テーマ:知財検定合格講座 不正競争防止法の記事


水曜日で疲れが溜まってくるころですね。今日も一日お疲れ様でした。


不正競争防止法に関する興味深い記事を見つけました。

以下読売新聞のオンライン記事を一部抜粋及び編集しました。


『同じビルに出店し、類似した看板などを不当に使っているとして、焼き鳥チェーン「鳥貴族」(大阪市)が、
焼き鳥店「鳥二郎」を運営する「秀インターワン」(京都市)を相手取り、6050万円の損害賠償や標章の使用禁止などを求め、大阪地裁に提訴した。


訴状によると、鳥貴族は今年1月現在で全国で387店を運営。秀インターワンは昨年4月以降、大阪、京都両市などに鳥二郎12店を展開し、うち4店は鳥貴族が入るビルにあるとした。
鳥貴族側は、鳥二郎の看板について、「鳥」の字を崩した図形や、赤と黄の配色が、全国的に知られている鳥貴族の看板と極めて似ている、と主張。さらに、全品均一の価格表示▽木材を多用した内装▽黒いTシャツにバンダナ姿の店員の服装――なども同じで、著名なものと類似する表示を禁じた不正競争防止法に違反する、と訴えている。

また、鳥二郎近くの店舗は売り上げが減少し、鳥貴族で飲食したと思いこんでいる鳥二郎の利用客から、苦情が寄せられることもあるとした。』


ところで、本件は、商標ではなく、なぜ不正競争防止法での争いになったのでしょうか?


商品「焼き鳥」について商標「鳥貴族」として商標登録を受けた場合は、商標「鳥貴族」と「鳥二郎」とでは非類似のため権利侵害になりません。(商標「鳥貴族」の商標権が存在するかは確認していませんが・・・)
では、商品「焼き鳥」にて商標「鳥」を権利化することも考えられます。
しかし、商標「鳥」は普通名称を普通に用いられる方法で表示したに過ぎないので、3条1項1号の拒絶理由通知を受けるため登録されないと考えられます。
よって、鳥貴族は、商標での争いではなく、不正競争防止法で訴えようということになったと考えられます。


ここで、不正競争防止法2条1項1号にいう「商品等表示」とは何でしょうか。
法文では、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。」と定義しています。すなわち、種類や方法を問わず、ある事業者の商品又は営業を表示するものであれば保護の対象となりえるわけです。


具体的に「商品等表示」となりえるものには以下のようなものがあります。

●「氏名」;愛称・略称、雅号、芸名、グループ名等が含まれます。

●「商号」;会社や事業者を表すものとして、商号や屋号、店名が保護の対象となりえます。

●看板・特徴的な店舗表示;この点、有名な例としては、「動くカニの形をした看板」があります。

●商品自体の形態;これが商品等表示として保護の対象となることがあります。しかし、商品の形態が商品等表示といいうるためには、その特徴的な形態を一見しただけで、特定の会社のものであると分かる程度に知られていることが必要です。

●営業のやり方そのもの;営業のやり方そのものに表示としての機能を認めたものもあります。


以下、「商品等表示」が不正競争防止法2条1項1号によって保護される要件を見てみます。
具体的には、以下の要件が必要です。

1)商品表示性;当該表示が、「商品等表示」つまり、ある商品を示す印として機能している必要があります。

2)周知性;この商品等表示が、需要者の間で広く認識されている必要があります。

3)類似性;商品等表示が、同一又は類似している必要があります。

4)混同のおそれ;需要者が混同を起こすおそれがあることが必要です。

なお、不正競争防止法2条1項1号は、「混同のおそれ」が必要のため、ハードルが高いです。


※なお、混同のおそれが無い場合は、著名表示冒用行為(不正競争防止法2条1項2号)で訴えを起こすことになります。
不正競争防止法2条1項2号は、 自己の商品等表示として、他人の著名な商品等表示と同一あるいは類似の商品を使用し、またはそのような表示が使用された商品を譲渡引渡等することを禁止しています。この場合は、先の混同惹起行為と異なり、混同の要件は不要となります。
この場合は、先の混同惹起行為と異なり、混同の要件は不要となります。
ただし、「著名」な商品等表示と認められるためには、先の「周知」よりも一段と広く知られているもので、全国的に誰でも知っているようなものでなければなりません。

本件の訴訟が和解で終結するのか、判決が出るまで争われるのか、興味深いので経過を見守ることに致します。