綱豊卿  橋之助さん
御祐筆 江島  魁春さん
中臈 お喜世   壱太郎さん
御年寄上臈浦尾  秀調さん
新井勘解由   我當さん
富森助右衛門  翫雀さん


松の茶屋で
お喜世は兄の富森助右衛門から文を受け取ったのを
上臈浦尾に詰問されています。
秀調さんの女方を拝見することは、
あまりなかったように思いますが、
お声は女方さんにもよく合っていて、
大奥の位の高い雰囲気が良かったです。

 魁春さんの江島はさりげなく舞台に登場されて、様子をうかがい、
お喜世に助け舟を出す間合いとか自然な感じです。
江島の人の良さがにじみ出ていました。
お喜世に優しいだけでなく、
助右衛門がお隙見できるように計らってやろうとする気遣いなど、
器の大きさがよく出ていました。

お喜世の壱太郎さん。若い娘さんがお城に上がって、
上様のおそばに召されて、しかもお気に入りで、
上臈が嫌味を言いたくなるような、かわいらしいお喜世です。
江島に助けられて事情を打ち明けますが、
はっきりした口調がしっかり者という感じです。
魁春さんと壱太郎さんのやりとりは見応えがありました。

橋之助さんの綱豊卿は豪快な感じでした。
上様の大きさを感じました。
助右衛門を試すようなところと、
自分の放埒を指摘されて逆上しそうになるが、
冷静に収めるところなど、緩急があって迫力がありました。
台詞を歌うような抑揚がもっとあったら、
真山作品らしさがでるのかなあと思いました。

新井勘解由は我當さん。
綱豊卿をたてつつ意見もしっかり持った、
実直な学者先生らしさがよかったです。

富森助右衛門は翫雀さん。
豊綱卿御座の間での、綱豊卿とのやりとりは、
助右衛門の心理の変化を、台詞よりも表情や態度で表すお役で、
自然に理解しやすかったです。
閾を超えるまでの心の動きがつかみやすかったです。

綱豊卿が去った後、
浅野家再興を口添えするのかどうか、わからず。
御殿に吉良上野介が来訪したのを知り、
斬りつけようとする助右衛門を、
ずっと同席していたお喜世が必死に止めます。
力いっぱい助右衛門にすがって説得する壱太郎さんのお喜世には
胸を打たれました。
壱太郎さんの渾身の演技、良かったです。

能舞台の裏側で、後ジテの登場に行く人物を
吉良と思って槍で襲いかかる助右衛門に、
綱豊卿が義とは何かを諭す場面は、
助右衛門の不心得を戒めて言って聞かせる熱意が伝わってきました。

みなさん、力のこもった熱演でした。
三津五郎さんのご回復を願っています。