薄毛同盟③ | MK’S BAR

薄毛同盟③


ワタシの身体と心を幾人もの男達が駆け抜けていった。

最後に恋愛をしたのはもう三年も前のこと。

自分では忘れようとしているけど、初めて結婚まで考えた男だったから中々そうもいかない。


『開店10分前です♪スタッフは待機の姿勢を取ってください♪』


店内アナウンスが流れた。

『三島屋百貨店フロアマネージャー泉川由美』

裏側にくっついていた銀色のネームプレートを表へと返して黒のヒールを45度に開く。

ジャケットの襟を正して、スカートのシワを整える。

大学を卒業して、名門百貨店に就職してから早七年が経つ。

二週間後はワタシの三十歳の誕生日。


『本日も三島屋へ起こし頂きましてありがとうございます♪』

いつもと同じ日常の朝。

秋のセールに押しかけた人達のうねりがワタシのフロアにも流れて来た。

ワタシは待機の姿勢から接客態勢へと入った。




ピシュンッ!!


もちろん実際にはそんな音は聞こえないのだが、彼女の心の耳にはいつもそう聞こえる。

記事を書き上げて、更新する瞬間。

もっと言えば、自分の気持ちを全世界にインターネットを通じて、発信する瞬間。


『一流デパートフロアマネージャーの徒然草 ( ´艸`) 』


泉川由美は所謂、『ブログ』を三年前から開設している。

一流百貨店の裏側と歯にものきせぬ物言いで、一日平均3000アクセス。

そこそこの人気ブログとなっていた。

『ゆみりん、すごいです♪』

『どうやったら、ゆみ姉みたいな素敵な女性になれるんですか?』

『ゆみりん、僕に直電ください!!ぜひお会いしたいです!!・・・ホテルマンMK♪』

『ウハハハハハハ♪ゆみさん、素敵です♪』

毎日のコメント数は軽く二桁には手が届いている。





『薄毛の男性を支える会、発足』

『サポート女性会員募集!!高額御礼致します』


『※貴女は髪の毛の多さでその男性を評価するのですか?

その男性の内面を見てください!!そんな心の清らかな貴女を探しています♪』

~管理人ウエスト。




ふと、あるブログ記事が目に留まった。

そして、由美はおもむろにパソコンのキーボードを打ち始めた。




ピシュンッ。


エントリーの瞬間、由美の耳には確かにその音が聞こえた。

長い睫毛にくっきりとした潤んだ二重の大きな瞳。

白く透き通った美しい肌と艶かな黒髪。

明日は早朝からマネージャー会議だ。

午後からは外商部の人間と、クレーム処理で某高級住宅街に赴く予定・・・。


『ホスピタリティと言う名の大義名分に吸い込まれたワタシの青春・・・・・』

独り言をつぶやいた後で美人ブロガーはパソコンを閉じた。


雨が降ってきた。

晩秋に、物思う夜の雨。

これからは、ひと雨毎に・・・空気が冷たくなってゆく。

冬はもうそこまで来ているのだ。



MK’S BAR-LASTORDERが来ない夜-2nd Season-090913_2220371.jpg