この演目は、あまり頻繁にかかりませんが、今まで3回くらい観ていたような。

福岡貢が、意地の悪い万野に追い詰められて、名刀青江下坂で、多くの人を斬ってしまうという話。料理人喜助は、貢の味方でちょっとイイお役。





御家騒動絡みのお話
阿波の蜂須賀家で、藩主の叔父の蜂須賀大学が御家横領を企み、家老今田九郎右衛門を陥れるために御家の重宝 名刀 ‘青江下坂’ を奪い、今田の息子 万次郎に紛失の罪を着せました。

元家来筋で、伊勢神宮の御師(案内をする神職) 福岡貢が重宝の刀と折紙(鑑定書)の詮議に奔走しています。


〈伊勢古市油屋店先の場〉
廓の油屋に、今田万次郎(梅玉さん)が刀が見つかったかと様子を見にやってきました。
万次郎と恋仲(には見えづらい)のお岸(児太郎さん)が迎え、喜んでいるところに、仲居千野が邪魔をするように、お岸を呼びに来ます。
千野は小山三さん。今月もお元気です。中村屋追善公演ですから、いつもよりもっとお元気です。
万次郎のことを、
蛍が飛んで来たわいな。蛍は夜になるとウロウロと 女郎の甘い汁を吸いに来る。と洒落て奥へ入って行きました。


福岡貢は、勘九郎さん。
青江下坂を手に入れたが、折紙はまだ見つかっていません。

仲居万野は、玉三郎さん。
千野も意地悪ぽかったですが、万野は貢に対してもっともっと意地悪です。
玉三郎さんの意地悪万野は、とぼけたような、クスリと笑える加減の意地悪ぶりで、絶品でした。貢さ~んとネチネチ言うのが、耳に残ります(笑)
このくらい意地悪でなければ、最後の場面には繋がらないわけでしょうね。
なぜ、こんなに意地悪なのか、敵役の岩治と北六と組んで、御家横領に便乗しようとしているらしいです。


貢がせっかく手に入れた青江下坂を万野が預けるように言います。これは仕方ないことなのですが、貢が躊躇しているところに、助け船に入るのが料理人喜助  仁左衛門さんです。喜助は信用できるのか?元は貢の父に仕えていたので、安心です。ことをのみ込んでいるので、青江下坂を敵役からも守ってくれ、しっかりと支えていました。


貢はお紺と恋仲ですが、客をとっているので、替りにつけられたのは、お鹿 橋之助さん。立役が演じる美しくない女形で、緑色の着物です。
お鹿は万野に騙されていて、貢に好かれていると思い込み、貢に貢いでいたつもりの金も取られてしまっていて、哀れでかわいそうなのですが、お鹿の真剣さを演じられる橋之助さんの真面目さが重なって、可笑しみも引き出されているように感じました。


貢がお鹿の言うことを万野に追及しても、万野はシラを切り、周りに、ほうき客とか伊勢っ乞食とか言われ恥をかかされます。

貢は怒りを静かに収めています。

不肖ながら福岡貢、女を騙し、金を取ろうや、バカなこと。

その上に、お紺に愛想尽かしをされてしまいます。胡弓の音色が入ります。
私は侍は嫌じゃわいな。
お前は御師、町人なら嫌じゃないぞえ~と言いつつ、お紺は岩次にしなだれかかります。

ここで、貢は怒り!
わしも町人は嫌いじゃ。
刀を喜助に持って来させて出ていきました。

お紺は、貢に心があるような、本心の愛想尽かしではないように感じられます。

愛想尽かしをする七之助さんお紺は、座っている姿が涼やかで美しいです。
貢とお似合いの感じでした。

お紺は、岩次に上手いこと言って、青江下坂の折紙を手に入れました。
貢に愛想尽かしをして、岩次を良い気分にさせたのは、やはり貢のためだったのでした。

貢は、喜助に持たされた刀が偽物と気付いて、(本当は、喜助が機転を利かせた本物の青江下坂なのですが)戻って来たところ、万野がまたチクリチクリと言うので、刀で打った拍子に鞘が割れて、本当に斬ってしまいました。そこから、お鹿も岩次たちも次々と斬りつけてしまいます。

ここまで、油屋店先の場でした。
登場人物が多く、出たり入ったりするのですが、それぞれの思惑があるので、目が離せません。

勘九郎さんの貢は、皆の嫌がらせによく耐えて、怒りを静かに表していきました。弾みで万野を斬ってしまってからは、自分の意思ではなく妖刀の力で動かされている感じで、別の世界にいるようでした。

〈奥庭の場〉
伊勢音頭の踊りが、殺し場の異様な雰囲気を引き立てています。白地の着物に血だるまの貢は、執拗に客を斬っていきます。


お紺が手に入れた折紙を持って、貢の前にやって来ます。真相を知らせる前に斬られてしまうのか?貢は正気に戻りました。

喜助は、貢の持っている刀が青江下坂であると伝え(頼りになります)、折紙も手に入って、良かったねの三人での幕となりました。


敵を斬ったはいいけれど、そうではない人も斬ってしまっているので、どうなの?ですが、お紺が斬られなくて、良かった~


勘九郎さん貢の感情は、激しすぎないところがちょうど良いと思いました。
七之助さんはとにかく美しく、貢のためにの心意気が良かったです。

仁左衛門さんの喜助は、出は少ないのですが貢をしっかり支え、頼れる感じでした。

玉三郎さんの万野は、嫌な人だけれど、笑えるくらいの意地悪ぶりで、中心的な存在で悲惨な話を盛り上げているようでした。


今回それぞれの人物像が特徴的に演じられていたように感じて、話が分かり易く、面白く拝見しました。




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