2024年9月6日午後9時 サントリ-ホ-ル

日本フィルハ-モニ-交響楽団第763回定期演奏会

指揮/カーチュン・ウォン

コンサ-トマスタ-:ロベルト・ルイジ(ハレ菅 コンサ-トマスタ-)

 

 

 

曲目

■ブルックナ-交響曲第9番 ニ短調 WAB109 3楽章

カーチュン・ウォンは1986年シンガポ-ル生まれで中学生のときからトランペットの演奏を始めた。当時からブルックナ-の曲が好きだったという。ドレスデンフィルのクルト・マズアから薫陶を受けている。

「音楽の友」8月号のインタビュ-ではブルックナ-の録音ではヨッフム、チェリビダッケ、ジュリ-ニを聴いていたがジュリ-ニの演奏が大好きとのこと。今回の演奏では”伝統的な演奏”を探求したいと抱負を述べている。”伝統的な演奏”とは最近の流行のピリオド奏法ではなく今までの伝統的な演奏スタイルを意味するようだ。

フルトヴェングラ-、ベーム、ヨッフムのブルックナ-の神聖で壮大な演奏は今は聴くことができないが1988年のジュリ-ニ/ウィ-ンフィルの演奏をYou tubeで聴くと壮大な演奏だが宗教性は感じとりにくい。マゼ-ルのブルックナ-は音響そのものだった。

カーチュン・ウォンの演奏は壮大なブルックナ-を目指していて金管はパイプオルガンの如く華々しい響きだ。

これから死へ旅立つこの世の最後の情景を表している曲想としては少し違和感のある表現だがハーモニ-に重きを置く曲の捉え方からは矛盾はしていないだろう。ブルックナ-の音楽を神聖に捉えるかパイプオルガンのような華々しい音響に捉えるかでブルックナ-ファンは二分されているようだ。昨日の都響ブルックナ-7番と今回の演奏会でブラボ-の声援を送る観客は多く指揮者がカーテンコ-ルするまで残る百名以上のファンを見かけた。一方それに反し演奏終了とすぐにそそくさと席を立つ観客も多い。

今は無宗教に近い時代なのでカーチュン・ウォンの強烈なブラスの演奏は昨日の都響の大野和士同様に主流になっているかもしれない。

カーチュン・ウォンの少しアップテンポのリズム感から生まれる中華的な抑揚の響きには違和感があったが最後にひっそりと消えていくメロディ-の歌わせ方は東洋的な神秘さがあり親近感を覚えた。

日本フィルの演奏は昨日の都響に比べ弦楽、金管セクションの響きが粗い。木管セクションの響きはさらに厚みが欲しい。

都響より良かったのはコンサ-トマスタ-:ロベルト・ルイジ。グアルネリ・デル・ジュスを貸与されて演奏し日フィルの第1ヴァイオリンから抜け出てひときわ美しいヴァイオリンの音色が聴こえてきた。

他にはティンパニのエリック・バケラのリズム感の良さとティンパニの演奏音は深みがあった。

 

コントラバスの配置が舞台奥の左から右に配置されいつもより明瞭で歯切れの良いコントラバスの音が聴こえた。

 

カーチュン・ウォンは10月にハレ管弦楽団と4楽章ヴァージョンで演奏する。

 

座席は2階 RB 4列のA席、2階バルコニ-右で好んで聴くサントリ-ホ-ルの残響音が美しく感じられる場所。

観客は6割前後でチケットは購入しても来ない定期会員または招待客が多いようだ。ちなみに9/7は当日券はなく完売。