~第10章~
真琴からとんでもない真実を聞かされ、美咲は驚いたがなんとなく納得がいった。
「その似顔絵、そら・・・お兄さんが描いたんだよね?やっぱり、お兄さん上手いね」
美咲は、真琴のもっている紙を指した。しかし、真琴は不機嫌そうな表情をしていた。
「・・・僕だって、山桜さんの似顔絵ならこんぐらい描けるよ」
「えっ?何か言った?」
美咲は、紙から目を離して真琴を見上げた。真琴は、すぐに笑顔になって答えた。
「何でもないよ。まぁ、あくまでも兄貴は画家だから」
美咲は、真琴が「画家」のところだけ大きく言ったのに気付いたが、そこまで気には止めなかった。
帰り道、真琴は美咲を家まで見送った。
「今日は、ありがとう。お兄さんによろしく伝えといて」
美咲は、(本人無意識の不愛想に)そう言って家に入ろうとしたその時、真琴が美咲の手を掴んだ。
「か・・・神田くん?」
「・・・ま、また、今日みたいに一緒に、空が綺麗に見えるところに行こうね」
赤くなりながら真琴は言った。そんな真琴に、美咲は自然と笑顔がこぼれた。
「うん、また見にいこうね」
真琴は、嬉しそうに笑うと、美咲の手を離した。美咲は、さっきまで少し熱く感じていた真琴の手が離れ、自分の手が急に冷たく感じた。
そして美咲は、手を振る真琴に手を振返し、見えなくなるまで見送った。
ー次の日ー
今日は、休日なので美咲は、一日アルバイトだった。
そして、それは丁度お昼時の頃だった。
「いらっしゃいませー・・・」
美咲は、扉の方を見るとそこには・・・
「空男さん?!」
空男さんは、驚く美咲に軽く手を挙げた。
「久しぶり、美咲ちゃん」
「えっ・・・どうして名前・・・あ~、神田くんですね。お一人様でよろしいですか?」
空男さんは、急に従業員口調になった美咲に一瞬驚いたが、「うん、一人」と答える。美咲は、空いている席まで案内し、メニューを渡した。
「お決まりになりましたら、お声かけ下さい」
立ち去ろうとした美咲に、空男さんはまた呼び止めた。
「まだ何か・・・?」
「うん、日替わりランチと、コーヒー一つ」
美咲は、ハッとし紙にメモると一礼した。オーダーを言うと、美咲は同じアルバイト仲間の理沙に声をかけられた。
「何、あんた、告白されるんだって?」
突然の意外な言葉に、空のグラスを落としそうになった。
「何それ?!」
「何それはこっちよ。で、どうなのよ。告白されるの?」
美咲は、空のグラスをカウンターに渡しながら言った。
「告白じゃないわよ。・・・多分」
小声で言ったつもりの「多分」を、理沙は聞き逃さなかった。
「多分~?おや~、美咲さんも隅におけませんな~」
肘をつついてくる理沙をかわすように美咲は、オーダーを呼ぶテーブルまで小走りで行った。
(でも、話って何だろう?)
~続く~