無色無音
仕事が終わってから
あの人の家に寄ってきた
暫く戻らないからと
冷蔵庫の整理を頼まれた
……から
寄ったついでに
自分の荷物を少し
それと
いつも一緒に見ていた
あの人が大事にしている
ワンピースのDVDを借りてきた
……一人の時間を持て余さないように
家主の居ない
あの人の居ない部屋は
寒くて
とても広く感じた
真夜中に一人きりで
キッチンに立ち
洗い物をし
食材の整理をし
ゴミをまとめる
あの人がこの間、作ってくれた
豚汁が
お鍋の中で腐っていた
寂しくて
悲しくて
……辛い作業だった
嫌な事や
悲しい事があったり
一人が耐えられない時に
何も言わずにそっと
抱きしめてくれた
広くて温かな胸は
もう此処には無い
私は唯一
安心して甘えられる胸を
失ってしまった
これから先
何を心の拠り所にすればいいのか
分からない
気持ちを切り替えて
落ち込まずに
笑って
強く生きようと
決心したばかりなのに
悲しいほど脆く
簡単に
心は折れてしまった
他に誰か探すなんて
無理だ
出逢いなんていくらでもある
手に入らないからこそ
執着してしまうのだと
鼻で笑う人もいるかも知れない
でも今は
とてもそんな風には
考えられない
悲しいよ
悲しいよ
寂しいよ
あの人には
絶対に言えない
だから
ここで言う
戻ってきて
傍に居て
置いて行かないで
私は自分で思っていた以上に
弱虫だ
こんな自分は
知りたくなかった
女々しくて
情けなくて
鬱陶しくて
大嫌いだ
笑って
笑って
笑って
強くなれ
強くなれ
強くなれ
いつまでも凹んでいたって
誰も助けてくれない
辛いのは自分だけじゃない
自分で立ち上がらないと
未来は開けない
今は先が見えなくても
苦しくても
あの人だって頑張っているから
会えなくても
連絡は出来る
そう思えば
一人じゃないから
元気を
取り戻さなくては…