伊右衛門の冷酷さ。
自分の欲しか考えていない。
自分の悪事を知る舅を殺した上、
実家に戻っていたお岩を取り戻したのに、
お岩と赤子を穀つぶし扱い。
産後の肥立ちが悪いお岩に対して、冷たい言葉を浴びせる。
隣の伊藤家からもらった血の道の妙薬をちゃんと飲めと言うところは、
お岩のためのようでもなく。
伊右衛門がお岩に、金目のものを出せと大声で要求するところは、
恐ろしく空気が凍るようでした。
隣家で、出された金に釣られたように、
御家の仇の高家への仕官を条件に、娘お梅との縁談を受け入れる。
ついにはお岩と赤子の着物と蚊帳を奪って出ていく。
色悪というけれど、強悪ばかり際立って、美しいのは染五郎さん。
見た目ではなく、こころが恐ろしい。
最後まで極悪非道を貫いていました。
お岩は、父を殺され、心ない夫伊右衛門から
冷たい仕打ちを受けている。
伊藤家の身勝手な欲望から、面体が変わる毒を飲まされ、
夫は伊藤家の娘と祝言を挙げようとしていると、
按摩宅悦から聞かされて、伊藤家へ乗り込もうとします。
女の身だしなみとして、化粧しようと、
歯磨きして、お歯黒つけて、髪梳きをする場面は一番のみどころ。
顔がすっかり変わってしまい、弱った身体のお岩の行動を、
菊之助さんが、淡々と演じ、
下座の三味線と独吟が効果的に、切なさ、不気味さ、
伊右衛門と伊藤家への恨めしさを、高めていきました。
また、民谷家の下男代わりに使われている、按摩宅悦(市蔵さん)が
この世のものとは思えないようなお岩の場面を、現実的に見ていて、
観客との間に入ってお芝居を引き立てているようでした。
市蔵さんの、伊右衛門やお岩とのやりとりの間は自然で、
動きも、自然にそこにいるような感じがしました。
小仏小平は民谷家の下男。民谷家に伝わる妙薬を盗み出し、
捕まって、薬くだせえ~と言いながら伊右衛門に殺されてしまうが、
戸板返しのために出てくるような。。
菊之助さんの早替わりでの演じ分け、楽しませていただきました。
直助権兵衛は松緑さん。
気があるお袖(お岩の妹)の夫佐藤与茂七を殺し
(たつもりが別人だった)、
伊右衛門を義姉の仇と強請ったりと、同類の悪党ですが、
伊右衛門の方が上手でした。
大詰の滝野川蛍狩の場は久しぶりの上演ということです。
退廃した世界が一変して、
伊右衛門とお岩の美しいお二人の舞踊の世界になりました。
こんなに良い時期もあったのに、、、
伊右衛門は少しは後悔していたのだろうか?
蛇山庵室の場は、お待ちかねの提灯抜け、仏壇返しの仕掛けで、
四谷怪談の出し物は観た、と満足。
菊之助さんのお岩さんを、たっぷりと味わいました。
最後は、菊之助さんは佐藤与茂七に変わって、伊右衛門に仇討ち。
そういえば、与茂七は死んでいなかったのでした。
手の込んだお話で、通し狂言を楽しみました。
宅悦女房の小山三さんは、花形役者さんとテンポ良くやりとりし、
江戸の女房を堪能させていただきました。。。お元気です!