今月の歌舞伎座は、人間国宝の役者さんが揃いました。

勧進帳も、藤十郎さんの義経、菊五郎さんの富樫、
吉右衛門さんの弁慶。

長唄は里長さん、三右衛門さんが並び、
立三味線は栄津三郎さん。


上手揚幕から、菊五郎さんの富樫が登場し、
作り山伏の義経一行を、手ぐすね引いて待っています。

藤十郎さんの義経の、花道の出から、
四天王は、歌六さん、又五郎さん、扇雀さん、東蔵さんと、
ベテランの方々が登場され、義経を支えています。
そして、吉右衛門さんの弁慶。

義経たちは、源氏として平家と戦って活躍してきたのに、
今では、兄頼朝に追われる身となってしまった。
なんとか安宅の関を抜けて、
奥州まで落ち延びなければならない。
一行の登場は、道のりの険しさ、
これから難題に向かう、厳しい背景を想像させ、
藤十郎さんの哀愁の漂う義経と、
吉右衛門さんの切羽詰まった思い詰めた感じの弁慶は、
ぐっとくるものがありました。

花道に揃ったところまでで、ここまで表現されるのは、
やはり素晴らしい舞台なのだなと思いました。

山伏問答では、
菊五郎さんの迫力あるお声の台詞で、
弁慶にたたみ掛けていき、
対する吉右衛門さんの弁慶も、
臨機応変に負けず対等に攻めていき、
腹の据わったやり取りでした。

弁慶が義経を打擲する様子。
義経を富樫に預けるか、自分で殺すか。

弁慶の決死の大勝負だと思うのですが、
富樫は弁慶に対し、もうそこまでしなくても、、
主君に対する忠義と、覚悟に対し、もう充分です、
という気持ちでしょうか。
弁慶が主人を打ってでも救いたいとの思いが、
ここで伝わるのかな、と思いました。


関を通過して、「いかに弁慶~」のところでは、
藤十郎さんの器の大きさ、
家来への配慮、思いやりを感じました。
弁慶は申し訳無さそうに小さくなりますが、
子供っぽくはならなくて、
義経に対して、ただただ申し訳ない、
打ちひしがれた感じでした。
主従みんなが弁慶を讃えるところは、
本当のチームワークを感じました。



富樫が追いかけて来て、酒を振るまい、弁慶の延年の舞。
静から動へ、クライマックスへ向かっていきます。

義経、四天王を先に発たせて、安全を確かめてからの飛び六方。
たっぷりと堅実な花道引っ込みでした。


吉右衛門さんの弁慶は、
演出の派手さや誇張はあまり感じられなくて、
気持ちがしっかり伝わってくるので、
勧進帳の世界に浸ることができました。


素晴らしい舞台をありがとうございました!