影 | 暗がり関係者の本音


やはり………



私は心が弱いのだろうか



時間が経つ程に



胃の痛みが増し



極限に達し




それを超えたら



今度は、物凄い罪悪感が襲ってきた





昨日は



例の可愛いお兄ちゃんのメールを



完全に無視して



ひたすら仕事に集中した





忘年会で、あの人は泊まりで飲みに出掛けていて家に居ない



仕事が上がっても、真っ直ぐ帰る気になれず



マミちゃんを誘って、カラオケに行ってきた



歌って 喋って 飲んで……



少しは気分が晴れたと思ったのに



自宅に着いた途端に、胃痛が再発



罪悪感も倍増





メールの返信が来ない虚しさは



よく分かってる



お客様に営業で送ったメールの返信が来ないだけでも



実は結構凹む





客として成立しないからと言って



このまま放置し続けて、人として良いのだろうか…………



仕事を早退して会え なんて言う人に



誠意は無いかも知れないが



盛り上げるだけ盛り上げて、マジになったらシカトってのは



私の方が酷い人だよな



心が痛い………





だけど、店以外で付き合う気は全く無い



ならば、多少酷でもこのまま知らん顔を貫いた方が良いのだろうか?



所詮は夜の世界の女

性格悪くて当然か……



と、思ってもらって終わらせるのが一番良いのかな





こんなにも、あのお兄ちゃんが気になるのは



まるで、おーちゃんを放ったらかしにしてるような気分になるから




メールの内容も



腕の太さも



繋いだ手を離さないところも



行っちゃうの? と下から見上げる目も




おーちゃんに似すぎている





いつの間にか、勝手におーちゃんを重ねてしまっている自分が居た



公私混同と言うのは、こーゆう事だろうか



おーちゃんはあまり上手じゃなかったけど



彼は歌がとても上手だった



最初に会った時に歌っていた

Another Orion

が耳の中で聞こえる



私は一体、何をどーしたいんだろう



自分で自分がよく解らない



ただ一つ確かなのは、また彼の歌を聞きたいと思っている自分が居る事



本当に訳が解らん





久し振りに若くて可愛い子に求愛されてオカシクなってるだけなのか



胃痛をおこすまで悩む必要はあるのか



私は昔、熱心に通ってくれたお客様に対して



もっと酷い仕打ちをした事が何度かある



その時には、こんなに心が痛まなかった



年齢を重ねて、少しづつ弱くなっているだけなのだろうか





今後もこの世界で生きて行くのなら



こんなことで躓いてるようじゃ



いつか波を乗り越えられなくなる





マミちゃんと知り合った頃に彼女が言っていた



お客様に嘘をつく度に心が痛いと



そんな感覚はもうずっと昔に忘れてしまっていた



だから、その発言にとても驚いた



心が痛むどころか、私は仕事だと思うと平然とペラペラ嘘を言う



人として、これじゃダメなのでは? と悩む事も無い



人様にご馳走される事に慣れ



物を買って貰う事にも慣れ



感覚は年々、麻痺していく



ごくたまに、自分が腐っていると思う事はあっても



辞めようとは思わない



歪みきっただけなのかも知れないけど



これが当たり前





なのに



無駄にざわざわとする



苛々とする





あのお兄ちゃんも最終的には寝たいだけで



もしかしたら私よりも数段酷い人で



ただの遊び人なのかも知れない



なのに、その気持ちに応える事が出来ない事に



何故、こんなに罪悪感を感じるのだろう





あの人に言ったら



バカなんじゃないの?



と 笑われるかも知れない



あの人は



私の仕事上の汚い部分も見ているし、知っている




数字を上げる事だけを目的として



接客中は笑顔で頭の中の電卓を叩く





こんな人間なのに



凹む意味が解らない





少しばかりおーちゃんに似ているだけで



こんなにも感情移入してしまうなんて





本物のおーちゃんに逢えたのなら良かったのに……