ケッコンシキ仕事人~想うがまま~《101軒目の結婚式場》 | MK’S BAR

ケッコンシキ仕事人~想うがまま~《101軒目の結婚式場》

東北の冬は長くて厳しい。



冬は確実に、そこまで来ている。



秋の風物詩、東北の『芋煮会』がその事をケッコンシキ仕事人に知らせていた。





宮城県A市。 結婚式場、『モンドセレクション宮城』



星野達郎は婚約者の矢吹薫の手を引き、遂にここまでやって来た。



東京から始まった・・・二人の結婚式場選びは苦難の道だった。



何処を見ても、どうもしっくり来ない。



101回目のプロポーズの末にやっと、最愛の婚約者を見つけた達郎にとって、



結婚式には強いこだわりがあったのだ。 



関東をどんどん北上して、彼らの訪ねた結婚式場は、ちょうど101軒目に到達していた。




ブライダルサロンの奥からその男は出て来た。



名前を、ケッコンシキ仕事人なのだと云う。



「ふざけた野郎だ。」 最初はそう思った達郎だったが、



ケッコンシキ仕事人なる人物の魅力に引き込まれていくのに時間は要さなかった。



とにかくケッコンシキ仕事人は二人のエピソードをよく聞いてくれた。



二人の結婚式のコンセプトも考えてくれた。



「101という数字にこだわりましょう。」



招待するゲストは101名。



挙式後、101個のバルーンをリリースして、101羽の鳩を空へと解き放つ。



新婦の手には101本の薔薇のブーケ。



この男の提案は面白いし、何よりも信頼出来そうだった。



しかし・・・。



達郎は薫へのプロポーズで、トラックの前に飛び出して見せた男だ。



愛する婚約者を失くしている薫に見せた、達郎の魂の叫びだった。



『僕はどんな事があっても死なない、必ず君を幸せにする。』



命懸けのプロポーズを決行した達郎にとっては、あと一押し・・・



心の底に響いて来る何かが欲しかった。



「わかりました。私の魂の叫びをお二人にお見せしましょう!」



プロポーズのエピソードを達郎から聞いたケッコンシキ仕事人はうなづいた。



ちょうど運送会社の大型トラックが、駐車場に入ってくるのがサロンの窓越しから見えた。



ケッコンシキ仕事人は意を決して駐車場に飛び出した。




ドン!






東北の冬は長くて厳しい。



冬は確実に、そこまで来ている。



重くのしかかる、曇天の空を見上げながらケッコンシキ仕事人はその事を実感していた。



薄れていく意識の中・・・何処からか漂って来る『芋煮会』の香りに・・・



ケッコンシキ仕事人は想うがまま・・・嗅覚を研ぎ澄ますのだった。



(完)




※ケッコンシキ仕事人様、ごめんなさい~(切腹)