先日の市川會に続き、Bunkamuraシアターコクーンで開催されている九團次・廣松の会へ行ってきました。
市川九團次さんはこれまでも自主公演をやっており、今回は初めて大谷廣松さんとお二人で開催。
お二人とも成田屋で修行されていて、普段からご活躍ですが、今回はお二人がシンの役を務められるのでとても楽しみにしていきました。狂言を入れた番組も面白かったですし、舞台からはお二人の熱意が伝わってきました
狂言 柿山伏
山伏は市川九團次さん、柿の木の持ち主は大谷廣松さん。監修は茂山逸平さん、後見は市川升三郎さん。
九團次さんも、廣松さんも、地声がものすごく響いて力強かったです。大向うもあちこちから。
九團次さん扮する山伏が、修行を終えて空腹を感じた時、ちょうど熟れた柿を見つけます。
どうやって柿を取ろうか試行錯誤するのですが、九團次さんは真面目にやっているのになぜか可笑しい!
山伏が柿の木に登って実を盗んで食べていると、柿の持ち主に扮した廣松さんが通りがかり渋柿をぶつけられます。持ち主は怒り、柿の木に登っているのは人間と分かっていながら、あえて気づかぬふり。
そこにいるのは烏だろうと柿主が言うと山伏(九團次さん)はカーカー、猿だろうというとキーキー、鳶だろうと言うとピーピー。柿主に言われるがままに山伏が鳴きまねをするのが面白かったです山伏の威厳はどこへやら・・・。
鳶なら飛べるはずだと柿主に言われ・・・飛~べ、飛~べと柿主に囃し立てられるがままに、山伏はピーピーだんだん嬉しそうに乗せられてすってんころりん、柿の木から落下します。
それを見て気が済んだ柿主(廣松さん)は「さ、帰ろ」とさっさと帰っていくのも可笑しかった山伏は念力で柿主を引き戻しますが・・・、おんぶしてくれ、看病してくれと山伏の面目まったくなし!
霊験あらたかそうな山伏なのに、阿呆な様態をみせるのが面白かったです。
そして、ウケ狙いは一切せず、至極真面目に演じているのになんとも可笑しいところが巧かったです!こういう笑いこそ上級で巧みだなぁと感心しました!
ご挨拶
「柿山伏」の幕が閉まるとそのまま、浴衣姿の廣松さんが下手から登場。遅れて九團次さんも登場。お二人からご挨拶があり、狂言の発声が歌舞伎の発声と全く違うということや、今回の公演に至ったお話がありました。
九團次さんは、これまでも1人でやってきていらっしゃるから、お話も饒舌ですね。そして、九團次さんと廣松さんがノリツッコミでいいコンビ漫才を見ているように笑いました最後に、今回の開催を後押ししてくれた市川海老蔵さんへの感謝や、次の「女夫蝶花臺」についての解説がありました。
女夫蝶花臺(つがいのちょうはなのしまだい)
1時間ほどのお芝居でも4回の衣装替えがあり、テンポよく話が進み、いろいろな踊りが見られ面白かったです。「蝶の道行」に「石橋」を加えて、中村京蔵さんが構成しなおした作品だそうです。振り付けは藤間勘十郎さん。
第一場では、恋人同士の佐国(九團次さん)と小槇(廣松さん)が花に戯れています。佐国は水色の着物、小槇はオレンジ色の着物を着て白塗りの若い男女が花や蝶に戯れる姿が麗しい解説にあった通り、狂言と歌舞伎の発声は全く異なることがよく分かりました。廣松さんの女声はとても美声。
二人は恋人同士ですが、家同士が仲たがいして一緒になることはできず、心中を思いつきます。舞台上で拵えが変わり、2人は白装束に。後見は市川升三郎さんと市川右若さん。つがいの蝶を見て羨み悲しみ、来世こそは蝶のように一緒になろうと心中してしまいます。
第二場
死んで蝶の雄(九團次さん)と蝶の雌(廣松さん)の精になった二人は、死後の世界を旅します。ポスターにある濃紺の衣装で竹本の浄瑠璃に合わせて踊ります。九團次さんは、客席から登場してびっくりしました。悲しくも美しい舞でした。
途中で、引き抜きがあり、九團次さんは青と白の縞の着物、廣松さんはピンクと白の縞の着物になり、振りや音楽も華やかになります。この着物すっごく可愛かったです。こういうバッグやポーチが欲しいなぁ。つがいの蝶はかつての出会いや逢瀬を懐かしみながら華やかに舞います
しかし、三途の川を渡ると・・・、2人は畜生道に落ち、地獄の責めに苦しみます。ここで2人は両肌脱ぎになり、上半身は白い着物。髪もほどけ、苦しそうに舞うのが上手かったです。見苦しくなくて、上品なのがよかった。客席に降りての舞もありました。
第三場
♪これぞ文殊のおわします、その名も高き清涼山♪
上手に長唄と下手に鳴物が登場して「石橋」の場面。長唄には日吉小間蔵さん、小鼓には田中傅次郎さんがおられました。
九團次さんは、白い毛の獅子に馬簾の付いた衣装で足さばきが気持ちいいです。九團次さん、この部分は水を得た魚のように生き生き溌溂と殻を突き破るような躍動感があり、今まで見た九團次さんのなかで一番よかったです
やはり役者さんは主役を勤めると変わるんだなぁと感じました。
廣松さんは赤い毛の獅子。女形なので、獅子の姿をしても所作が荒々しくなく上品です。手先がピンとしなやかなのが美しかったです。廣松さんは、ピンクの振袖の下にもう一枚振袖を着て、長くて重い帯も締めています。相当な衣装の重量のなかで毛振りをしていてすごかったです。
最後はお2人ともすべてを出し尽くす力いっぱいの毛振りでした。
面白かったー!やはりすべてを出し尽くす力いっぱいの舞台は見ていて面白いですね
そういえば、劇場のアナウンスは九團次さんと廣松さんの声だったような・・・。
ロビーでは、亀井忠雄さんや、スーツ姿の市川福太郎さん、市川男寅さんも見かけました。
また来年も九團次・廣松の会をやるならぜひ観に行きたいです
さて、次は先日から読んでいる三代目市川翠扇著『九代目團十郎と私』のことをブログに書きたいと思います。