秋暑し燃料デブリの強面

 

福島第一原子力発電所の燃料デブリ取り出し作業が、手順違いによる延期を経て9月10日ようやく始まった。

事故から実に13年経過してる。しかも対象デブリ880トンのうち今回はわずか3グラムだ。

とにかくとんでもない事故であったことが、今さらながら胸につきささる。

この大事な作業にあたり、手順ミスが生じ着手まで3週間も遅れた。

信じられない。

事故発生自体はもちろん、以降東電には考えられないようなミスが多発しており、組織体として大きな欠陥を有していると思わざるを得ない。

 

事故処理費用は、すでに事故後10年間で少なくとも13・3兆円に上るが、政府は総計では21.5兆円を見込む。(2021年時点:東京新聞)廃炉作業の遅れにより、今後さらに増えることは必須だ。

これらの天文学的費用は我々国民の負担になり、東電は倒産することもなく今に至っている。同じ国策会社だったJALは経営危機に際して、一度倒産して、同名の新会社で再生したことと大きく異なる。

 

会社は資本主義の原理を超えた、超法規的処置によって、生き延び、政財界ともに原子力の延命、再推進に動き、自民党総裁選においては、全候補が原発推進を掲げるに至った。

 

燃料デブリのことも、当たり前の光景として皆の意識から埋没してしまっているように思う。

おそらく半永久的に解決しないと思いながらも忘れ去る努力を続ける

 

今年の揚羽蝶の句

 

見失う真美子カットや揚羽蝶

バス停の小さき花壇揚羽蝶
爆心地高き空ゆく揚羽蝶
駅頭を去らぬ揚羽や夕さりて
夕暮れの生産緑地揚羽蝶

 

(ひぐらし)や蝶のみ杉の秀(ほ)をゆきて   石田波郷

 

石田波郷29歳は昭和17年6月26日に吉田安嬉子(あき子)と結婚した。

新婚旅行は群馬県伊香保温泉であった。

 

掲句は、句集『風切』に伊香保二句として掲載されたうちの一句。

 

梅雨時の句に、季語「蜩」と「蝶」が登場。難解です。

 

以下、ネタモトである、あき坊さんの解説を引用します。

 

>『蜩』は秋なので、波郷の心の中に鳴く蜩としても、『蜩や』と詠嘆されると眩暈がする。

『蝶のみ』と蜩の不在を明示しているし。見上げれば『杉のほをゆきて』ふわふわと(不安定に)蝶が飛んでいる。波郷もなにかと不安げ。<

 

あき坊さんのブログによると、その後出征して病を得て、昭和23年には病床にあった。その時の句にも蝶の出て来るものがある。

 

凍蝶や妻を愛さざる如病み臥す(句集『惜命』)

 

>愛してはいても、医師から禁欲を告げられている。男盛りの身体も持て余す。すなわち『病み臥す』のみ。<

 

 

 

出所: ブログ「何もせずぼ~っとしている芸をやっと手に入れた」

 

                 クジャクチョウ(長野)

薊なる蝶は思ひ出八月尽

 

昆虫少年だったころ、地元にはクジャクチョウはいなくて、図鑑をみて憧れのチョウでした。

関東で就職して、夏休みに家族と長野に行ったとき、初めてこの蝶に出会ったとき、感激したものです。

 

当時、詠んだ短歌。

少年のころに夢みし孔雀蝶 このあざみ野に舞ひ遊びおり

 

                ギンボシヒョウモン(長野)

そして、薊は高原のチョウたちの最も普通に好む花のひとつです。

 

それで、

井上陽水「少年時代」は刺さりました。メロデイも素敵、なんといっても出だしの1節で決まりでした。

ただ、私にとっては、薊と蝶の思い出といえば「少年時代」というよりも、長野での強烈な体験がよみがえり「中年時代」という感じです。

 

              オオウラギンヒョウモン(阿蘇)

 

夏が過ぎ 風あざみ
誰のあこがれにさまよう
青空に残された
私の心は夏模様

・・・・

 

夏まつり 宵かがり
胸のたかなりにあわせて
八月は夢花火

・・・・

 

夢はつまり
想い出のあとさき

 

 

 

さて、掲句ですが、「薊」と「蝶」は春の季語。「八月尽」は秋の季語のはずです。 ┐(´д`)┌ 

 

 

 

 

夏の句(3)です。

コメントいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

 

 

新版の恐竜図鑑夏休み ※

新版の図鑑贈れり夏休み

夏帽子童女は髪を伸ばしけり

氷旗の朱色まぶしき海の家

炎天や「天地無用」の赤き文字 ※※

わたつみや唯静かなる原爆忌 ※※※

御幸待つ母におはせり終戦忌

静かなる蛍の墓の嗚咽かな

老鶯や世俗の些事を他所にみて
朝顔の鉢ぶら下げて屋台酒

うじうじと幼虫生まる木下闇

ひっそりと閉院通知百日紅

片陰や音無く傾ぎゐる街路

夏祭り手描き掲示に誘はれて

花美人蕉(カンナ)シルクハットの仮面たち

立ちあがる向日葵首をもたげつつ

 

※365俳句ポスト「夏休」類想

※※ネット句会漢字席題14句中1位句

※※※同上8月課題15名30句中1位句