京都南座で行われた海老蔵歌舞伎、大盛り上がりのうちに千穐楽を迎えましたねキラキラ

おめでとうございます!!

 

私が観たのは1週間前ですが、「実盛物語」の感想を書きたいと思いますニコニコ

 

観る前から「絶対泣ける」とわかっていましたが、やっぱり泣けますよね~。泣きましたえーんこれまでとは、一味も二味も違う「実盛物語」でした。

 

まず一味目に、市川海老蔵さん演じる斎藤実盛という人物のリアリティがすごいこと!平家の禄をはみながら、源氏の種を見逃す「二心(ふたごころ)」の心の機微が伝わりました。

 

二味目に、堀越勸玄君演じる太郎吉の華が大きいことガーベラ絶望的な悲しみに襲われながらも、それを乗り越え、明るい未来に突き進む姿が心に刺さりました。

 

三味目に、仕方話に魅せられたこと。義太夫の糸に載った実盛の仕方話。海老蔵さんの身振り手振り、物語に魅せられました。

 

最初からあらすじを交えつつ感想を書きたいと思います。

 

 

源平布引滝「実盛物語」

 

ここは琵琶湖、堅田の浦にある百姓の家。源義賢の妻である、葵御前が匿われています。それを平氏に密告し、報奨金を得ると伝えに来るのが市川九團次さん演じる矢走仁惣太。いかにも悪そうアセアセ矢走仁惣太は、片岡市蔵さん演じる九郎助の甥なのですが、大金に目がくらんで伯父を裏切る、ならず者ですガーン

 

九郎助(片岡市蔵さん)と孫の太郎吉(堀越勸玄君)が草津川河口の鮒漁から戻ります。揚幕から「おれがとった~」と元気の良い勸玄君の声がすると、割れんばかりの拍手拍手勸玄君は、愛らしい玉のようですキラキラ睫毛が長くてお目目ぱっちり、しっかりした眉。なんとなく團十郎さんの面影があるように感じました照れ

 

勸玄君は歌舞伎調の台詞廻しも上手いですし、声が良く響きます。そして何より芝居心がありますねラブラブ今日も、珍しいものを網に掛けたので、自慢げに帰ってきます。

 

 

そこに、矢走仁惣太の密告により葵御前の子の詮議がやってきます。一人は赤ッ面で冷酷無残な瀬尾十郎兼氏(市川右團次さん)。もう一人は白塗りで、温情のある知的な斎藤実盛(市川海老蔵さん)。典型的な歌舞伎の悪人と善人。2人の来訪を伝える村の庄屋は、市川右左次さんでした。

 

海老蔵さんはやっぱり華がありますね。登場するだけで舞台全体に奥行きが出て華やかになりますガーベラ

 

 

瀬尾と実盛の2人の対比は面白いです。実盛は葵御前の出産を待って、生まれた子が女子ならば助けると言います(ハラは生まれた子が男子でも瀬尾に女子と嘘をついて助けるつもり)。温情のある武士です。一方瀬尾は、妊娠中の葵御前を胎児ともども今すぐ殺すと言いますアセアセ必要以上に残虐で横柄な人物ですガーン市川右團次さんの瀬尾十郎兼氏は憎々しさ十分の立派な敵役でした。

 

瀬尾の「いますぐ殺す」という言葉を聞いて、やむを得ず持って来るのが、先ほど網に掛かたかいな(腕)。

 

ここは、錦の衣に包まれた何かわからない物(赤子にしては固い)を抱いて、詮議をする海老蔵さんの表情が見ものです乙女のトキメキ生まれた子の検分をし、それを瀬尾に伝えるのが実盛の役目。「女児であってくれ」「男児であっても、瀬尾には女児と言うぞ」「でも目の前に瀬尾がいるので油断はならない」「むむ、赤子にしては何やら固いな」と、絶体絶命の緊迫した場面に実盛の心の機微がよく表れています。

 

義太夫も〽工面渋面(くめんじゅうめん=渋いものをなめたようなにがにがしい顔つき)と語ります。

 

錦の衣から出てきたのがかいなパーと分かった後の2人の対比も面白いです。瀬尾(右團次さん)は、中国インドにも腕を生んだ例はないと鼻で笑いますが、実盛(海老蔵さん)は中国の故事を持ち出し、中国にはこういう例があると教えます。

 

楚国(紀元前11世紀~紀元前223年)の后、桃容夫人が鉄の玉を生んだという話です。桃容夫人は、日頃から暑さに苦しみ鉄の柱を抱いていたところ、鉄の精が宿って鉄の玉を産んだそうです。その玉を打って剱にしたのが、干将莫耶の剣(かんしょうばくやのつるぎ=中国の名刀)です。実盛は温情があるだけでなく博学の知識人でカッコイイキラキラ

 

葵御前も、普段から癪聚(しゃくじゅ=腹痛・胸痛)があり、鍼医の手先をかりて治療していたので、手を産んだのだろうと弁護します。絶体絶命の葵御前を助ける実盛。

 

 

瀬尾が帰った後は、まず実盛と九郎助が目を合わせて「うん、すべてわかっているよ、もう大丈夫」と言わんばかりに心を合わせる一瞬が素敵ですラブ

 

葵御前は大谷廣松さん、武士の妻として立派で品格がありますね。

 

かいなが小まんの腕と分かった後は、一同嘆き悲しみます。ここは九郎助が上手いです。「やい実盛!!」と立ち向かいますが、すぐに「実盛様ぁ」と言い直します。そこに身分の違う百姓のやるせなさ、辛さがよく表れています。片岡市蔵さんと、市川齊入さんの夫婦は、たとえ養女でも、娘に対する愛情が深く、安定の老夫婦でした。

 

小まんの最後を話す、実盛の仕方話はとても引き込まれました。義太夫の糸に乗り、扇子を使った身振り手振りが美しい。悲しい物語なのですが、海老蔵さんの華によって引き込まれますキラキラ

 

息の無い小まんと対峙した勸玄君が「これカカ様、もうこれからは無理も言うまい、言うこと聞こう、もの言うてくだされいのう」というのにはやはり涙えーん分かっていましたが、こらえられませんでしたえーん

 

 

中村児太郎さんの小まんは一球入魂です。出番が短く、しかも舞台上にいる時間のほとんどが死んでいるのですが、息を吹き返した時のエネルギーが凄い!最期の一言に力を振り絞ります。そして、その短い時間で小まんは、意志が強くて芯の強い女性だとわかります。

 

太郎吉が実盛に立ち向かったり、瀬尾に斬りかかる場面は勸玄君の形が綺麗です。重心が低く、足が良く開いています。善人にモドリとなった右團次さんの平馬返りは豪快でした拍手

 

モドリとなった瀬尾の心情ってどうなんだろう?とずっと疑問に思っていました。瀬尾の台詞に「すべてはこの女めが、白旗かくし持ったる故、平家方では、夜が寝られぬ。思えば不憫な重罪人めが」とあります。「夜が寝られぬ」「重罪人」これは、小まんに言っているようで、瀬尾自身を言っているようです。源氏の白旗を守り抜く娘を持ってしまった、平氏の自分の運命。源氏の白旗のために命を捨てられる強い娘に対して、弱い自分。小まんの生き様に心を打たれ、瀬尾も孫のために命を投げ出す決心をしたのでしょうね。そして孫の太郎吉はこのままでは土百姓として埋もれてしまいますが、七歳から奉公すれば、木曽源氏の一、二の家来になれ、小まんも浮かばれます。

 

 

最期は海老蔵さんと勸玄君が馬に乗って華やかな幕となりました拍手

 

見終わって・・・

このお芝居は実盛の華が魅力ですが、今回は勸玄君が太郎吉を演じたことにより、太郎吉の持つ華も大きく、いつもとは異なる感動がありました。太郎吉(勸玄君)が存在するだけで、明るい未来が想像できて、心が晴れ晴れしますキラキラ母親が亡くなって非常に悲しいですが、太郎吉の未来があるからお芝居が明るくなります。勸玄君、海老蔵さん、市蔵さん、齊入さん、みなさんのノリ地の台詞が旋律的で楽しく、それが将来の楽しみと重なりましたルンルン

 

勸玄君の太郎吉のお芝居からは「人生にどんな絶望的に悲しいことが起こっても、こうやって前向きに乗り越えていけるんだよ」ということを教えてもらったような気がします。

 

Youtubeで見つけた、赤ちゃんの頃の勸玄君。南座の客席で麻央さんに抱かれて「あ~う~」言っています。この赤ちゃんが、南座の舞台に立ちこんなに立派な歌舞伎役者になっているとは!!同時代に生き、その成長や前向きな生き様、歌舞伎への愛を見せていただけることに感謝しますキラキラ

 

 

(↑Youtubeに飛びます)

 

ブロ友のよっさんのブログ(https://ameblo.jp/naka44hisa/entry-12680424415.html)によると、千穐楽はカーテンコールが4回もあり、勸玄君がもう一度飛び六方を披露、愛嬌たっぷりに手を振りながら花道を戻って来たそうですね。見られた方々が羨ましいラブラブ

 

 

さて次は京都南座の「いぶき、」です。感染予防に気を付けて見に行ってきます。ここのところ、出演者の方々がインスタライブをやって下さるので、それも楽しみにしています。