大人計画『ふくすけ』 | きたはら探題

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漫画原作者・北原雅紀オフィシャルブログ

昨日、

Bunkamuraシアターコクーンで

シアターコクーン・オンレパートリー+大人計画2012

『ふくすけ』を観た。



きたはら探題-ふくすけ1

1991年の初演、1998年の再演を経ての、再々演。

僕が観るのは、今回が初めて。



きたはら探題-ふくすけ2

想像していたとおり、差別用語が飛び交う猥雑な舞台で、

観る人によって好き嫌いが分かれてしまいそうだけれど、

個人的には、かなり好みの舞台だった。


薬害によって奇形に生まれ、親を知らずに育ったフクスケ(阿部サダヲ)、

躁鬱を繰り返したあと行方不明となり、

やがて歌舞伎町の風俗業界でブレーンとなる女・エスダマス(大竹しのぶ)、

家を出た妻・エスダマスを14年ものあいだ探し続ける

吃音の男・エスダヒデイチ(古田新太)、

フクスケを利用して新興宗教を打ち立てる夫婦(オクイシュージ、平岩紙)、

自分の製薬会社が生み出した奇形児を引き取り、愛でるミスミ(松尾スズキ)

などなど、登場人物を羅列するだけで、いかにも毒々しい。


大竹しのぶの演技には、いつもながら圧倒される。

古田新太、新感線の舞台でよく観るカッコイイ役どころより、

今作のような弱さのある役を演じたときのほうが、個人的には好きかも。

それほど笑いのある芝居じゃないけど、阿部サダヲはさすがに笑わせてくれた。


エスダヒデイチと行きずりの関係をもち、

彼の純愛に共鳴してエスダを援助するようになる売春婦・フタバを演じる

多部未華子がキュート。

ただし、多部ちゃんファンがこの芝居を観ると、

ショックを受けてしまうかもしれない(苦笑)


概ね楽しく(と言うと、おかしいか)観れたのだけれど、

クライマックスで人が次々に死ぬあたりが

あまりにもバタバタしていて、ちょっと残念。

重要な登場人物の死を、余韻をもって受け止められないのが、

なんだかもったいない。

もしかしたら、意図的にそう演出してるのかもしれないけど。


永らく絶版状態で手に入らなかった『ふくすけ』の戯曲を、

劇場で購入することができて嬉しい。

しかも、松尾スズキさんのサイン入り!


この戯曲は、松尾スズキさんが20代で書いたもの。

それゆえの荒々しさが、心地いい。

僕も昔は、こういう毒々しいのを書きたくて、

今もその気持ちがなくなったわけではないけれど、

僕ももう40歳になっちゃったしなあ・・・。

どれだけ尖ったものが描けるか、難しいところ。

今はそんなに尖ったものを書いていないし。


初演のとき、ふくすけ役は温水洋一さんだったらしい。

どんなふくすけだったんだろう。

観てみたかったなあ。

初演時の劇場は、下北沢のザ・スズナリだったそうだ。

あの狭い空間で、この芝居・・・なんて濃密な。

想像するだけで、めまいがしそう(笑)


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