ストーリーが面白く、スラスラ読める。作者もスラスラと筆を進めているのか、ときに乗り過ぎる箇所が出現するが、ナレーターが非常に聴きやすいので、そういうところでは1.4倍ぐらいに加速しても変わらず楽に聴ける。
AmandaとGillianの女学生2人が極端に対照的に描かれながら登場し、理不尽にも軍法会議で投獄されるなどなど不幸の尽きない青年Davidと、いけすかない年上の男Mathewが登場。この4人が2組となるのだろうことが分かる。しかし、読者が肩入れすると思われる者同士がペアにはならないので、この先、この4人がどうなるのだろうかと思っていると、物語は突然、Davidの母親の章になる。そして、最後はAmandaの娘の章だ。読み終えてみれば、確かに、母親(mothers)の姿と娘(daughters)の姿を描いた内容で、"Mothers and Daughters" というタイトルは適格と言える。
面白い。面白いけれど、作者による作中人物の扱いには納得し難いという気持ちが残る。もちろん、小説というのは、思うように運ばないし、期待する結末に終わらない。でも、途中で投げ出すような作品は別として、たいていの場合、作者が何をよしとするか、何を好むか、どういうものが報いられるべきかといった基準の間隔(大げさに言うと価値観)は、読者である私がおおむね同意することが前提となる。残念なことに、私にとってこの作者は、そうではない。
DavidとKateが結び付いて終わりなら終わりでもよいが、それでDavidが救われるというのなら、Davidの苦悩はそんなものなのか。いや、政党に報われるべきだと言っているのではない。ここまで担わせてきたDavidの荷物を、作者が背負わせたのに、重さを十分に感じていないんじゃないの、という気持ちだ。
また、Amandaの扱いにも不満が残る。終盤ではまるで、テレビドラマか映画のシーンを見るようで、場面場面にはインパクトがあるけれど、深い所でうまくつながらない。結局、夢見がちだった自分が諦めの境地に達し、娘や家族への会いを見つめなおっすと、それは取りも直さず自分の母親の姿に重なる、という締めくくり。序盤にせっかく生き生きと描いてきたのに、と思う。
あんなに面白く進めてきたのに、こんなふうに筆を置いて、作者はオッケーなのだろうか。
つまりは、これからまだ将来のあるKate以外の人物たちにとって、現状を肯定して生きるのが人生だ、ということか。そうか、そういうことなのかもしれないな。ともあれ、話は面白かった。結末までたどり着くまで、面白く楽しませてもらった、そういうことでいいのかも。

同じ作者の作品で、"Buddwing" も以前に面白く読んだ。主人公がマンハッタンの街中を往き来する内容で、うっかりするとポール・オースターの"New York Trilogy" の中の "City of Glass"と取り違えそうになる。オースター作品のような途中のスローな部分がなく、"Mothers and ~" 同様に、一気にズンズン読めた。そして、読後にはやっぱり、「話は面白いけど、そこまで描いてきたのに、これが終わりでオッケーなのか」と思った。


Mothers and Daughters
A Novel
著者: Evan Hunter
ナレーター: Barrie Kreinik
再生時間: 22 時間 26 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2020/03/24
言語: 英語
制作: Audible Studios
https://www.audible.co.jp/pd/B085P2WMJX
Buddwing
A Novel
著者: Evan Hunter
ナレーター: Steve Rimpici
再生時間: 9 時間 56 分
完全版 オーディオブック
配信日: 2020/03/10
言語: 英語
制作: Audible Studios
https://www.audible.co.jp/pd/B085GMS5KD