「格言・故事成語」講座(3)

 漢詩由来の格言・故事成語



(その2) 国破れて山河あり

春望    杜甫


国破山河在
城春草木深
感時花濺涙
恨別鳥驚心
烽火連三月
家書抵万金
白頭掻更短
渾欲不勝簪



国破れて山河在り
城春にして草木深し
時に感じては花にも涙を濺
(そそ)
別れを恨んでは鳥にも心を驚かす
烽火(ほうか)三月(さんげつ)に連なり 
家書万金に抵(あた)
白頭掻けば更に短く
(す)べて簪(しん)に勝(た)へざらんと欲す



国都(の長安は)破壊されてしまったが、山や川は(昔と変わることなく)存在している。
(荒れはてたこの)町にも(いつもと同じように)春がやってきて、草や木は深くおい茂っている。
(この乱れた、いたましい)時世に心を痛め悲しんで、(いつもの春ならば楽しむはずの)花を眺めて涙をこぼし、
(家族と)はなればなれになっていることをうらめしく嘆いては、(楽しいはずの)鳥の声にはっと胸をつかれる。
(いくさの)のろしは幾月もの間ずっと続いてうちあげられて(戦乱はいつ終わるとも知れず)、
家族からの手紙は万金に価するほど貴重なものに思われる。
(悲しみのあまり)しらが頭をかきむしると、(髪の毛は心労のために)ますます短くなっていて、
冠をとめるかんざしをさすことがまったくできなくなろうとしている。

(『漢詩』・中道館)

 

*引用添付者  易者 香取玲伊奈