ホテルマンMK、午後十時の闘い《前編》 | MK’S BAR

ホテルマンMK、午後十時の闘い《前編》

午後十時、仕事を終えた私はいつもの様に、愛車をコンビニエンスストアの駐車場へと滑り込ませる。


漆黒に包まれた夜の世界で光りを放つ、街のオアシス……この店で煙草を買う事が一日の最後を締めくくる…私の日課になっていた。


そして、かれこれもう一年にはなるだろうか。


私は毎夜、この場所である男と闘っていた。





営業日報をキーボードに叩き込んで…パソコンの電源を落とす。


事務所とブライダルサロンに施錠を掛けて、ホテルと言う名のオフィスを後にする。


頭を駆け巡って来るのは、今日出会ったゲストの顔と……これから迎える、至福の時間への期待だ。


擦り減らした精神に、少しばかりのアルコールを垂らす。


そうして、また明日から頑張れるのだ。





『今夜も奴がいる』



コンビニエンスストアのショウウインドウ越しに、男の姿を確認すると同時に…私は覚悟を決めた。


愛車を降りてドアを閉める。


高級車らしい重厚感のある音が、一月の冬の空気に心地良く響いた。


つづく。