※本の内容紹介あります。ネタバレにご注意下さい。
介護の明日を考える会(通称かいあす)は、多職種で、介護をめぐる教材を輪読して感想交流するweb輪読交流の会です。
ミーティングの報告の間に私が読んだ本から感想交えて綴っています。
今回
岡野八代 著
ケアの倫理ー
フェミニズムの政治思想
という2024年初版の本を取り上げます。
著者は、早稲田大学政治学科大学院卒業、執筆当時同志社大学グローバル・スタディーズ研究科教授。政治思想・フェミニズム理論とあります。
私たちの法人では、数年前から「ケアの倫理」を学ぼう語ろう、と呼びかけられてきました。なかなかわかりにくい概念なので何冊か本を買って読んでいますが、最初に読もうとしたこの本を、読書仲間が「手強い」「分からん」「挫折した」と漏らしていたので、メイヤロフ、トロント、村上靖彦、などの、より初版の古い本を優先してきたのでした。重要そうなものとしてギリガンの「もう一つの声」を残していますが、本書内でも取り上げられるようなので、いよいよ本命に取り組むことにしました。
本書は、序章、第1から第5章、終章からなります。
序章 ケアの必要(ニーズ)に溢れる社会で
第1章 ケアの倫理の原点へ
第2章 ケアの倫理とは何かー『もう一つの声で』を読み直す
第3章 ケアの倫理の確立ーフェミニストたちの探究
第4章 ケアをするのは誰かー新しい人間像・社会観の模索
第5章 誰も取り残されない社会へーケアから始めるオルタナティブな政治思想
終章 コロナ・パンデミックの後を生きるーケアから始まる民主主義
初回は
序章 ケアの必要(ニーズ)に溢れる社会で
を。
*
序章では、ケアの倫理の概略と本書の立ち位置が提示されます。
ケアの倫理に至る、フェミニスト理論家たちの葛藤と模索の長い道のり。
序章では、ほぼ全体をダイジェストする中で、本書の目的を、実際に女性たちが置かれた社会状況、その女性たちが担った運動や上げてきた声と切り離せないフェミニズム思想の展開の中にケアの倫理を位置付け、ケアの倫理の展望する新しい社会や政治を描き出す、と宣言します。
序章の小見出しを列挙してみます。
・ケアの倫理
・偏在するケア
・ケアし/ケアされる存在としての人間
・ケアという言葉について
・ケアの倫理とフェミニズムの歴史ー本書のねらい
・上野千鶴子によるケアワーク論
・フェミニズムの歴史におけるケア
・ケアからの出発
・『もう一つの声で』のインパクト
・ケアの倫理の展開ー人間像の見直しと新たな社会の構想へ
・公的な倫理としてのケアの倫理
・本書の構成
上野千鶴子の問いー何をもってケアとして認知され、支払われるか?
有名だけど、関係あるのかなぁ、と思っていたらやはり関係あったようです、上野千鶴子さん。
著者は、本書のねらいは上野とは違う、とした上で、対比のために上野の立場を紹介します。すなわち、国家にケアの視点が必要だと主張し続けるイギリスの社会政治学者であるメアリー・デイリーによる以下のケアの定義を上野は採用します。
依存的な存在である成人または子供の身体的かつ情緒的な要求を、それが担われる規範的・経済的・社会的枠組みのもとにおいて、満たすことに関わる行為と関係。
しかし上野は、こうした定義に基づいてケアを論ずることではなく、ケアとみなされ、社会的に認知されて支払いの対象になる場合とそうでない場合が、どのような文脈によって区分されるか、という点に着目し、ケアワークという労働をこそ基本にした場合、労働と見做されないケアの特殊な事情が明らかになるとしたのだそうです。
なるほど。外でやったら、低水準とはいえ労働として賃金が支払われる行為が、なぜ家庭内で行われると支払われない特殊なものとみなされるのか、という問題の立て方をした、てことですかね。
ケアを労働としてとらえてよいか、というところからあらためて問い返す。
しかし、著者は、そのような上野氏の立場にあたかも挑戦するかのように、ケアを労働として捉えて良いのか、というところまで遡って本書は問い直すのだ、と主張します。
歴史上、主に女性により担われてきたケア活動の本来的な人間世界における意義や価値は絶大であることをあらためて問い掛け、しかるになぜ現代に至るまでその価値ある営みが私的なものとして貶められてきたのか、そこに挑んだフェミニストたちの研究成果を通して明らかにしたいのだ、とします。
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ジブリの映画の中では、天空の城ラピュタが私は一番好きです。数々の名シーン・名セリフがありますが、今回本書に取り組み出して思い出したのが、敵のボスキャラ、ムスカがラピュタの心臓部に入り込んで、碑文にある操作法を解読するシーンです。
「読める!読めるぞ!」、入門書なのに難解と言われた(ナンカイ読んでも分からない、と言われたとか言われないとか)、本書ですが、とりあえず序章はこれまで読んで来た本のおかげでかろうじて歯がたちました。準備は裏切らない、てことですかね。このあとも通用しますように。
(医師K)
(このシリーズ続く)