歌舞伎座七月大歌舞伎、昼の部『三國無雙瓢箪久-出世太閤記』を初日に観てまいりました。

古典の作品なのですが、宙乗り、早替り、本水の立廻り、馬乗り、湖水乗切りなど、ケレン味のある演出によって蘇っています。現代ネタも所々挟まれていて面白かったです。

あらすじは、本能寺の変で織田信長が亡くなり、49日の法要が行われるまでの50日間の豊臣秀吉の動きを描いた物語です。瓢箪とあるのは、秀吉の活躍により信長から賜った馬印が瓢箪だからだそうです。

 



秀吉が市川海老蔵さん、対する明智光秀が中村獅童さんなので、二人そろっての見得など絵になること絵になることキラキラ様々な戦国の武将が登場しますが、そのなかで一番高貴で統率力を持つのが三法師(堀越勸玄君)ビックリマーク勸玄君は溜めをじっくりとって、威厳たっぷりにセリフを放ちます。織田信長の次男や三男をひれ伏させるのです。小さいながらに風格があり、利発さに溢れています。あぁ、後継者はこの三法師しかいない、戦国武将たちにそう思わさせる存在でした照れ

この『三國無雙瓢箪久』は、成田屋に大変ゆかりのある演目です。文政三年に、七代目市川團十郎が「大徳寺焼香」の元になった『猿若瓢軍配』で秀吉を演じます。明治五年には九代目市川團十郎が『三國無雙瓢軍扇』で秀吉を演じます。さらに、十一代目市川團十郎が昭和28年に『三国無雙瓢軍扇』のなかの『大徳寺』で秀吉を演じます。その時に三法師役で初舞台を踏んだのが十二代目市川團十郎。代々の團十郎が演じてきた演目なので、今回海老蔵さんと勸玄君が演じるのにふさわしいですね。



お芝居は、最初から粋な演出。水色の紋付に、袴姿の海老蔵さんがすっぽんから登場し、幕に描かれた日本地図を使って物語の時代背景を説明してくれます。海老蔵さんが登場すると大拍手。大勢の大向うに混ざって「きゃ~」という歓声も上がりました。そして白檀(沈香?)の良い香りが漂ってきました。

『雷神不動北山櫻』でも、裃を付けた海老蔵さんが作品の解説をしてくださいましたが、こういう演出があるのはありがたいですね。

序幕は、夢の中の西遊記。豊臣秀吉が「猿」と呼ばれたことで、海老蔵さんが孫悟空を愛嬌たっぷりに演じます。伸び縮みする如意棒を使って、孫悟空の軽快な宙乗りが見ものです。
市村萬次郎さんや、市川九團次さんの猪八戒、中村芝のぶさんと市川猿紫さんの女剣士など、中国風の舞台が煌びやかでしたキラキラ

 



二幕目はなんといっても明智重次郎の切腹を演じる市川福之助君のお芝居が見事でした。
成田屋の部屋子で現在12歳。明智重次郎も数え年で13歳ということですから、同じぐらいの年ですよね。それがすごく良いんです。同じぐらいのお子さんが演じることで、戦国時代の若武者の命の儚さがまじまじと伝わりましたえーん

これまで『絵本太功記』では、明智重次郎(武智十次郎)を40代50代のおじ様が演じるのを観ましたが、なんでもっと若い役者がやらないのかなと思っていました。今回、市川福之助君で観れて良かったです。

『熊谷陣屋』の理解も深まりました。これも16歳ぐらいの初陣の子供が犠牲になります。お芝居には登場しませんが、敦盛や小次郎も福之助君のように清らかで儚い若武者だったのだろうと思いを馳せ、悲しみを実感しました

海老蔵さんと中村児太郎さんの夫婦役もますますしっくりして良かったです。児太郎さんは夜の部の葵の上も良かったですが、私は昼の部の八重の方が好きです。気が強くって、仇っぽくて藤吉(海老蔵さん)への一途な愛に溢れていましたラブラブ

また、中村獅童さんの馬乗りや馬に乗って琵琶湖を渡りきる「湖水乗切り」も趣向が変わっていて面白かったです。寿司屋(魚屋?)に扮する加藤清正の坂東亀蔵さんは、粋で清々しい。



そして大詰が何といっても一番の見どころビックリマークビックリマーク
幕開きから大変華やかキラキラ金色に光る大徳寺の舞台に烏帽子を被り、裃付けた大勢の役者さんがずらっと並んでいます。そのなかでも、堀越勸玄君の登場で一番の大拍手。ここは、信長亡き後の後継者を決める場面なのですが、信長の次男信雄も三男信孝も譲り合って頼りない。信長の長男の嫡子である三法師が一番器が大きく家臣たちをまとめることができるのです!勸玄君は小さいのに風格があって三法師にぴったり。5歳にして昼と夜で、役の演じ分けができるのはすごいですね~照れ

最後は、市川海老蔵さん扮する秀吉と中村獅童さん扮する明智左馬之助の一騎打ち。本水を使った立廻りは迫力満点。獅童さんは敵役としての大きさがあります。二人そろってピッタリ見得が整うところなど大変絵になります。そして切口上、天下泰平を祈って幕となりました。



物語も光秀(獅童さん)亡き後、左馬之助(獅童さん)が早替りで引き継ぐところなど上手い。そこに額の傷が効果的に使われています。

今回この演目を観たことで、『場盥の光秀』『沓手鳥孤城落月』の理解も深まりました。どちらも秀吉が関係する演目。『場盥の光秀』は、光秀が謀反を企てるところで終わりますが、その後、光秀はこうなったのかぁ、と想像できました。『沓手鳥孤城落月』では、秀吉が築いた栄華とその子供の運命に思いを馳せました。

 

そして今回は、筋書きも豪華でしたキラキラ

綴じ込みでポスターの写真が付いています音譜これ欲しかったのでありがたい!嬉しい!源氏物語もあります。

 


さて、今週は2度目の夜の部を観に行きます。来週は昼の部をもう一度。初日から、さらにお芝居に深みが出ているでしょうから楽しみです音譜