~第5章~

ロングホームルームが終わると同時に美咲は一瞬で学校を出た。バイト先に遅刻しそうだったからだ。美咲が高一の時に父が借金を残して、姿を消したためバイトでコツコツと返していた。


だが、生活費の方は父が何処で作った金だが謎だが、ちゃんと3人分の生活費が毎月振り込んであるのだ。美咲はいつも金を取り出す時、そのお金を何故借金に回さないのかと、思っていた。


バイト先のレストランに着くと急いで着替え、仕事に出る前に支配人の笹田忍に事情を簡単に説明した。


「遅れてすみません。ロングホールルームだったので、遅れました。」


「あぁ、わかったよ。ほら、お客様が呼んでるよ。」


「はいっ。」


美咲は忍にそう言われるとせすぐにオーダーを受けにいった。 ここのレストランは、元々美咲の母が出した個人の店だ。

たが、母が病気で入院がちになると、母は同じシェフ仲間である忍に店を譲ったのだった。忍は美咲がバイトの応募を見て来た時、事情を聞くと直ぐに雇ってくれたのだ。

このレストランは雑誌に載るぐらい有名なレストランなので、バイトでもそこそこ良い値なので、なんとか借金を返済できるのであった。


美咲はオーダーを受け終わると壁に見かけない絵を見つけた。


「忍さん、この絵元々こんなとこに有りましたっけ?」


「あぁ、それね。午前中に来たお客様から頂いたものだよ。」


「画家なんですか?」


「ん~、まぁそうらしいよ。」


「?有名な画家ですか?」


「うん、なんか最近人気の画家らしいよ。確か名前ま~・・・、あっ、そうだ!『空男さん』って 言ってたねぇ~。まぁ、あきらかに芸名っぽいけど。」


美咲ははっとするともう一度絵を見た。確かにどこか見覚えのある絵だった。その絵は美咲が持っているのと同じ快晴の描かれた絵だった。すると美咲はある一つの疑問を浮かべた。


「その空男さんって、どんな料理を注文したんですか?」


忍は一瞬不思議そうな顔をしたが、美咲の反応を感じ取った。


「確か記録表に書いてあるよ。と、その前に今は仕事!休憩になったら出してあげるから。」


美咲は忍に言われて初めて自分は仕事中なのだと気が付いた。美咲は直ぐに客のオーダーを受けにいった。ようやく休憩が入ると忍は記録表を出してくれた。


「お客欄に確か画家って書いたと思うから。用が済んだら俺を呼んで。」


忍はそう言うと店に戻った。美咲がさっきから抱いていた疑問とは、そんな安くない店で行き倒れていた人が来た事だ。しかも、空男さんの注文欄にはおびただしい数の料理が注文されてあったの
だ。




「一体空男さんって何者なの⁈」




~続く~