour"、そして "Je ne regrette rien"です。
この内、「愛の賛歌」は坂本選手が特に希望したものだと聞いていますが、彼女は三つ目の曲もエキシビション用に(宮原知子さんによって)振り付けられたものをすでに演じています。振付師のマリーフランス・デュブルイユ先生はそういったところまでも把握して、素晴らしい編集を施したものと思われます。
なお、ピアフの原曲ではなくPatricia Kaas の歌ったものが使われているところも興味深いですね。
「バラ色の人生」はオーケストラのみの演奏で、冒頭から何やらミステリアスな雰囲気を醸し出しています。
坂本選手の代名詞ともいえる伸びやかでパワフルなスケーティングとダブル・アクセルが映えるイントロ、そこから3フリップを降りた辺りから急に曲調が明るい広がりを見せます。3ルッツ・2トウのコンビネーション、そしてスピンを経て、いよいよ「愛の賛歌」へと移行します。
「愛の賛歌」はピアフが恋人のマルセル・セルダン(1930~40年代に活躍したフランスのプロボクサーでミドルウェイト級の世界チャンピオン)のために1949年初旬に書き上げた曲とされています。
非常に重厚な歌詞にはピアフのセルダンに対する愛の深さがよく表れていますが、中でも恋人たちが死によって離れ離れになっても、神によって再び天で結ばれるという歌詞で締めくくられているところが有名です。
というのもこの曲が初演されたほんの数か月後にセルダンが飛行機事故で不慮の死を遂げているのですね。(レコーディングがされたのはさらにその翌年の1950年)
出典はこちら:
ということで、坂本選手の曲に採用されている部分だけを訳しますと
(「***」としている箇所は、原曲から省かれている歌詞がある、という印です)
Le ciel bleu sur nous peut s'effondrer
この青い空が落っこちてきても
Et la Terre peut bien s'écrouler
地球が崩れてしまっても
*****
Peu m'importe les problèmes
何も問題なんて無いわ
Mon amour, puisque tu m'aimes
あなたが愛してくれてるんだから
*****
J'irais jusqu'au bout du monde
地の果てまでも行くわ
Je me ferais teindre en blonde
ブロンドに染めたっていい
Si tu me le demandais
あなたが望むのなら
*****
Je renierais ma patrie
祖国に背を向けて
Je renierais mes amis
友達も捨てる
Si tu me le demandais
あなたに頼まれたなら
*****
Nous aurons pour nous l'éternité
永遠に私達は一緒にいるのよ
Dans le bleu de toute l'immensité
果てしなく青い広がりに包まれて
Dans le ciel, plus de problème
天ではもう悩みなんて何もないわ
Mon amour, crois-tu qu'on s'aime?
ねえあなた、私たちはなんて愛し合ってるのかしら
*****
個人的にはここの歌の切れ目で、坂本選手の雄大な3連続ジャンプが入ると私はもう、胸がいっぱいになってしまいます。
さて、そこからまたまたダイナミックなニースライドと共に、最後の曲へと繋がっていきますが、こちらは全く違う雰囲気の歌詞になります。「何も後悔はない」という意味のタイトル通り、思い切りのよい、とても前向きな内容です。
自分のこれまで歩んできた人生を振り返っても思い残すことは全くない、そしてこれから始まろうとしている次のステージへの希望に満ち溢れています。
マリーフランス先生から坂本選手へのエールのようなものを感じますね。
(なお、ここの歌詞を訳すにあたって、坂本さんの出身地にちなんで関西弁を用いようかとも思ったのですが、ふざけている場合じゃないなと思い直して真面目に訳しました。)
Non, rien de rien
いや、本当に何も
Non, je ne regrette rien
悔いなんて何も無いわ
Ni le bien qu'on m'a fait
してもらった良い事も
Ni le mal
されたイヤな事も
Tout ça m'est bien égal
全部もうどうでもいい
Non, rien de rien
いや、何も無いの
Non, je ne regrette rien
後悔なんて何も無い
Car ma vie
だって私の人生
Car mes joies
私の喜びは
Aujourd'hui
今日から
Ça commence avec toi
始まるんだもの、あなたと
終盤になると、坂本選手の表情が艶やかでしっとりしたものから、吹っ切れたように晴れ晴れとしたものになるのも見どころだと思います。
世界のケオーリの、国内大会最後のフリー演技を見るためのご参考になれば幸いです。
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ちょっと最後にひとこと:(ちゃんと伝わるように、と何度か修正してしまいました、すみません)
日本時間の21日午前中に残念ながら三浦&木原組のフリー棄権がアナウンスされました。
怪我の悪化や、再負傷のリスクを考えると懸命な決断に違いありませんが、世界のトップアスリートにとって試合を棄権するのは我々の想像する以上の苦悩が伴います。
ショートでは圧巻の演技を見せていた彼らだけに、このオリンピックシーズンの全日本という舞台でフリーも素晴らしい滑りをファンの方々に見せたかったに違いありません。彼らの心境を思うと本当にいたたまれません。
しかしやはり、オリンピックという最大のゴールを考えた場合、この決断は正しかったと思います。
璃来選手の肩の速い・早い回復を願いつつ、残りの試合に出場される全ての選手の皆様のご健闘を祈っています!!
