新橋演舞場の初春歌舞伎公演昼の部(Aプロ)の感想の続きです。

 

新年早々、昼の部を観に行ったのは「睨み」を観たかったから!あと「鎌倉八幡宮静の法楽舞」も。なんといってもこの舞踊は歌舞伎史上初5つの音楽の掛け合い。そして海老蔵さんは早替りで七役を演じるという、目にも耳にも贅沢な時間でした照れ前のブログで書いた「天竺徳兵衛」も外連味に溢れる楽しい作品なので、昼の部はどの演目もとってもおススメです音譜ひょっとしたら、夜の部(Bプロ)よりも昼の部のほうが初めての方にも歌舞伎らしさが伝わるかもしれませんニコニコ

 

 

「寿初春口上」

やはり、お正月は海老蔵さんの「睨み」が観たい。去年は右團次さんの襲名で「睨み」がなかったのが残念でした。ぜひ麻央さんにも見てほしかったなぁ。ニュースでは5年ぶりとありましたが・・・あれ?2016年のお正月にも「睨み」を観たような・・・。あの時は「七つ面」のなかの口上だったので、数えないのでしょうか。あの時は、海老蔵さんの人間離れした圧倒的な迫力に鳥肌が立ちました(その時のブログ

 

今回は珍しく、仕初めと巻き触れというのがありました。そこから海老蔵さんの睨み!!!

すべてを吹き飛ばす大迫力ビックリマーク海老蔵さんが睨んだ瞬間劇場に風が吹いたような感じですびっくり客席もうわぁぁ、うぉぉと大盛り上がり。やはり「睨み」は「見得」とは全然違うんですね。顔の筋肉がまさに不動明王そのもの。眉や頬、眼球の隆起、圧倒的な目力、全身から発せられるパワーなど、不動明王そのものです。

 

ふうせんさんのブログに團十郎家の人間は、人の苦しみや悲しみを背負い、生きながらに成田不動の分身となる試練があるのかも、というようなことが書かれていました(ふうせんさんのブログはこちらhttps://ameblo.jp/kabukidaisuki888/entry-12340525895.html)。まさにその通りだなあと思いました。海老蔵さんは自分自身が一番大変な時に、自身の持つハレのパワーを人々の無病息災を願って放出する。睨まれた私たちはハレのパワーをもらいます。

 

2017年の大晦日に行われた成田山新勝寺での初めての睨み。これは、麻央さんからの遺言でもあったそうですね。仏像ではなくて、現存する人間の睨みが拝みの対象となる画期的な出来事でした。歌舞伎役者の持つ、この宗教的なエネルギーこそが歌舞伎の荒事の原点なのでしょうね。

 

 

新歌舞伎十八番の内「鎌倉八幡宮静の法楽舞」

九世市川團十郎の生誕180年を記念した演目です。長らく上演が途絶えていたお家芸の復活です。

 

この演目は音楽も舞踊も素晴らしかったビックリマーク音楽は、河東節連中、常磐津連中、清元連中、竹本連中、長唄囃子連中と5つの音楽の掛け合い、合奏キラキラ特に河東節は、「助六」以外であまり聞く機会がありません。10月の河東節演奏会を聞いて、もっと歌舞伎の演目のなかでも聞ける機会があればいいなぁと思っていたので、嬉しいです。團十郎家としては、河東節の存続にも力を注いでいるのでしょう。ちなみに市川ぼたんさんも演奏者として出演なさっています。

 

舞踊は早替りをふんだんに取り入れた変化舞踊です。海老蔵さんが7役の早替りで魅せます。背景にあるのは源平の合戦、源義経と妾の静御前の物語。義経の兄、源頼朝にとらえられた静御前は、鎌倉の鶴岡八幡宮で舞を舞うように所望されたそうです。鎌倉の鶴岡八幡宮では、毎年4月の第2日曜日に「静の舞」という舞を披露しているそう。今度観に行きたいな。

 

最初は海老蔵さんが老女に扮し、能のような所作で登場。もとは都の白拍子と語るこの老女は、忍性上人(市川右團次さん)や、従僧の市川九團次さんや大谷廣松さんらに舞を所望されて舞います。この舞がどんどん変化していき、最後は化生(けしょう・お化け)となるのでした。ちなみに、静御前も元は都一の白拍子です。

 

音楽は、常磐津と清元の掛け合いです。すると次々物の怪も登場します。市川笑三郎さんの姑獲鳥と上村吉弥さんの蛇骨婆はとってもユーモラス。お二人とも芸域が広いですね。ここは、竹本のリズミカルな音楽が楽しかったです音譜重厚な印象のある竹本が、あんな楽しい音楽を奏でるのに驚きました。

 

続いて、白蔵主、白狐のような海老蔵さんが登場します。ここは新歌舞伎十八番『狐釣』が引用された踊り。音楽も、河東節、長唄と次々登場。早替りで油坊主(海老蔵さん)が登場します。これも新歌舞伎十八番『油坊主』が引用された踊りです。花道で油坊主にぶつかったと思ったら早替りで三途の川の船頭(海老蔵さん)の登場!?え、海老蔵さんいったい何人いるの?びっくり三途の川の船頭はとっても色っぽい。特に髪に滴る水を払うところなど、まさに水も滴るいい男キラキラ海老蔵さん、笑三郎さん、吉弥さんの連れ舞は、三人ともキャラが違って楽しいです。

 

 

♪賤(しず)や賤(しず)、しずの苧環繰り返し、昔をいまになすよしもがな♪

 

静御前が愛する源義経を思って鎌倉鶴岡八幡宮で詠んだ歌です。いよいよ静御前の登場。海老蔵さんの静御前は、桜の花のつぼみみたい桜とてもおぼこくって気品があって可愛いかったです照れ頬がほんのりピンクで高校生ぐらいにみえました。静御前が恋人の源義経との楽しい思い出にふけっていると、義経(海老蔵さん)も登場。ここも早替りが見事でした。烏帽子を被った貴公子たる義経は、海老蔵さんの本領発揮キラキラ眼福です。光源氏のような麗しさ。もっと長く見たかったけど、これは3月の「源氏物語」にお預け。

 

静御前が、義経との別れや我が子を頼朝に殺されたことなどを悲しんでいるとしだいに、化生に変化していきます。静御前から化生への変化はすっごい迫力ビックリマーク音楽も五重奏となり厚みを増します。異なる音楽の五重奏は、あたかも平氏の怨霊が何千もいるかのように聞こえました。竹本、清元、常磐津、河東節、長唄と、同じ旋律を演奏しているのに音色が全然違うんですね。耳が5つ欲しいと思いました。最後は幕外からの引っ込み。

 

この演目ではいろいろな海老蔵さんの踊りが見られ楽しかったです。静かな踊り、愛嬌のある踊り、軽快な踊り、可笑しい踊り、色っぽい踊り、かっこいい踊り、可愛い踊り、恐ろしい踊り。そしてそのどれをもハイクオリティに演じ分けるのがすごかったですし、体幹が鍛えられているので所作が美しい。

 

あと、この演目で嬉しかったのは、成田屋の子役さんたちをたくさん見られたこと。市川福太郎君、福之助君、福丸君など忍性上人(市川右團次さん)の弟子として登場します。特に、福之助君は一番ちっこくって、でも動きは大人に負けず劣らず可愛かったですニコニコ

 

そんなこんなで新橋演舞場、昼の部(Aプロ)、どの演目も歌舞伎の魅力がギッシリ詰まって大満足の内容でした音譜おススメです。

 

さて、今日は夜10時から「市川海老蔵に、ござりまする」ですね。楽しみです。年末年始と歌舞伎役者の色々な密着番組を観ました。昨日は染五郎さんの密着番組を。私はそのなかで薫(くん)ちゃんの存在が一番印象に残っています。獅童さんの密着番組ではお母様の存在が。いろいろなお家の番組を見ても、やはり場面場面で思い出されるのは麻央さんのこと。今日の密着番組では、勸玄君の史上最年少宙乗り、河東節演奏会での麗禾ちゃん勸玄君の姉弟そろっての舞踊、麗禾ちゃんのかぐや姫挑戦と盛りだくさん。楽しみです。

 

次の歌舞伎観劇は国立劇場。来週観に行く予定です。新橋演舞場は後半にもう一度昼夜観に行きます。初日からどう変わっているのか楽しみです。