孤独死をしたタキの親戚が家の片付けをしているところ。
タキが遺した自叙伝のお話です。
山形県米沢から東京へ出てきて
平井家に女中として働いているタキは黒木華さん。
昭和初期にして、モダンな感じの、
赤い瓦屋根の小さいおうちに、
女中として住み込みで働くことになります。
小さいおうちといっても、女中さんをおけるくらいなので、
それなりのおうちです。
平井家の主人は孝太郎さん。おもちゃ会社の重役です。
戦争で、日本が海外へ進出していくことで、
商売を広げようとしています。
会社の社長は、ラサール石井さん。
アメリカへ渡航した経験があり、
アメリカ人はビフテキとバターを食べている、
河内山宗俊ではないが、
ひじきに油揚げの日本人が勝てる相手ではない、
と言っています。
平井家に男の人たちが集まると、
商売、戦争などの社会情勢の話。
プラス、アメリカ人女性の話などで、盛り上がります。
戦争によって、人の思想は少し歪曲されていくもの。
そんな中で、デザイン担当で新しく会社に加わった、
板倉正治。吉岡秀隆さん。
身体が弱くて兵役の身体検査に合格しなかった青年です。
時子は、他の男性とタイプが違う芸術家肌の青年に
惹かれていきます。
戦争から離れたところで、通じ合うものがありました。
平井家の奥様、時子は、松たか子さん。
自由奔放なところが魅力です。
しかも、美しい。
板倉に会いに行くときは、ドキッとする程でした。
姉の貞子(室井滋さん)は、堅く生きているタイプで、
世間一般的な考え方なのだと思います。
妹が無頓着で、危うく見えているよう。意見したりします。
時子の戦争の思想に巻き込まれない自由な考え方が、
羨ましくも思えますが、
戦争のため、自由な考えや行動は、
周囲からも次第に抑圧されてきます。
タキは、魅力的な時子に憧れを持っていて、
女中として一生懸命働いています。
お坊ちゃんの恭一が病気になってからも良く面倒をみて、
平井家に献身的に尽くしています。
この時代、女中がいる家は珍しくはなかったそうです。
タキは素朴で素直で働き者。一歩下がっているタイプです。
タキにお見合いの話がありましたが、
相手は親子ほども歳の離れた50代の子持ち男。
笹野高史さん。
女は丈夫で子供をたくさん産んでくれればいいと。
これも時代なのでしょうが、
時子が断ってくれました。
板倉正治と出会ってからの時子の変化に気づいたタキは、
一人で悩むようになります。
板倉に召集令状が来て、出かけるという日に、
タキが考えた末にとった行動は。。
これが、’秘密’のまま、純朴なタキを
90歳くらいまでの長い人生、苦しめていました。
私は、長く生き過ぎたと言っていましたが、
心が美しいと思いました。
現代のタキは、倍賞千恵子さん。
少女のように泣き崩れていました。
キーとなる秘密の手紙は、自叙伝と共に遺品として
タキの甥の子の健史に託されました。
健史は、妻夫木聡さん。
現代っ子ですが、大叔母のタキの様子をよく見に来てくれた
心根の優しい大学生です。
東京家族でのお役のイメージとも重なりました。
健史は、宛名の書いていない手紙の差出人である
時子の、息子、恭一を探し出し、手紙を渡しました。
戦後およそ70年、恭一は福太郎くんから、
米倉斉加年さんに変わっていました。
タキが長い人生に抱えていた苦しみは、
恭一に受け継がれたように思えました。
母の事実を突きつけられて、苦しい涙する恭一。
亡くなったタキに対しての、
そんなに長い間、苦しまなくてもよかったのに、
というような言葉に、救われる思いがしました。
長生きした二人が、生きているうちに再会できたなら、
と思いましたが、
タキはやはり、最後まで秘密を抱えていたでしょう。
タキが自叙伝の終わりに流した涙には、
どんな思いが込められていたのか。
奥様に申し訳ないという気持ちなのか。
長く持ち続けた秘密の重圧なのか。
タキのあの日の選択は、とても辛いものでしたが、
平井家の幸せのため。
間違っていなかったと思います。
空襲で命を落とした時子は夫と寄り添っていたとのこと。
それで良かったのです。
時子は、始まったものには必ず終わりが来る。
と気持ちの整理をつけていました。
戦争で亡くなってしまった人と、
戦後いろいろなものを抱えて長く生きた人。
どちらも重い人生だなぁと、思います。
山田洋次監督、昨年11月の「さらば八月の大地」も
戦争中に生きる人々の物語でした。
戦争は、戦地に赴いた人だけではなく、
皆の人生を揺さぶってしまいます。
その時々に、皆が選択を迫られます。
時子は、人に後ろ指を差されるような事をしたけれど、
悔いの無い生き方をしました。
戦争がなければ、板倉に惹かれることはなかったのか、
わからないです。
いつの時代にも時子のような生き方の人はいるでしょう。
むしろ、現代の方が多そう。
昔も今も、人は道を外して迷ってしまうことがあるもの。
戦争があった故に、小さいおうちの人たちは、
繋がりを絶たれてしまい、
タキのように現代まで苦しみ続けた人がいたということでしょうか。