三谷文楽『其礼成心中』 | きたはら探題

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漫画原作者・北原雅紀オフィシャルブログ

渋谷PARCO劇場で、三谷幸喜さん作・演出の

三谷文楽『其礼成心中(それなりしんじゅう)』を観た。



きたはら探題-それなり


人形浄瑠璃・文楽座の始祖である植村文楽軒が

僕と同じ淡路島の出身だということもあり、

文楽という文化には、以前から関心が深かった。

できれば、文楽を扱った作品もいつか書いてみたいと思っているほどだ。


その文楽に、三谷幸喜さんが挑戦するという。

僕にとっては、その事実だけで十分に刺激的で、

内容が面白いかどうかは二の次だった(苦笑)のだけれど、

いざ観てみると、

「それなり」に・・・なんてことはなく、「かなり」面白く観ることができた。


物語は、近松門左衛門が書いた『曽根崎心中』の後日譚。

曽根崎心中人気にあやかり、一儲けを企む饅頭屋夫婦を描く。


演出は、本来の文楽とは少し趣を変えて、

初めて文楽を観る人にも楽しめるよう、工夫されている。

普通の文楽のように言葉を引き伸ばして語ったりせず、

話し言葉に近い形でテンポよく会話するので、聞き取りやすい。


話の展開は教科書的と言えるほどにオーソドックスなのだけれど、

張られた伏線の回収が実に見事で、何度も唸らせられた。

台詞もウィットに富んでいて、

おそらく文楽など観たこともないような人が多いであろう客席から

何度となく笑いが起こっていた。


ただ、文楽にそこまで慣れていない身としては、

2時間ぶっとおしで義太夫と三味線を聴き続けるのは

さすがにちょっと疲れた。

普通のお芝居なら、2時間程度なら休憩は必要ないだろうけど、

今回は休憩を挟んでみてもよかったのではないかという気がする。


先ごろ文楽を批判して話題になった橋下市長にも

是非この作品を観てもらいたい。

これならきっと、橋下市長にも満足してもらえるはず。

僕自身は、

古典は古典として受け継がれていくべきだと思っているけれど、

今回の三谷文楽のような「新しい文楽」にも

もっともっと出てきてもらいたい。

たとえば野田秀樹さんが書いた文楽とか

蜷川幸雄さんが演出する文楽とか、

個人的にはすごく観てみたいんだけどなあ(笑)


今回、この三谷文楽を観て、

ますます文楽の漫画を書いてみたくなった。

橋下市長の発言で、逆に文楽入場者も増えているというし、

どこかで形にできないかなあ。