Sweet world

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恋愛ゲーム・少女漫画だいすきな20代女
基本自己満でかいてまーす

Amebaでブログを始めよう!

LINE漫画で「隣のあたし」が3巻無料だったので読みました。

3巻までの感想…
ま、前途多難だけど京ちゃんとカップルになってめでたしでしょ。
だったよ。ほんとに…

でも3巻まで読んで続き気になってブックオフに走ったわたし♡
節約術だよね♡
全巻あってよかった(  › ·̮ ‹  )笑

んで、一気に読みました。

全巻読んだ感想…
ブックオフまで走ってよかった!!←は?

ストーリーは、ありきたり。
↑失礼です

ヒロインの仁菜ちゃんが隣に住む幼馴染で1つ上の京ちゃんに恋してると思っている話。
でも京ちゃんは同級生の女の子、麻生さんと付き合う。
この麻生さんてのがめんどくさいし、色々こじらせてる感じの子。
わたしは嫌いなタイプだし端折りすぎ笑

そこに仁菜ちゃんの事がすきな三宅くんが登場して話が進んで行くんですよ。

わたしは三宅くんにきゅんきゅんしてしまったよ〜!
早速わたしがきゅんとしたお相手、三宅くんを紹介致します!



かわいーー(°▽°)♡

わたしの好きなバスケ男子♡笑
最初はねー、
ん?誰だっけ?
とか思ってたんだよ。
なんかクールな感じしたから

そしてクールな感じの三宅くんがこちら



かっこいーー(°▽°)♡


結構素っ気ない感じでね。
でも、ずっと仁菜ちゃんのこと見てたんだよね。
京ちゃんの事で一喜一憂する仁菜ちゃんを。
そんでそこが可愛いなって思ってたんだ。
京ちゃんの事好きなのも含めて仁菜ちゃんの全部を好きになったんだよね。
話が進むにつれて明らかになったんだけど。
でも完全な当て馬じゃん!!!
って真面目に思ってました⸜(  ⌓̈ )⸝
今までみんな散って行ったし…
CRAZYの赤星くんとか。
ヒロイン失格の弘光くんとか…!!
弘光くんだけはほんと認めない!!
利太より全然いーのに

最初、三宅くんは京ちゃんの事忘れなくていいって言って付き合うんだけど、やっぱり付き合ったからには自分のこと見て欲しいってのが本音…

そして結果三宅くんは京ちゃんばっかり目で追ってる仁菜ちゃんに耐えれなくなって別れを選びます…
でも別れてからやっぱり離すんじゃなかったと後悔…

三宅くんが感情的になったシーンがこちら



これは京ちゃんが三宅くんに会いに来て、仁菜ちゃんに気持ち伝えるって言った後に自分の部屋で…
わや切ねーーーーー!と声に出しました…
すっぱり諦められるわけないもんね
それに三宅くんと別れるとこ見れば京ちゃんとくっつくって思うわな…

でも別れる前、すごくいいシーンがあったんだよ
それがこちら


傘届けに来て一緒に帰ろうと言う京ちゃんを追い払う仁菜ちゃん
↑ちょっと違うケド

ここ、いいシーンだと思ったのわたしだけ??
三宅くんの片想いから始まった付き合いだけど、ちゃんとカップルになってたと思うんだ
でも三宅くんがキャパオーバーになった結果別れちゃうんだけど…
それによく考えればキャパオーバーにならないはずないなと。

でも別れてから仁菜ちゃんは自分の本当の気持ちに気付くんだよね。
別れた後でも三宅くんが絵馬にまで
ずっと笑っていれるようにって書いたのを見たから…

もうここで内心キターーーー!!って思ったよ∠( `°∀°)/笑
その反面、下手にどんでん返しあったらどうしようとも思いました…泣

そんなこんなで、突然え!?って思うくらいのヒステリーを起こした麻生さん
↑こえーよ
そんな麻生さんに仁菜ちゃんが一言。
「もう1回片想いからはじめます」

…よく言った!!!

仁菜ちゃんは三宅くんに片想いするところから始めると言いました。
キスして夜眠れなかったのも、離れたくないと思ったのも、たくさん笑顔にしてくれたのも思い返せば全部三宅くんだった事に気付いたんだね!
麻生さんは気に入らないだろーけどな(°▽°)笑

卒業式当日、三宅くんのとこ行こうとするんだけどそれまで三宅くんを支えてた友達に「これ以上三宅を振り回さないで」と言われ何も言えず。
でも京ちゃんに背中を押されて告白します。
ここのシーンはね、涙ぼろっぼろになって読みました٩( ᐛ )و
感動したよ〜!!泣




仁菜の告白に答える三宅くんがまたいいんだ!
泣きながら
「やめてよ。言ったじゃん。俺は上村が笑ってるならなんでもいい」
「上村が誰といたって笑顔でいてくれんならいい」
「だけど…俺に笑ってくれんのがやっぱ一番いい…」


感動以外にありますか!?

三宅くんの大勝利だった( ¯ ¨̯ ¯̥̥ )

そして勝因はなんだったのか??とふと疑問に

京ちゃんといて仁菜ちゃんが泣くのは悲しい涙。
三宅くんといて仁菜ちゃんが泣くのは嬉し涙。

大きいのはここじゃないのかなぁ…

それに京ちゃんは今更感がハンパなかったᐠ( ᐝ̱ )ᐟ
兄妹に思われてるから本気の好きが言えないなんて…
甘えだ、こら!
↑何サマー

キスを拒否されたくらいで自分でケリつけんなって話(°▽°)
その前に仁菜ちゃんが告白したのにいきなりキスしようとするなよ(°▽°)
行動より先に言葉でしょーが
それにほんとに好きならそっからだろーが!的なね
それに京ちゃんは泣かせすぎ。
自覚してたとこがまた…

その点、三宅くんは最初から最後まで仁菜ちゃん一筋だったから。
三宅くんはいつでも相手のこと仁菜ちゃんのこと)考えてた。

付き合う前も付き合ってる時も別れた後も仁菜ちゃんが笑っていて欲しい。

だからこそ京ちゃんから仁菜ちゃんに告白するって聞いた時、ムカついたと思うんだ
笑顔でいて欲しいのは本当
でもその笑顔の理由は自分だったらいいとか
まだ好きだからこそ自分じゃない人といて笑顔になるのに嫉妬とかそんな感じなのかなとか
京ちゃんが仁菜ちゃんのこと昔から可愛いって思ってたなら何で傷付けることばっかするんだとか
色んな感情があったのかなーと。
勝手な解釈ですが(´°ω°`)


でも最後くっついてくれてよかったー( ´◡͐︎`)♡

好きな漫画の1つになりました♡
みんなも読んでみて下さいね〜!
きっと気持ちわかると思うから∠( `°∀°)/





前回書いたように弘光くん見たくて、夜勤明けにヒロイン失格読み返しましたよ
知らない内に寝てたがな

弘光先生好きになったのも、ヒロイン失格見て弘光くん見てからなんだけど。
だって顔一緒だし!
弘光先生のが冷めた顔してるけど!
でも弘光くんも最初似たように冷めた顔してたけど!
↑うるせーし、誰も聞いてねぇ笑

今は弘光くん推しですが最初は弘光くんあんま好きじゃなかったんですよ…
だってイケメンだよ!?
ちゃらー⸜(  ⌓̈ )⸝ってしてんだよ!?←失礼

でも読み進めていく内に利太じゃなくて弘光くんと最後を迎えてくれ!とまで思ったわ…
知らない内に弘光マジックにかかってたわ…




うへえぇぇーニヤリ
弘光くんが感情出してるー!!!
もうはとりのこと本気だもんね(°▽°)





これは反則だっっ!!

別れた2人だけど、涼ちゃんに「キャパオーバーになったから逃げただけだろ」(端折りすぎ)と図星をつかれ、考え直した弘光くん。
弘光くんははとりの全てを受け入れるって言って戻ってくるだよねー

読んでてねー…
王子様♡と思ったわたしはアホなんですかね。
アホなんでしょーね。


はとりが羨ましいよ、ほんと。
弘光くんのことだって、イケメンだし自分に構ってくるし、こんなイケメン逃したら次はないかもくらいに思って最初は付き合ったわけだしね。

わたしでもこんな美味しい経験したら
うぇっ!?
こんなイケメンが???
わたしなんかを???
好きとおっしゃるのか??
って思って付き合うわ(°▽°)笑

でもはとりは利太がやっぱり忘れられず…
みたいな感じなんだけどね
↑端折りすぎ(2回目)

それに弘光くんのバイト先の女の子「るな」
あれは上手く女目線でイラッとする子書いてるなーと思いました。
あんな子いたら、わたしもはとりと同じ感じになるわ( •ө• )
さすがに本人目の前でバカ女とは言わないけど( ꒪⌓︎꒪)笑

しかも何で弘光くんの事信じてあげないのって…
お前に言われたくねぇ
言われるなら弘光くんにだよ
でも当の弘光くんは、そんな女とはとり両方の気持ちを理解できる人なんだよねぇ…
そんなとこも素敵なんだけど(°▽°)

でもこの一件もあって、さすがに弘光くんがキャパオーバーになって別れることになるんだけども( ̄▽ ̄;)
でもでもその中でもその女をちゃんと牽制してる弘光くんも素敵でした♡
るながただのバカ女ならボッコボコに凹まして顔見れないようにしてやるのにとまで思ってたみたいでしたが(°▽°)笑


何より少しずつ弘光くんがはとりのこと本気になっていっていい意味でバカになってくの見るのが好きでした




って本人も自覚ありだしね
イケメンのこういう所嫌いじゃない
むしろイケメンだからこそ
こういうのがすごく好き



これはセンセイ君主の番外編なんだけど
最初あんなチャラ男だった弘光くんが
「次も本気になれる子とじゃきゃ 〜  」
って言ってんですよ!?

ナニコレ…( ꒪⌓︎꒪)

イケメンでこれはさいこーです
ポイント高ぇーー!!←きも
そして水飲んでる姿ですら
かっけぇーー!!←きも(2回目)

ま、わたしの気持ちはさておき
こういう弘光くん目線の話とか好きなんですよね

お気に入りになった関取ちゃんと付き合って欲しいなーなんて思ったり。
弘光くんが女の子といてこんなに笑うの久しぶりだって思うくらいだから。
そうなったらいいなとわたしは思いました。
だってヒロイン失格の最終巻であんな切ないもん見せられたらそう思っちゃうよ(´༎ຶོρ༎ຶོ`)

センセイ君主も終わっちゃってるし、弘光くんもう見れないのか…
定期的にヒロイン失格とセンセイ君主読み返そう。
絶対飽きないから(°▽°)←どんだけ

それに弘光くんと中島の的確な意見など、読んでるこっちも「確かに!!」って思う部分たくさんあったなーと思います。






センセイ君主を読み返しました♡
ほんっと弘光先生かっこいい
THE☆イケメン
顔面偏差値なんぼだよ?ってくらい

どうやら、わたしは漫画世界では
俺様気質の王道な方が好きなようです←で?
黒縁メガネをかけると尚良し☆
でも漫画世界だから弘光先生がすきだけど、現実世界では虎竹くんがタイプだ!
虎竹くん可愛いタイプだから(°▽°)笑


ストーリー的には先生 × 生徒だから禁断なんだけど、全くいやらしさとかなしで素直にきゅんきゅんです(°▽°)
漫画によっては「は!?」ってなるのが多いんだよねー
でもセンセイ君主は全くなし!
胸きゅんポイントが散りばめられてます。
大人でも楽しめる漫画の1つ☆
ほんっと何回読んでも飽きない
わたしも何回読み返してることか…
だって早速1巻目からぎゃー!なったわ
なので、わたしが好きな弘光先生の顔(表情)を紹介しますね(誰得だよ)

まずは顔というより、セリフかな

ぎゃーー!照

わたしですか!?
びっくらこいたよ、ほんと。
え!?って声でたもん!
綾って名前でよかった٩( ᐛ )وあほ
幸田先生ありがとうございます!!←???



もー落ちる気満々な感じのセリフ&イケメンすぎる顔面
さいこーです



なんだろ
この顔が1番すきだ٩( ᐛ )و
愛しさ全開で見つめてくれてる感じが堪らない!
さまるんの夢の中の先生なんだけど…笑




弘光先生こんな顔で笑うのね
かわいい♡
酔っ払った人って何でかわいいのかな
好きな人だけね


この三段階の顔がもう…
1番上の寝癖もかわいいし( •ө• )
3番目のは?って顔もたまらーん!!←こわ

てか載せてたらキリないね笑
全部かっこいいんだもの…

弘光先生見てたら弘光くんの方も見たくなってきたよ笑
ヒロイン失格も読み直そーಠ_ಠ♡

それでは最後にもう1人すきなキャラ☆


パピコさん♡
弘光先生の次にすきです
パピコさんグッズ欲しいくらい(°▽°)


そして最後になりますが
センセイ君主実写化しますね?

反・対・で・す!!

お願いだから弘光先生壊さないでー!!
竹内涼真くんも確かにイケメンだ!
でも弘光先生じゃないんだよなー
さまるんも違うんだよなー

とりあえず何でもかんでも実写化するのやめよう…??
その漫画の良さはそのままにしておこう…??
アオハライドでがっかりしたからそれ以来実写化嫌なんだよな…
ま、凡人が意見言ったとこでどーにもならないか…

『オレの補佐官』


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


幸い、さちは翌日に退院できた。
倒れた原因はストレスによる疲労、そして…

(妊娠、か…)

これに関して言えば…
思っていたほどのダメージはなかった。

(まぁ、いつかはそんな日がくると思っていたし…)

さち
「ごめんね、歩くん…ずっと付き添ってもらって…」

東雲
「いいよ、オレのことは気にしないで」
「それより関塚さんと連絡とれた?」

さち
「それが、電話してもつながらないんだ」
「話したいこと、いっぱいあるのに」


(やっぱりね)


さちを気の毒に思う一方で、室長への報告を考えている自分がいる。
だって、オレが今ここにいるのは「公安刑事」だからだ。
ここではもう
さち<仕事 割り切ってるね。



東雲
「…そのうち、きっと連絡が来るよ」
「早く驚かせたいね」

さち
「うん…ふふ!」


さちは少しフラつきながら、ゆっくりと立ち上がった。

さち
「りんご食べようかな…歩くんも食べる?」

東雲
「さちが手を切らずに皮を剥けるならね」

さち
「もう…今はちゃんと剥けるんだから」


さちがキッチンに向かったのを確認して、オレはスマホを取り出した。
1時間ほど前、室長に頼み事があってメールをしていたのだ。


(あ、返信がきてる。えっと…)

……『例のものは稲葉に届けさせる。夕方まで待つように』


(彼女に…?)


気まずい思いが胸に広がった。
なにせ一昨日の夕方、彼女との約束をドタキャンしているのだ。


(やば…あれから何もフォローしてないし)


(まずは最初に謝らないと…)
(それから、何か埋め合わせをして…)
埋め合わせしてくれるんだー(((o(*゚▽゚*)o)))


さち
「お待たせ。はい、リンゴ」

東雲
「ん…」

(…待てよ、『埋め合わせ』?)
(埋め合わせってなにをするわけ?別にそんなことしなくったって…)


さち
「歩くん、リンゴ食べないの?」

東雲
「ああ、うん…食べる…」

(ていうか、それ以前に…)
(今日どうやって彼女をこの部屋に招きいれよう…)
(部下として?それとも『女友達』?)
(いや、どれも不自然だし…)

さち
「…歩くん?」

(さちに疑われない理由を考えないと…)
(オレがこの家に呼んでも、納得してもらえそうな理由…)

東雲
「あの…今日さ!」
「さちに紹介したい相手がいるんだけど!」

さち
「紹介?誰?」

東雲
「えっと、その…」
「か……」
「………カノジョ?」


それからの、さちの張り切りっぷりはすごかった。
ついさっきまで顔色が悪かったのが嘘のようだ。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



さち
「ね、どうやって歓迎すればいい?」
「クラッカー?やっぱりクラッカーだよね?」

東雲
「いや、クラッカーはちょっと…」


(まぁ、確かにこれまでに何度も言われてきたけど)
(『カノジョができたら紹介しろ』って)


もちろん、そのたびにスルーしてきた。
遊び相手を紹介するわけにはいかなかったし、オレなりの意地もあったから。


(それなのに、なんでこんな形で…)


そもそも冷静になってみれば、さちに紹介する必要などなかったのだ。
荷物の受け渡しなら、マンションのエントランスでできたわけで。

(はぁぁ…)
(ほんと、ヘタうったな…)


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


結局この日は、予定より30分早く関塚家をあとにした。
これ以上、滞在が長引いたらボロが出そうだったからだ。

(いちおう、普段どおりに振る舞えた自信はあるけど…)

ちらりと隣を見ると、彼女も疲れた顔をしている。

(さちから「カノジョ」向けの質問攻めにあってたし…)
(オレのどこが好きか…なんて聞かれてるし)
(しかも、それに律儀に答えたりして…)


東雲
「……」

(あの答え、どこまで本気だったんだろう)
(…まぁ、その…どっちでもいいんだけど)
え!?
全部本気でしたけど!?
何でそこでまた壁作っちゃうかなー


それより、今は彼女に言わなければいけないことがある。
本当なら真っ先に伝えたかったこと。


東雲
「ごめん」
「土曜日。急にキャンセルして」


「あ、いえ…っ」

彼女は、慌てたように首を振った。



「聞いてますから。さちさんに付き添ってたって」
「それに、その…」
「教官から電話もらったとき、実はすでに寮に戻ってて!」


(え…)



「だって約束の時間より1時間も過ぎてたし!」
「だから、あまり気にしなくていいっていうか…」

無理に浮かべている笑顔が痛々しい。
それに、下手くそすぎる嘘も。

(なんだよ…それ…)
うん…ほんと。
前日ウキウキしてたヒロインちゃん知ってるし…
でもそこで責めないヒロインちゃんだからこそあゆむんも乱されるんだろうな…


心臓を鷲掴みにされたのかと思うぐらい、息ができなかった。
それはこっちもだ(´・_・`)


もっとオレを責めればいい。
もっと詰め寄ればいい。

(それなのに、どうして…)
あゆむんのこと好きだからだよ…



「それより良かったですね。頬の腫れ、だいぶ引いたみたいで」

東雲
「…ああ」


「まだ痛みますか?」

彼女の手がいきなり頬に伸びてくる。
驚いたオレは、とっさにその手を振り払ってしまった。


「!」

東雲
「あ…」
「ご、ごめん」


「いえ、私のほうこそ。急に触ろうとして…」

心臓がものすごく速いリズムを刻んでいる。
思春期のガキでもないのに、どうにもこうにも息苦しい。


「その…湿布、きれいに貼れてますね」

東雲
「ああ…さちに貼ってもらったから」
ここはしんどかったよ…

なんとか当たり障りのない答えを返す。
これが当たり障りないって…
この一件でヒロインちゃん落ち込んだんだよ…
さちに貼ってもらったから触られたくないんだって誤解して…



正直、今は彼女の顔をまともに見られない。

(違う…べつに動揺してるわけじゃ…)
(単に、傷口に触れられそうになったから驚いただけで…)

東雲
「…行こうか」

逃げうように先に歩き出すと、彼女はあとからついてきた。
そのあと駅前で別れるまで、会話はほとんどなかった。
あゆむんがドキドキしてる間にヒロインちゃんは落ち込んでるんだよ??
やっぱさちには勝てないんだって…
すれ違いすぎだよー!!


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


この日を境に、彼女との間に微妙な距離ができはじめた。
理由はいろいろあったけど、一番の原因はたぶんオレだ。
彼女に対して、以前のように振る舞えなくなってしまったから。
普通はここで気付くと思うんだケド…


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚


そうこうしているうちに、彼女は後藤さんと潜入調査に入り…
関塚家を見張るオレとは、完全に別行動になってしまった。

さち
「歩くん」

東雲
「……」

さち
「あ・ゆ・む・くーん」

東雲
「…ああ、なに?」

さち
「コーヒー淹れたよ。どうぞ」

東雲
「ありがとう」

マグカップを受け取ったオレを、さちは伺うようにジッと見る。

さち
「…なんか元気ないね」
「もしかしてケンカした?綾ちゃんと」

東雲
「…っ」
「してないよ」
喧嘩はしてないけどこじらせましたᐠ( ᐝ̱ )ᐟ

さち
「……」

東雲
「ほんとにしてないって」

さち
「だったらいいけど」
「大事にしなきゃダメだよ」
「綾ちゃんは特別な女の子なんだから」

(特別って…)
(別に…ただの補佐官だし…)
まだ認めないのかっ!!

こっそり呟いて、カップに口をつける。
コーヒーには砂糖が入っているはずなのに、今日はなんだか妙にほろ苦い。

さち
「ね、気づいてた?」

東雲
「なにが?」

さち
「歩くんね、綾ちゃんの前だと…」
「ふわっってなってるんだよ」


(えっ?)


さち
「なんて言うかね…力が抜けてるの」
「ちょっとゆるーい感じになってるっていうか…」

東雲
「さちの悪いクセ。それじゃ伝わんないよ」

さち
「えっと…たとえばね」
「今こうして私と2人でいても、歩くん、ちょっと緊張してるの」
「でも、この間綾ちゃんが来たときはね」
「ちょっとした瞬間にふわっって柔らかくなってて…」

東雲
「……」

さち
「それで『ああ、彼女は特別な女のコなんだな』って」
「だから大事にしないとダメだよ。ね?」



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



さちの言ってることは、やっぱりよくわからなかった。
えっ!?って思ったけど、あゆむん恋愛初心者だもんね…
さちしか眼中になかったしね…


(力が抜けてるって…)
(任務中なのに、そんなのあり得ないし)
(そりゃ、他に比べて気さくな相手だとは思うけど…)


ブルル、とポケットの中のスマホが震える。
ディスプレイに表示されているのは颯馬さんの名前だ。

東雲
「おつかれさまです」

颯馬
「歩、今はどちらですか?」

東雲
「監視対象者の家を出たところですが…」

颯馬
「では、最寄り駅で待っていてください。すぐに拾います」

東雲
「なにかあったんですか?」

颯馬
「今晩、例の女スパイが何らかの取引をするようです」
「後藤と綾さんが、その現場をおさえようとしています」

東雲
「それで応援に?」

颯馬
「ええ…歩も気になるでしょう」


(気になる?オレが?)
(そりゃ、あの子1人が現場に出るなら気になるけど…)


東雲
「…いえ、特には」
「後藤さんと組んでいるなら問題ないでしょうし」

かすかな苦みに気づかないふりをして、オレは敢えてそう返す。
それなのに、電話の相手は何故かふっと笑った。
黒い笑みが目に浮かぶ…

東雲
「…なぜ笑うんですか」

颯馬
「いえ…私が『気になるだろう』と言ったのは取引のことでして」

颯馬
「べつに『貴方の補佐官』のことではないのですが」

東雲
「…っ」

颯馬
「それでは最寄りの駅で待ち合わせを」

東雲
「…了解」

通話を切るなり、オレはスマホを投げつけたくなった。
ここはねー
面白かった!!w

(ほんっっっと、腹黒!)
わたしも思った!w
どっちとも取れる言い方したよね!?w
大人の腹黒ww
あゆむんは子供の腹黒ww


さっきの返事は、絶対に誘導されたに決まっている。
じゃなければ、オレがあんなことを言うはずがない。

(ていうか、別におかしくないし!)
(オレがあの子のことを気に掛けたって)
(あの子、オレの補佐官なんだし)
『オレの』…♡

そうだ、彼女はオレの補佐官で教え子だ。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



だからこそ、後藤さんと彼女がヘタをうったと知って…
オレが、助けにきたわけなんだけど。

組織員
「サッサト入レ。スッポン」


「痛…っ」

組織員
「オ前モダ、キノコ」

東雲
「…っ」

オレたちが放り込まれたのは、頑丈そうなコンクリート造りの部屋だ。

(窓はない…ドア以外の出入り口も…)

弱点があるとしたら、あのドアくらいだろう。


(見た目は重そうだけど、強度はそれほど高くない…)
(ちゃんと探りさえすれば、絶対に壊せるポイントだ見つかるはず)


もっとも、それには両腕を縛る縄を外さなければいけない。


(なにか刃物のかわりになりそうなもの…)


目についたのは、錆びたパイプだ。
幸いなことに、一部が割れて刃先のようになっている。


(よし、これを使って…)


突然、彼女が「ぎゃっ」と相変わらず色気のない悲鳴をあげた。
見ると、天井のパイプから勢いよく水が吹き出している。

東雲
「あー水攻めかー」


「水攻めって…」

東雲
「待って。計算するから」

(部屋はそんなに広くない…水の量もかなりある…)
(ああ、でもやっぱりドアの隙間から水が流れてるっぽい…)
(となると、もう少し時間かかって…)

東雲
「…なるほど、20分ってところか」


「それってなにが…」

東雲
「この部屋が水で満杯になる時間」

じわりと焦りが生じる。
なにせ縄は濡れると強度が増すのだ。


(つまり、水位があがるまでにどうにかしないと)
(でも、それまでにこの縄を切れるかどうか…)


ドンッ、とものすごい音がした。
驚いて顔をあげると、彼女がドアに体当たりしていた。


東雲
「なにやってんだよ!やめろって!」


けれども、彼女はやめない。
何度も何度もドアに体当たりし続ける。

(く…っ)

彼女を引き留めているヒマはない。
とにかく今は、両腕を縛る縄を切るのが先決だ。

(ああ、もう…)
(ほんとサイアク…っ)


そうこうしているうちに水位はどんどんあがり、縛っている縄が濡れ始めた。

(あと少しなのに…)
(たぶん、もうちょっとで切れるはずなのに…)

ドンッ!

(あっちはあっちで、まだドアに体当たりしてるし!)


しかも、何か目算があってやっているわけではない。
ただ他にやることがないから、体当たりしているだけなのだ。

(ああ、もうあのバカ…!)


たまりかねたオレが、もう一度彼女に向かって叫んだ。

東雲
「だから無理だって」
「それじゃあ、絶対に開かない!」


「じゃあ、あきらめるんですか!」

東雲
「そうじゃ…」


「このまま…」
「このまま、さちさんに会えなくてもいいんですか!」


(……は?)



「私がなんとかします」
「絶対に、このドア、壊してみせます」
「だから、お願いだから…」
「さちさんのこと、ちゃんとケリつけてください!」

こんな切迫した状況のなかで、彼女は切々と訴えてくる。
オレに新しい恋をしろと。
今度こそ好きな人を捕まえて幸せになれと。
ここで自分と幸せになるって選択肢を出さないとこがヒロインちゃんらしい…(T_T)
切なくなるけどね…


(バカなの…?)
(なんでこの状況下で、そんなくだらないこと…)


それなのに、心が揺さぶられる。
理性に反して、どうしようもなく胸が苦しくなる。

(ああ…くそっ!!)

べつに、こんなことは初めてじゃない。
これまでにも何度か彼女に心を揺さぶられてきた。
でも、その都度、自分に「言い訳」をしてきた。


――『これは恋愛感情じゃない』
――『彼女は補佐官だから』


けど、もう誤魔化せない。
他の言葉で片付けることなんててきやしない。

(そうだ…)
(本当にバカなのはオレのほうだ)

一番のバカは、間違いなくオレだ。
やっと認めた〜(;_;)♡
長かったよ!?

東雲
「ああ、もう黙れ!」
「頼むから集中させて!」
「あと少しで縄が解けるから」

一か八かで、全身を大きく捻る。
鋭い痛みとともに、ようやく身体が自由になる。


東雲
「ああ、もう…」
「腕まで切っちゃったし」
「キミがごちゃごちゃごちゃごちゃうるさいから」


「す、すみま…」

東雲
「もういい、黙って」
はいー!!
受け入れ態勢バッチリです★


自由になった手で、真っ先に彼女を捕まえる。
本当はこんなことをしている場合じゃない。
いいじゃない!
むしろこっちのが先だよー(`・∀・´)??
こっちはシナ読むたびに切なくなったんだからね!?


だけど、オレにだって言いたいことはあるのだ。

東雲
「キミ、ほんと鈍すぎ」
いやいや!分からんって(;_;)
あゆむんだって強情だったじゃんか…
言葉にも出さなかったじゃんか…



「へ…」

東雲
「新しい恋なんてとっくに始まってる」
その言葉ずっと聞きたかったよ…(//∇//)


逃がさないように両頬を挟みこむと、そのまま深く口づけた。
ぎゃーーーー((o(*゚▽゚*)o))
初めてこのあゆむん√プレイした時、心臓バックバクだったからね!?



これまで目を逸らしてきた想いを、ただ彼女に伝えるように。


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 


その後、オレたちはドアをぶち破って、なんとか水攻めから解放された。
倉庫にいた連中は石神さんが、笹野川議員の元愛人は颯馬さんが逮捕。
テロ計画も、無事に阻止することができた。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



そして…

穏やかな日差しが降り注ぐなか。
オレは教官室の窓から、何気ないふりをして外を眺めている。
簡単に想像できてしまう…w


何故かって?


お遣いに出かけた 「うちの彼女」 が、そろそろ通りかかるはずだからだ。
『ウラグチ』でもなく…
『あの子』でもなく…
『補佐官』でもなく…
『うちの彼女』…(//∇//)


(ていうか、ほんと、いつ気づくんだろ)
(よく頼まれるものは、通販でまとめ買いすればラクできるって)
もし気付いても言いくるめてやめさせるでしょ\( ˙▿︎˙ )/w

もちろん、そんなこと教えてやらないけど。

(それにそんなことしたら、せっかくの楽しみが…)


東雲
「あ…」

やっと彼女が戻って来た。
どうやら他にも買い物があったらしく、コンビニの袋を手に提げている。


(あれ…駅の向こうのコンビニの…)
(ほんと、要領悪すぎ…)


黒澤
「あれあれ~、どうしたんですか?」
「歩さん、顔が緩んでますよ~?」


また面倒なヤツがやってきた。


黒澤
「あっ、もしかして歩さん、今…」

東雲
「少し黙れ、透」


ギュウッ!


黒澤
「ちょ…だからそこはダメですって…」
「ちょ…ああ…っ、歩さ…」

石神
「静かにしないか、黒澤」

後藤「まったくだ」

黒澤
「だ、だって歩さんがぁ…」


透の抗議を無視して、オレは再び外に目をむける。
彼女はとっくに前を通り過ぎていて、もう背中しか見ることができない。

(ま、いいか)
(どうせ、あと5分もすればここに来るんだし)
か、かわいい…(//∇//)


ふと 「運命の人」 より上は何だろうと考える。


( 「運命の人」 より上… 『宿命』 …?)
(じゃあ、あの子は 『宿命の人』 …とか?)


けれども、どうもピンとこない。
彼女はそんなガラじゃないし…
何より 「運命」 とか 「宿命」 なんてもの、体当たりで壊してしまいそうだ。


(…ま、いっか)

そんな安っぽいものは、もうどうだっていい。
今のオレは、彼女のことが、ただただ愛おしくてしょうがないのだから。


はいー!
あゆむんのカレ目線レポ終了です(°▽°)
ほんとね〜…
ガキ丸出しなんだけど、このヒロインちゃんだからこそいいんだろうな。
こんな破天荒なヒロインちゃんだからこそ、あゆむんの壁を壊せたと思うし!!
何度切なくなったかわかんないケド…m(._.)m
意地悪するのも、感情的になるのもヒロインちゃんだけだったもんねーヽ(´▽`)/





『この胸の痛み、理解不能』


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 


 翌日の夕方。
あくびをしつつも幾度となく時計を確認していると…


コンコン!


(…やっと来た)


東雲
「はい」


「失礼します」
「教官、頼まれてた缶コーヒーを持ってきました」

東雲
「ああ…うん、ありがと…」
「ふわぁ…」

「…寝不足ですか?」

東雲
「誰かさんのせいでね」


いつもどおり嫌みを織り混ぜると、彼女はグッと言葉に詰まる。

「その…昨日はすみませんでした」

東雲
「本当だよ。キミ、重たいし」
「オレのシャツによだれつけるし」
「てことで迷惑料」
「これ、全部PDF化しておいて」

さらに室長へのお遣いを託して、オレは教官室をあとにした。

東雲
「……」
「…べつに、普通だし」

(意識なんかしてないし)
そんな教えてくれなくていいからー٩( 'ω' )و ♡

(単に泣かせたことが気まずいだけで)


そう思っていたはずなのに。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 



(今日は午後から雨だっけ)
(そのわりに、曇空ってわけでも…)

東雲
「あ…」

目に止まったのは、小走りで移動中の「彼女」だ。
「彼女」だってー!!
くくられてるー!
明らか変わってる証拠だわね!


(あの荷物は…武道場?)
(そう言えば、次は剣道だっけ)
(なんか無駄に張り切ってるっぽいけど…)

東雲
「!?」

(転んだ…しかも顔面から)
(ほんと、鈍すぎ…)
(あれじゃ、どこか擦りむいて…)

東雲
「……」


(…オレには関係ないけど)
ふふふ(°▽°)


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 



ある日、廊下を歩いていると…

千葉
「稲葉、今日の夜さ」
「さっき習ったところの復習、一緒にしない?」

「そうだね。じゃあ、鳴子にも声をかけておくね」

千葉
「えっ…」
「ああ、う、うん…そうだね…」


(千葉って、絶対彼女に気があるような)
(寮でもよく一緒にいるし、なにかとフォローしてるし)
(たしかひったくり事件の調査も手伝って…)


東雲
「……」
ねえ、気になる?w
わかりやすくなったなー(´ω`)

(だから、オレには関係ないって…)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 



また別の日には…

東雲
「…ん?」


(今日は石神さんと話してる…)
(ま、どうせ講義内容の確認だろうけど)
(バカは何度も確認しないと覚えられないし)
(でも、たしかこの間『石神さんのことが気になってる』って…)


東雲
「……」
「だーかーらー…っ!」


黒澤
「どうかしました?」

東雲
「!?」


黒澤
「なんだか不機嫌そうですけど」

東雲
「……うるさい、透。生意気」

黒澤
「ちょ…なんで生意気って…」
「あ…ダメです、そこ触ったら…っ」
「あ…っ、ああ…っ」


と、まぁ、あの子が図々しくもオレの視界に入り込んでくるから。
それで気づいてしまったのだ。
彼女がオレのことを「観察」してることに。
好きなのは認めないの??
視界に入りこんできてるんじゃなくって、あゆむんが見てるんだよ(*´꒳`*)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 



「……」

東雲
「……」

「…………」


(ほら、また見てる)


東雲
「なに?」

「えっ?」

東雲
「こっちを見てる理由」

「み、見てるなんてそんな…」


(そのわりにうろたえてるし)
(ほんと、バカ)


それに、あんな目で見られて気づかないはずがない。


(あんなに熱心に…)
(あんな探るような目を向けられたら、誰だって…)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 



その理由は、数日ほどでわかった。
どうやら彼女は、オレを「観察」ではなく「監視」していたらしい。


(Bホテルの監視カメラの件がバレた…とか?)
(だとしたら命令したのは、颯馬さんか兵吾さんあたり…)


なんだか胸くそが悪くなった。
もちろん、同僚に疑われていることについてもだけど…


(なんであの子、オレ以外の命令に従ってんの?)
(オレのじゃなかったわけ?)
オレの補佐官』じゃなくて『オレの
いい響き〜♡


まぁ、いい。
それならこっちも探らせてもらうまでだ。


(ま、ただ探るだけなのも癪だから…)
(『彼女』を利用するってことで)


幸い、あの子のことはオレが一番よく知っている。
クセも特技も、よくやらかすミスも、それこそ全部。


(まずは、わざと隙を作って彼女に探らせるか)
(それから彼女が食いつきそうな『ヒント』を仕込んで…)
(それから…)


あとから思えば、ずいぶんとガキっぽい発想だ。
身内に対して「やられたからやり返す」なんて。
けれども、このときのオレはそれに気づかなかった。
それくらい腹を立てていたのだ。


結果、オレの報復は辛くも成功した。
彼女を傷つけ、室長から10倍返しをくらう形で。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 



難波
「…なるほどな」
「つまりお前は、自分が疑われたからやり返そうとした…」
「で、そのために稲葉を利用した」

東雲
「……」

難波
「ガキのケンカか」


揶喩するような言い方に、オレは視線をあげて抗議する。
言い返さなかったのは、顔が腫れすぎて口が開かなかったからだ。

難波
「おーおー、生意気な顔しやがって」
先生に怒られてるお子ちゃま(°▽°)

難波
「普段はスカしたフリしてるくせに」


東雲
「……」

難波
「あのな、歩」
「今回の件の何が気にくわないかって言うとな」
「お前が、利用する人間を間違えたことなわけよ」
うんうん、そうだね。
でもそんなガキっぽい仕返ししてやろうと思うくらい、ヒロインちゃんが他の人に仕事として頼まれてたことにムカついたわけだよね?

東雲
「……」

難波
「お前にとって、稲葉はなんだ?」


(なにって…)


オレは筆談用のメモ帳に、殴り書きをする。


難波
「…なるほど『補佐官』か」
「それも『オレの』…ね」
!!初めて言葉に表した(((o(*゚▽゚*)o)))


東雲
「……」

難波
「だったらもう少し大事にするもんじゃないの?」
「人間は『モノ』以上にすり減るし、簡単に壊れる…」
「壊してからだと取りかえしがつかないだろうが」
ほんとだよ…
オレのだって言うなら大事にしなきゃだし、自分の気持ちを言葉に出すって事も大事にしなきゃだよ…

{A18E0426-265A-4F17-AF48-A25AECBDF9DC}
東雲
「……」

ごめん。
関係ないんだけど、わたしこのあゆむん…
かなり好き…っ!!
かっこよすぎて最初は心臓ばっくばくだったよ!




゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 



たしかに、冷静になってみればひどいことをしたと思う。
なにせ彼女が傷つくことを見越して、ああいう手段をとったのだ。


(さちを利用するときは、ギリギリまで躊躇ったのに…)


ただ、あのとき物凄く腹が立ったのは事実だ。
彼女が、オレの味方じゃないことに。
ちゃんと信じてたけどね…
でもさち絡みだったからもしかしてって思ったけケド…
それでもあゆむんの疑いを晴らすためにやったんだよ(´・ω・`)
結果マイナスになってしまったけども…


(だって、あの子はオレのだし…)
てかまた「あの子」呼びに戻ってるー!
照れ隠しか??

東雲
……」


(いや、オレの『補佐官』だし)



誰に聞かれたわけでもないのに訂正する。
ただ、どちらにせよ、オレのやったことが許されるわけじゃない。

(とりあえず謝らないと)
(次に、顔あわせたときに…)




゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 



それなのに…

「昨日はすみませんでした!」
「室長から事情を聞きました」
「教官がいろいろやってたのは、あくまで捜査のためだったって」
「それなのに私、『私情かも』って疑ったりして…」
「本当に、すみませんでした」

(…理解不能)
(なんでキミが謝って…)


それどころか、彼女はオレが捨てたものまで持ってきた。
1つは、今回彼女を引っかけるために使った懐かしい写真。
そしてもう1つは…

(これ…オレが捨てたステンドグラスの欠片…)


こっちは、今回の件とは関係なく捨てたものだ。
それもかなり前、窓から放り投げる形で。

東雲
「これ…探してきたの?」

「はい」

東雲
「いらない。捨てて」


「ダメです。捨てるならちゃんとケリをつけてからにしてください」

彼女の目が、まっすぐオレをとらえる。

「本当はまだ好きなんですよね、さちさんのこと」

東雲
「……」

「好き…なんですよね?」


(…やっぱり理解不能)


こんなことをして、いったい何の得があるのか。
思わずそう訊ねると、彼女は戸惑ったような顔付きになった。

「自分でもわかんないです」
「バカなことしてるなって思わないでもないし」

東雲
「……」


「でも、強いて言うなら…」
「片思い同士だから…とか?」


(片思い同士…?)


「なんていうか、諦められないですよね」
「失恋確定って分かってても」
「どうしても気になっちゃうっていうか…」

東雲
「……」

「それって教官も同じじゃないのかな…なんて」
失恋確定だって思ってる相手にこんな事言えるヒロインちゃん…
もしこれが「わたしがいるじゃないですか…!」的なちょっと自己中な感じで来られてたら、あゆむんもこれまた違ったんじゃないか??


(同じ…なのか?)
(オレをこの子が?)


たしかに「片思いをしている」とう意味では同じかもしれない。
けれどもオレは、最後までさちに想いを伝えられなかった。


(フラれるって分かってるのに…)
(そんなカッコ悪いこと、できるわけないって…)
恋は理屈じゃないんだよー(((o(*゚▽゚*)o)))


それなのに、彼女は何度もオレにぶつかってくる。
オレがさちを好きだって知っているはずなのに。


(今だって、そんな切なそうな顔して…)


気が付いたら、するりと言葉が滑り落ちていた。


東雲
「そうでもないんじゃない」
やっと本音を言った!!


だって、オレは気にし始めている。
この「稲葉綾」という女性のことを。
その気持ちが恋愛に変わるのかは、まだよくわからないけれど。
あゆむんのこの壁は何なのか??
ずっとさちのこと好きだったから、今更誰も好きになれないって思ってるとか??



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 



そうした経緯もあって、彼女と食事に行く約束をした。
その前日のこと。

「じゃあ、お先に失礼します」

東雲
「ん、おつかれ」

「……」

東雲
「…なに?帰らないの?」

「帰ります…けど」
「その、明日の5時の約束…」

まだ前日だというのに、彼女はすでにソワソワしている。
これじゃあ、遠足前の子供と変わらない。


(ほんと、わかりやすすぎ)


だからこそ、意地悪したくなるわけなんだけど。


東雲
「ああ…なんだっけ、『明日』って」

「えっ…」

東雲
「明日はたしか…」
「10時に小包を受け取って」
「12時に透との約束があって」
5時からは…」

「デートです!私とデートです!」

東雲
「ああ、食事券消費イベント…」

「大丈夫です、絶対にデートにしてみせますから!」
「それじゃ、失礼します」


勢いよく宣言して、彼女は教官室を出ていく。


東雲「絶対…ね」

(ひとまずお手並み拝見ってとこ?)
(ずいぶん張り切ってるみたいだし…)

ブルル、とスマホが震えた。
見ると、兵吾さんの名前が表示されている。

(また調べものかな)
(ほんと、人使い荒すぎ…)

東雲
「はい…」

加賀
「今日発売の『週刊レッド』を見たか」

東雲
「いえ、見てないですけど。なにか…」

加賀
「今すぐ確認しろ」

ただ事ではないその様子に、オレは慌ててブラウザを立ち上げる。
検索結果のトップをクリックすると、今週号の表紙が出てきた。


(…やられた!)


『笹野川議員ご乱交・美女としっぽり熱い夜』……
これで、笹野川議員の周辺は一気に騒がしくなる。
SNSでの騒動なんかとは比べものにならないくらいに。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 



翌日。
緊急ミーティングが行われ、オレはさちと連絡をとることになった。
今回掲載された記事の中に「秘書」のことが書いてあったためだ。


(できれば電話で話すだけじゃなく、さちの家に行きたい)
(それで、関塚さんと少しでも話ができれば…)


焦る気持ちを抑えながら、さちの番号に電話をかける。
ところが、スピーカーから聞こえてきたのは…


謎の女性
「関塚の携帯です」


(えっ、さちじゃない?)


謎の女性
「もしもし?どちら様ですか?」

東雲
「すみません、さちさんの友人の東雲です」
「今、さちさんは…」

謎の女性
「それが…実は今、病院で…」


室長に事情を説明して、すぐに病院へと駆けつける。
電話に出た女性はさちの友人で、緊急搬送者用の受付でオレを待っていた。


女友達
「すみません、わざわざ来ていただいて」

東雲
「いえ、それよりさちが倒れたって…」

女友達
「そうなんです。ただの貧血にしては様子がおかしくて」
「それで、念のために救急車を呼んだんですけど…」

東雲
「今、彼女は?」

女友達
「奥のベッドで寝ています」
「できればダンナさんと連絡を取りたいんですが、今は海外にいるみたいで」


(海外?関塚さんが?)
(どうして、こんな週刊誌に記事が出るタイミングで…)


看護師
「関塚さんの付き添いの方はいらっしゃいますか」

女友達
「はい。身内ではなく友人ですが…」

看護師
「ご家族の方は?」

女友達「それが、海外にいて連絡が取れないんです」
「実家には…」

東雲
「これからオレが連絡をとります」

東雲
「ただ遠方にいるので駆けつけるのは難しいかと」

看護師
「そうですか…」
「できれば入院の手続きをお願いしたかったのですが」


ひとまず簡単な状況説明を受けて、さちの実家に連絡を入れる。
さらに入院に必要なものを揃え、手続き代行に奔し…


Trrrrr…Trrrrr…

「おつかれさまです!今…」

東雲
「ごめん。今日行けなくなった」
「ひとまずリスケで」
「それじゃ」

「えっ、もしもし?」


通話を切るなり、すぐそばのソファに座り込む。
後悔、申し訳なさ、昨夜からの騒動による疲労…
でも、それ以上に打ちのめされたのは、さっきの電話だ。


(駅にアナウンスが聞こえてた…)
(約束した時間より1時間も過ぎてるのに)
やっぱり気付いてたんだ…


きっと、今の今まで、彼女はオレを待っていたのだ。
1時間…いや、下手すればもっと長い間ずっと…


(サイアク…)


昨日の、別れ際の彼女が頭をよぎった。
あの屈託のない笑顔を思い出すたび、胸が痛まずにはいられなかった。




『ごめん、からかいすぎた』


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



学生時代のこと。
女友だちのなかに、本当に気の合う子が1人だけいた。
あるとき、その子が···


ーー「あのさ、東雲」

ーー「なに?」

ーー「私、東雲のこと、好きになったかもしれない」

そのとき、とっさに出た言葉を今でもはっきり覚えている。

ーー「え、面倒くさ···」
裏を返せば意識してるから、面倒なんだよね!?


黒澤
「ええっ、そんな『面倒くさい』って!」
「歩さんの鬼ーっ!意地悪ーっ!」
「透だったら泣いちゃう!」

東雲
「いや、透に泣かれても···」
「でも、仕方なくない?」
「恋愛対象じゃない子に好かれても困るだけだし」


しかも今、再び似たような状況に陥っている。
その相手というのが···



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚




「おつかれさまです」
「今日の資料、用意できました」

東雲
「あっそう」


「······」

東雲
「······」


「······」

東雲
「···戻っていいよ」
「用意できてるんでしょ」


「あ、はい!では失礼します!」


重たげなドアが音を立てて閉まる。
とたんに、ふっと力が抜けたのが自分でも分かった。


東雲
「···ったく」
想定外の告白をされてから数週間。
少しずつ、お互いの空気感が変わり始めている。
それも、微妙な方向に。


(こっちはそんなつもりはないのに)
(ほんと、面倒くさ···)
ほんとにそうなのかなーᐠ( ᐝ̱ )ᐟ
無意識のうちに気に入ってるから面倒なんだよね!?(2回目)



そもそも、彼女はオレのどこを好きになったんだろう。
好かれるようなことをした覚えはない。
強いて言うなら、勉強をみてあげているくらいだ。

(あとは、パシリとかパシリとか、パシリとか···)

東雲
「······」


(···もしかしてあの子、ドM?)
(だったら、兵吾さんと相性がいいんじゃ···)


プルルッと内線電話が鳴った。

東雲
「はい、東雲です」

後藤
『後藤だ。今、A署の刑事部から電話が入っているが···』


(A署···)
(って、確かこの間のひったくり事件の···)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



2時間後、例の担当刑事がオレのもとを訪ねてきた。
しかも、思いがけない情報を携えて。


東雲
「否認している、って···ひったくりそのものをですか?」

刑事
「いや、そこはさすがに認めてるんだよね」
「ただ、22件目の事件だけ『違う』って言い張っててさ」


(22件目···)
(それって、潜入捜査訓練中に遭遇した、あの···)


東雲
「···それで?」
「犯人にアリバイでもありましたか?」

刑事
「ん?」

東雲
「じゃないと、ここまで確認しに来ないでしょう?」

刑事
「ま、そういうことだな」
「ただ、アリバイを証明している相手がちょっと面倒でね」
「なにせ国会議員様だから」


(え···)


そのとき、タイミングよく携帯のバイブが震えた。
刑事が「失礼」と手を挙げて、いったん席を離れる。
その隙に、オレはさり気なく彼の手帳を確認した。


(Aホテル勤務、勤務表確認、笹野川議員···)


東雲
「!」

(証人って笹野川かよ!)


冗談じゃない。
今、ここで「警察関係者」に笹野川の周辺をウロウロされては困る。


(せっかくここまで愛人を泳がせてきたのに)
(このせいで警戒されて、逃げられでもしたら···)


刑事
「ああ、すみません」
「えっと···どこまで話したかな」

東雲
「犯人の証人のことです」

刑事
「ああ、そうそう、その証人ってのが国会議員の笹野川でね」
「連絡してきたのは議員秘書なんだけど···」
「本人にも直接確認しに行くか、ちょっと検討中で」


ようやく話が見えてきた。
オレの証言次第で、その「検討中」の結果が決まるというわけだ。


(たぶん、お互いの利害は一致している)


オレは、議員と警察関係者の接触を防ぎたい。
そしてこの刑事は···面倒なことはしたくない。


(そういうことなら···)


東雲
「すみません。オレの見間違いだったかも」

刑事
「···本当に?」

東雲
「はい。絶対にそうだって断言できるほどちゃんと見てないですし」
「そもそも議員自らそう仰ってるなら、それが一番有力な証言でしょう?」

刑事
「···まぁ、そうなるよな」


案の定、刑事の顔にホッとしたような色が浮かんだ。

東雲
「すみません。曖昧な証言をしてしまって」

刑事
「ああ、いや···」
「じゃあ、あとは、キミの補佐官に確認を取るだけだな」
「では失礼」

東雲
「······」

ひとまず、議員から刑事を遠ざけるように手は打った。
あとは、あの刑事がSNSでの騒動があったことに気付くかどうかだ。
気付いた場合、本当の滞在先だったBホテルに辿り着く可能性がある。
となると、揺るぎない証拠になるのが···


(監視カメラの映像···とか?)
この段階でもう消してたんだねー

東雲
「······」

本当はそこまで手を打つ必要はないのかもしれない。
けれども、もし騒動が再燃して警察関係者やマスコミが動き出したら?


(この点は要検討···と)


さらにもう1つ、大きな懸念点がある。
単純すぎるほど単純な、うちの補佐官のことだ。


(絶対、証言を曲げないだろうな、あの子)


だからと言って、こちらの事情を伝える訳にはいかない。
まぁ、伝えたところで納得するかどうかも謎だけど。

(ひとまず、なにか言ってきたら適当にあしらって誤魔化すか)
(例えば、ちょっとからかうとかして···)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



ところが、思っていた以上に彼女はしつこかった。


「教官!どういうことですか!」

東雲
「なに、いきなり···」


「ひったくり事件のことです!」
「あの日、教官も犯人を見てますよね?」
「それなのに、どうして今頃『見間違いかも』なんて言い出したんですか?」


「誤魔化されませんよ、教官!」
「ひったくり犯のこと、今日こそちゃんと説明してください」

東雲
「ちっ」


「舌打ち!?今、舌打ちしましたよね!?」



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



おまけに···


「だったら例のひったくり事件のこと、教えてください!」
「教官が、証言を変えた理由を」

東雲
「···キミ、本当にしつこいね」


「しつこさ上等です!」
「これでも『長野のスッポン』って呼ばれてましたから」


このスッポン並みのしつこさに負けて、オレは1つだけ約束をした。
「24時間以内にオレをその気にさせたら全て話す」と。


(ま、そんなこと、できっこないけど)
(絶対、キミ相手にその気になんかならないし)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



そして、オレの思惑通り…
10時間近く一緒にいても、彼女の試みはかすりはしなかった。


(ま、努力は認めるけどね)
(それに、なんだかんだと楽しませてもらったし)
(特にランジェリーショップに行ったときなんて···)
どんどん侵食…\( ˙▿︎˙ )/♡


思い出し笑いを堪えるオレの隣で、かのじょは眉間にしわを寄せている。
迷走気味なわりに、まだまだ諦めるつもりはないらしい。


(ほんと、しつこすぎ···)


問題はこのあとどうするかだ。
今日の予定はほぼ終わって、あとは自宅に帰るだけ。


(でも、部屋にまで上げると面倒···)




「······」

(···なことにはならないか)
確かにねー
普通は自分のこと好きな人あげれば期待されちゃうもんね。



今、彼女の頭の中は、自分のミッションのことでいっぱいだ。
これなら部屋に上げたところで、面倒ごとが起きるとは思えない。


(だったら、いっか)
(退屈しのぎにもなりそうだし)


東雲
「さて···と。あと4時間で今日がおわるわけだけど」
「まだついてくる?」


答えは分かっていた。
なにせ彼女は「長野のスッポン」なのだ。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



ラックからスリッパを取り出すと「どうぞ」と目の前に出す。
思えば、女性を部屋に上げるのはかなり久しぶりだ。


(確か前回は、泥酔した子を介抱するためやむを得ず···だっけ)


幸い、今日の「女の子」は酔っ払ってはいない。
かわりに、神妙な顔つきで自分の胸元を覗き込んだりしてるけど。


東雲
「いちおう断っておくけど」
「キミのハニートラップには99,9%引っかからない自信があるから」


「な···っ」

東雲
「ロクな下着つけてなさそうな子に誘われてもねー」


時間は刻々と過ぎていき、彼女は明らかに焦り始めている。
もちろん、このままタイムアップでも構わないけど···


(もう少し楽しませてもらわないとね)
(あと3時間42分もあるんだし)
この時点でもう、あゆむんは一緒にいれば楽しいって思ってる。
でも何で楽しいのかは気付いてない。



ひとまずヒントを与えてみる。
感情を揺さぶるための手段として「弱点を利用すれば?」と。
それなのに、なぜか彼女は実行に移さない。


(まさか、オレの弱点に気付いてないとか?)
(それとも『そんな卑怯なことはできません!』って?)
ちゃんと分かってるんだ…って思う反面、ヒロインちゃんはあゆむんのこと傷付けたくなかったんだよ…
わざわざ好きな人のこと傷つけたいわけないじゃない…


これくらい、オレたちの仕事では朝飯前のはずだ。
それなのに···


(ほんと、真っ当すぎ)
(でも、それってどうなの?公安刑事のタマゴとして)
そりゃ公安だけど…
1人の年頃の女の子だよ…

オレのなかに、意地の悪い気持ちが芽生える。


(ま、いいか。これくらいなら)


ちょっとしたお手本のつもりで、オレは彼女の顔を覗き込んだ。

東雲
「じゃあ、オレから質問」
「キミってさ、オレのことどう思ってんの?」


「···?」

東雲
「オレのこと、好きなの?」


とたんに、彼女の目がまん丸になった。



「な···す、好きとか···」

東雲
「違うの?」


「すすす好きです!」

東雲
「······」


「好きです、大好きです!」

東雲
「あっそう」


(まぁ知ってるし、それくらい)
あゆむんが思うほど簡単な気持ちじゃないんだよー
簡単な気持ちだったらさちのこと出してもう情報手に入れてる…


すると、今度は焦ったように言葉を変えてくる。



「や···やっぱり嫌いです!」

東雲
「······」


「嫌い···大嫌い···」

東雲
「ふーん···」


(なにそれ、揺さぶりでもかけてるつもり?)


でも、その程度で動揺するはずがない。
せめて、もっとインパクトのあることをしてくれないと。

東雲
「じゃあ、こんなことしたら引っぱたく?」


彼女にのしかかるようにして、ブラウスのボタンに指をかける。
もちろん、それ以上はどうこうするつもりはない。


「や···っ」

東雲
「ほんとに?」
「本当にイヤ?」

ぐっ、と彼女が息を呑んだのが分かる。
けれども次の瞬間、幼い子供みたいに顔が歪んで···

(あ、マズい···)
…もう!!!
あゆむんはからかってるだけだけど、あゆむんはさち以外どうでもいいってのちゃんと分かってるからこそ悲しくなったのに!!
本編で見たときこっちも泣きそうになったんだよ(;_;)




「す···すみませ···っ」


泣かせた。
泣かせてしまった。
さすがに調子に乗りすぎた。
ここまでするつもりじゃなかったのに。
この泣かせた。から泣かせてしまった。
に変わったところ、あゆむんの心情が出てるよね。


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東雲
「ごめん、からかいすぎた」


「······」

東雲
「ごめん···」


「知ってます···」

東雲
「······」


「こんなの冗談だって、知って···」


それでも、彼女は泣きじゃくる。
なにか胸の中に溜まっていたものを、一気に吐き出すみたいに。


(ああ、ちょっと···)
(これは···)
この泣いてる姿を見てどう思ったのさ??

東雲
「うん、悪かった···」


「······」

東雲
「悪かった······」


改めて実感した。
この子は、本当にオレのことが好きなのだ。
あやすように頭を撫でていると、彼女の身体が重たくなった。
驚いて様子をうかがうと、かすかな寝息が聞こえてくる。


(···子どもかよ)
でもそうさせたのはあゆむんだからね


いい歳した大人が、泣き疲れて眠るなんて聞いたことがない。

(とりあえずベッドに運ぶか···)


改めて抱え直すと、頬に残ったあとが目に入った。
幾重にも伸びたそれを見て、柄にもなく胸が痛んだ。

東雲
「バカみたい」



ふと脳裏を過ったのは、先日透と交わした会話だ。
学生時代、女友達に告白された話をした時のこと···


黒澤
「でも、結局歩さんは、その女友達が大事だったんですよね」
そうそう!!

東雲
「は?」

黒澤
「だって、歩さんって基本的に愛想がいいから」
「気のない相手に告白されたら、適当に言いくるめて遠ざけるでしょ」
「それか、サクッとつまみ食いしてオシマイとか」

東雲
「つまみ食いって···」
認めたくはないけど…っ!!
つまみ食いは事実だよね??w

黒澤
「でも、その女友達にはどっちもできなくて···」
「だから『面倒くさい』んですよねー?」

東雲
「······」


透の指摘は間違っていない。
確かにオレは、あの女友達が大事だった。
そして、今オレの腕の中にいる彼女のことも。

(そうだ、気に入ってるんだ···この子のことも)
(遠ざけることも、遊び相手にすることもできないくらいに)
やっと分かってくれたー(´・_・`)♡
でも何で気に入ってるのかはわかってないんだよね?


思えば不思議な子だ。
体当たりでぶつかってきて、確実にオレの中に足跡を残して···


(まるで、ビックリ箱みたいな子···)


東雲
「好きにならなければ良かったのに」


(キミのことを、誰よりも一番好きになれたらラクなのに)


頬に残った涙のあとに、そっと唇を近づけてみる。
当たり前だけど、やっぱりしょっぱい味がした。




 

『このイライラの理由を教えて』

 

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

 

 

 

うちの補佐官に勉強を教え始めた数週間後。
訓練生にとって初めての全教科考査が行われた。
おかげでオレたち教官は採点作業に大忙しだ。


後藤
「……」

東雲
「どうしたんですか、ヘンな顔して」

後藤
「いや、上位5番はほぼ予想通りだったんだが…」
「思いがけない人物が10番以内に入ってな」

颯馬
「もしかして首席入校した彼女ですか?」

後藤
「えっ」
「周さん、どうしてそれを…」

颯馬
「私の担当教科でも同じ結果だったからですよ」
「まさかの8番です」

後藤
「俺の担当教科では9番でした」
「正直なところ、20番台だと思っていたんですが…」



(ふーん…)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
 

 

 

その翌日。

東雲
「おつかれさまです」

石神
「ああ、交代の時間か」
「鍵はそこにかけてある。引き続き頼む」

東雲
「了解です」

石神
「ところで考査の採点は終わったか?」

東雲
「いえ、まだ途中ですが…」

石神
「…そうか」

東雲
「どうかしましたか?」

石神
「いや…少々予想外の結果が出たんだが···」
「…まぁ、いい。では引き続き頼む」

東雲
「了解です」


(ふーん…)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

ここはねー

面白かったから途中まで画像付きでどうぞ\( ˙▿︎˙ )/w

さらにその翌日。


加賀
「おい、歩」



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東雲
「ああ、おつかれさ…」


ドンッ!

{0F1039A9-AB23-4598-9F6C-05DE9DD61C47}

東雲
「あの…オレに壁ドンされても…」


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加賀
「あのクズになにをした?」

東雲
「えっ」

加賀
「お前のとこのクズだ」
「射撃の成績を10番以上あげていた」
「大方、お前が調教したんだろうが」

東雲
「やだなぁ、せめて『しつけ』って言ってくださいよ」


と、まぁ、そんなわけで。

 

 


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



東雲
「総合順位12番…ね」


正直10番以内に入って欲しかったけど、スタートを思えば悪くはない。


(ま、次回は余裕で10番以内に入れるだろうし)
(ただ、今後のテキストについては要検討ってところだけど)


そんなことを考えながら、警視庁の捜査DBにアクセスする。
彼女に「ご褒美」と言う名の「特別講義」をするためだ。


(ああ、これこれ…)


講義の教材は、例の「連続ひったくり事件」だ。
捜査資料をもとに考察を重ねると、面白い可能性が浮かび上がってくる。


(これなら次の犯行日時まで予測できそう)
(せっかくだし、彼女にも解説するか)


思えば、これは明らかにオレのミスだった。
犯行予測を聞かされたあの子が、それで満足するはずがなかったのだ。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 





「本当に…」
「本当の本当に、教官はなにもしないつもりなんですか?」


オレをなじった彼女は、最後は自ら飛び出して行ってしまった。
まったく、どこの刑事ドラマだ…って話だ。


(ほんと、バカ…)
(あくまでこれは『仮説』なのに)
(…まぁ、現実性はかなり高いけど)


東雲
「……」
「…ああ、もう!」


(彼女のためじゃないし)
(オレの仮説が正しいか、確かめるためだし!)
とか言ってほっとけなかったんだよね!

その結果、彼女は無傷でひったくり犯を捕まえることができた。
もっとも所轄の刑事には、心を折られたみたいだったけど。


東雲
「あーくだらない」
「バカとはなしたせいで時間を無駄にしちゃった」


「すみま…」
「…っ」

声を詰まらせた彼女は、必死に瞬きをしている。
どうやら泣くのを堪えているらしい。


(ほんと、バカ…)


こうなることなど分かりきっていた。
なにせ刑事部の案件に、公安が手を出したのだ。


(そりゃ、怒るでしょ)
(あっちもプライドがあるんだし)


それでも、彼女はやりきれないのだろう。
自分が正しいと信じて行った結果がコレなのだから。
ずずっ、と鼻水をすする音がする。
それでも彼女は、必死に歯を食いしばっている。


(…プライドがあるのはこっちも同じか)


東雲
「…なんか用事思い出しちゃった」
「キミは疲れてるでしょ」
「さっさと帰ってゆっくり休めば」
「じゃあ、また明日」
あゆむんの精いっぱいの優しさ…

返事を待たずに、さっさとその場を去る。
たぶん彼女は、追いかけてはこないはずだ。


繁華街をふらつきながら、彼女のことを考える。


(一度、ちゃんと伝えた方がいいのかもしれない)
(『キミは公安に向いていない』って)


いや、正しくはオレの気が進まないのだ。
ああいう真っ当な子が、公安部に来ることが。


(たぶん、あの子は刑事部の方が向いている)
(優秀かどうかはともかく、被害者に寄り添える刑事になれる…)


ふと、スマホが鳴っていることに気が付いた。
この着信メロディーはさちからの電話だ。


東雲
「はい…」

さち
『歩くん、あのね。今日実家から···』

弾むような声を聞きながら、腕時計を見る。
いつものように時刻を頭に叩き込もうとして、ふと心が揺れた。


東雲
「ごめん…今、出先で…」

さち
『そうなの?じゃあ、また連絡するね』

東雲
「……」

さち
『…歩くん?』

東雲
「……ごめん」
これは何に対してのごめんだったのかなって今でも思う。

旦那の動向を探ってること?

それとも…(・∀・)/

さち
『ええっ、いいよ。気にしないで』
『じゃあ、またねー』



おそらく1分にも満たない電話。
これなら参考にならないから、記録に残す必要もない。


(というより、やめればいいのか)
(さちを通して、関塚さんの動向を探ることを…)


誰に指示されたわけでもない。
これは、あくまで「オレの意思」で行っていることだ。


(だから、やめても誰にも文句は言われない)


けれども、ここでやめたら何かを見失う気がするのだ。
たとえば公安部の刑事になったときの、様々な覚悟みたいなものを。
そこらへん、番外編の配信を希望します!!w


(…あの子ならどうするだろう)


もしも彼女がオレと同じ立場なら、オレを同じことをするだろうか。
今ごろ、大泣きしているであろうあの子なら…


東雲
「…ウザ」


こんなの、つまらない感情だってわかってる。
それでもオレは、あの子にこっちの世界に来てほしくない。
今、オレが抱えているような思いを味わわせたくない。


(ほんと、面倒…)
(いっそ、自分から『やめます』って言ってくれればいいのに)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



けれども、世の中はオレの思い通りにはいかないらしい。
彼女はやめるどころか「ちゃんと公安の仕事を知りたい」と言い出した。
おまけに…


さち
「ああっ、良かった、ここで会えて」
「実は歩くんに会いに来たところだったの」


その瞬間、なんとなく嫌な予感がした。
だって隣には、トラブルメーカーなうちの補佐官がいる。



(この子いるとロクなことが起きないし)
(もしかしたら、また今回も…)


そして、オレの予感は的中した。


さち
「あのね、歩くんね」
「小さい頃、ポンカンを食べたくて川に落ちたんだよ」

東雲
「さち…!」

さち
「ポンカンの入ってた袋を川に落としちゃって…」
「それを取ろうとして落っこちて、川で溺れたんだよね」


(…サイアク)


心の中でそう呟いたのは、その話をしたことがあったからだ。
もちろん、とっくに忘れている可能性もあるけれど。


東雲
「…そのあと、さちも一緒に溺れただろ」

さち
「ふふっ、そうだった!」

関塚
「ああ…昔、さちが溺れている子を助けようとしたっていうのは…」

東雲
「オレのことです」

さち
「ねっ…懐かしいよね」


そうだ、懐かしい。
だってあのとき、オレは恋に落ちたんだ。


オレのために川に飛び込んでくれたさちを「運命の人」だと思った。
ずいぶんマセた話だけど、本気でそう信じていた。


(ただ、それが一方通行だったって話で…)



さちが結婚すると知った日。
合コンで「運命の人を探しに来た」という女性を、オレはバカにした。
「運命なんて安っぽい言葉だ」と鼻で笑ってみせたはずだった。


(でも、その安っぽい言葉に、ずっとこだわっていたのはオレだ)


一度も、想いを伝えられなかったくせに。
触れることすら躊躇ってるくせに。


さち
「じゃあ、私たち、これで帰るね」

東雲
「うん、ありがとう」
「関塚さん、これ、ありがたくいただきます」

関塚
「そうしてもらえると嬉しいよ」



2人を見送った後、うちの補佐官に向き直る。
彼女はあきらかに戸惑った顔をしていた。



(やっぱり忘れていない···か)


どうしようもない惨めさが込み上げてきた。
自分の女々しさとか、みっともなさとか…
そういうものを、ことごとく知られてしまった気がした。


(よりによって自分の教え子に)


それでも教官っぽいことを口にしたのは、オレの精一杯の虚勢だ。


(ほんと、みっともない…)
(なんでオレ、こんな必死に…)
本編ではあゆむんが

『オレは人妻を好きになったんじゃない』

『好きだった人が人妻になったんだ』っていうんだけど…

これ初めて見たときの衝撃がヤバかった!!

でも、ヒロインちゃんのことがなければあゆむんは好きだった人って過去形の言い方にはしなかったんじゃないか?とも思ったのね…

もちろん、この時点ではまださちの事好き、好きには変わりないけどあゆむんの中で何かが変わり始めてるっていうか…


やがて話題はオレの女性関係にまで及び…
気が付いたら、言わなくてもいいことまで口にしていた。


東雲
「なんならキミ、立候補してみる?」
「オレの特定の相手として」


もちろん、こんなの本気じゃない。
ただのやけくそついでに口走ったことだ。
それなのに、彼女は手を挙げた。




「立候補します」

東雲
「え?」


「私が教官の特定の相手になります!」


(…なにそれ)


どうやらうちの補佐官は、オレのことを好きになっていたらしい。

 

 

 

 

 

『衝動ほどたちの悪いものはない』

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 

 

 

訓練生が入校してから数週間が過ぎた。


「教官、今日のネクター買ってきました!」

東雲
「そこに置いといて」


「はい!」


今日も「ウラグチ」は無駄に元気だ。
というか、元気しか取り柄がない気もするけど。


(ま、バカはバカなりに一生懸命やってるみたいだし)


「あ…」

ふいに、ウラグチが何かに気付いたように声を上げた。

東雲
「なに?」


「あっと···大したことじゃないんですけど…」
「教官、一昨日も同じ映像を見ていたなぁと思って」

(え…)


確かに彼女の指摘どおりではあった。
もっとも、気付かれたところで差し支えのない映像ではあるけれど。


東雲
「まさかキミ、いちいちチェックしてるの?」
「オレがなんの映像を見てるのかって…」


「ち、違います!」
「今回はたまたま頭に浮かんできたんです」
「一昨日声をかけた時も、教官、今みたいに机に肘をついて…」
「ちょうどそのとき、モニターに同じ映像が映ってたなぁって」

東雲
「……」


「あ、でも服は違いますよね」
「一昨日はスーツを着てました。それでTシャツは水色で…」


彼女は、ずいぶん詳しく「一昨日のこと」を語り出す。
まるでその場面を「写真」か「映像」で確認しているかのように。


(もしかして、この子···イメージ記憶がうまいってこと?)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 




(だとしたら、使い方次第では面白い刑事になるかも)
(勉強の仕方だって、もっと変えればもっと成績も上がって…)


そんなことを手帳に書き込んでいると、ふわっと甘い香りが鼻をくすぐった。


(この香りは…)


さち
「ごめんね、待たせちゃって」

東雲
「いいよ、オレが少し早く来すぎただけだし」


1ヶ月ぶりに会う彼女を、それとなく観察する。


(メイクも香水も変わってない…マニキュアも…)
(ああ、でもネックレスが違ってる…)
(さちの趣味じゃないから、関塚さんからのプレゼント…ってとこ?)
好きな人は観察しちゃうよね…

そして些細な変化にも気づいてしまう…と

そんな彼女はロイヤルミルクティーを頼むと、改めてオレのほうに向き直った。


さち
「なにを書いていたの?」

東雲
「ちょっとね、仕事上のメモ」
「今、手のかかる部下が1人いてさ」

さち
「へぇ、どんな人?」

東雲
「バカな子」

さち
「…バカ?」

東雲
「そう、バカ」
「ついでに嘘つくのがヘタ。要領も悪すぎ」

さち
「……」

東雲
「そのくせ、正義感とやる気だけは人一倍」
「だから、すぐによけいなことに首を突っ込むし」
「実力が伴わないからミスも多いし」

さち
「……」

東雲
「でも、まぁ少しは見どころがあるんだけどね」
「オレの勘違いかもしれないけど、そこを伸ばせば…」

さち
「ふふっ」



突然、さちが笑い出した。


東雲
「え、なに?」

さち
「歩くん…本当はその人のこと、すごく気に入ってるんでしょ」

東雲
「は?全然違うけど」

さち
「だけど、楽しそうにしてるよ?」

東雲
「まさか、迷惑してるのに」

さち
「あ、嘘ついた。私には、ぜーんぶ分かるんだから」

東雲
「…そう」



(全部分かる…ね)

あ…胸が…(´;д;`)

コーヒーと一緒に、自嘲気味な言葉を飲み込む。
だって、さちは「肝心なこと」は何ひとつ分かっていない。
ほんとに分かってないのかな…?

東雲
「ところで今日の用件は?」

さち
「そうそう!あのね、もうすぐ彼の誕生日でね」
「プレゼントの候補が2つあるんだけど…」



さちの頬が、うっすらと赤く染まり出す。
嬉しい時や楽しい時に見せる、彼女の一番きれいな顔。



(ほんと…なにも分かってない)
(そんな顔、無防備に見せておいて…)



さち
「それでね」


話に夢中になってるさちが、身体を前に乗り出してくる。
肩にかかっていた髪の毛が、ゆらりと揺れて前に落ちた。


(髪、カップに…)



伸ばしかけた手を、オレは慌てて引っ込めた。


東雲
「さち、髪の毛」

さち
「え?」

東雲
「カップに入りそう」

さち
「あ、ほんとだ」
「ありがとう、歩くん」

東雲
「…うん」



迂闊に手を伸ばせない。
触れることなんてできやしない。
一度もオレを「恋愛対象」として見てくれなかった、大事な大事な幼なじみ。
触れることもできないくらい大切って…


゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 




だからこそ、腹が立ったのだ。
研修先で、さちからの電話を受けたあと、
うちの補佐官が口にした、何気ない一言に。



「あ、その…アレですね…」
「さちさんと仲良いんですね」
「なんか会話だけ聞いてると恋人同士みた…」


最後まで言わせず、彼女を壁際に追い込んだ。
最近は、「壁ドン」なんて言われてるけど、本来はただの恐喝手段の1つだ。


東雲
「興味あるの?オレのこと」
「だったら、一晩かけて教えてあげようか」


オレのひと言に、彼女はぴくりと身体を揺らす。
けれどもこの程度で許してやるつもりなんかない。


(なにも分かってないくせに)
(なにも知らないくせに)


どんな思いで、オレがさちと会っているのか。
どんな思いで、さちと接してきたのか。


(恋人だなんて、そんなの一度も…)



「す…すみません!」


突然の大声が、オレの鼓膜を揺らした。



「興味なんて全然…」
「なので教官のことより、あ…」
「明日のバスの場所を教えていただければと…」


東雲
「…」


(…え?)
(なにそれ、このタイミングで交渉…?)


確かに彼女がこの部屋にいるのは、オレから情報を聞き出すためだ。
でも、だからって…


(なんで今…)
(しかも、そんな震えてるくせに…)


東雲
「……アハハハハッ」


たまらず、オレは吹き出した。


東雲
「悪くないね…ぷ…くくっ」
「今の聞き出し方は悪くないよ、ハハッ!」


だって、さすがに驚くじゃないか。
彼女の度胸とか図太さとか、図々しさとか…


(ダメだ、この子…面白すぎ…)


笑いに笑ったせいなのか。
鬱々としていた気持ちは、いつの間にか吹き飛んでいた。
もっとも当の彼女は、ずっと釈然としない顔をしていたけれど。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



さて、その数日後…

東雲
「ふわぁぁ…おつかれさまでーす」

颯馬
「石神さん、歩が…」

石神
「東雲、来てくれ、話がある」


(めずらしいな。石神さんがオレに声をかけるなんて)


東雲
「なんですか、いきなり」

石神
「稲葉の不正入学が、訓練生たちに露呈した」

東雲
「!」

石神
「恐らく本人も、すでに耳にしているだろうが···」

東雲
「どうするんですか?対応策は?」

石神
「すでに上に提案してある。あとは許可が下りるのを待つだけだが···」

颯馬
「おそらく時間がかかるでしょうね」

東雲
「…じゃあ、その間は放置ですか」

10分ほど前、モニタールームに挨拶をしに来た彼女を思い出す。
昨日までは体調不良で休んでいたこともあって、今日は随分と張り切っていた。


(それなのに、この状況って…)


石神
「どこへ行く、東雲」

東雲
「ちょっとトイレに」

颯馬
「教場近くのトイレですか?」



朗らかに響いた問いかけに、オレは少しだけ足を止めた。



東雲
「さあ?」
「そのあたりは気分次第ですかね」



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



そんなわけで、オレは教場近くのトイレに向かうことにした。
理由?
もちろん「気が向いたから」だ。
案の定、教場のそばを通りかかると訓練生たちの声が聞こえてきた、


男子訓練生A
「例の話、本当かよ?」

男子訓練生B
「絶対本当だって!長野県警のおエライさんから聞いたんだぜ」
「『稲葉の経歴は嘘だ』って」

男子訓練生C
「でも、それ…飲み会の席での話なんだろ」

男子訓練生B
「バカ、だからこそ信憑性があるんだろ」
「酔っ払ってたから、上司がうっかり口を滑らせたんだろうが」



(ふーん、そういうこと)


それに対して、勇ましくも鳴子ちゃんが反論する。
けれども、圧倒的多数の前では少数意見など聞き入れてもらえるはずがない。


(そもそも『不正入学』は事実なわけだし)


こういうときは、なにをしても無駄だ。
助けを出すなら、嵐が弱まるのを待った方がいい。
それにあと数時間後には、上層部から何らかの指示が下りるのだ。


(ま、適当な理由をつけて不正入学を正当化するんだろうけど)
(それで、めでたしめでたしってことで···)


そのとき、なぜか彼女の声がオレの耳に届いた。
不思議なくらい、クリアにはっきりと。
(((o(*゚▽゚*)o)))


「鳴子、いいよ」

鳴子
「でも綾…っ」
「いいから、だって私、本当に…」



次の瞬間、オレはドアノブに手を掛けていた。



東雲
「ねぇ、『ウラグチさん』いるー?」

全員
「!?」

東雲
「今日から出席してるはずなんだけど…」

衝動、としか言いようがない。
そして「衝動」ほど、たちの悪いものはない。



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



こうして衝動的な行動をとってしまったオレは、さらに成り行きで…



「うーん…うーん…」

東雲
「唸っても、答えは出ないし」
「ほら、さっさと参考資料を開いて」
「あと1時間20分しかいないんだから」


「はいっ!」



(ほんと、なにやってるんだろう)
(1日3時間、勉強をみるとか)


それでも、提案せずにはいられなかったのだ。
彼女が、本気で悔しそうな顔をしていたから。

(『バカだけど頑張ったって言えるようになりたい』って···)
(ほんと、なんていうか···)


「あっ、わかりました!」
「このやり方は、資料5-2の応用ですよね?」

東雲
「だったらやってみて」


「はい!」
「……」
「………」
「教官、できました!」


(そりゃ、できるでしょ)
(それが『正解』なんだから)



「すごい…なんか…」
「わかるって楽しいですね」
覚えたての小学生…(*`▽´*)w

ぱぁぁっと嬉しそうにほころんだその笑顔に、一瞬釘付けになる。


東雲
「…楽しまれても困るんだけど」
「それを成果に結び付けてもらわないと」


「そ、そうですよね」
「すみません。『楽しい』なんて言っちゃって…」
「じゃあ、次は…問5…と」


ページをめくる彼女から、オレはさり気なく目を逸らす。


(これくらい当然だし)
(教えてるの、オレなんだから)


プルル、とスマホが震える。
ディスプレイを見ると、兵吾さんの名前が出ていた。


(なんだろう、こんな時間に)


ひとまず、彼女に気付かれないようにメーラーを開く。
送られてきた文面は、簡潔すぎるほど簡潔だ。

……『例、1ヶ月、3内』

(『3内』…『今から3時間以内に』って…)
(人使い荒すぎだなぁ、兵吾さんは)



゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚



23時。
オレはモニタールームに入ると、改めてスマホに届いたメールを確認した。


(『例、1ヶ月、3内』…つまり…)
(『例の女の監視カメラの映像、1ヶ月分洗い出し、3時間以内に』…)


「例の女」とは、今、うちの班で泳がせている監視対象者のことだ。


(『ララ・リー』…某国の女スパイ…)
(現在は国会議員・笹野川六郎の愛人…)


とはいえ、1ヶ月分のデータを1から漁るとなると、相当な時間がかかる。
それでは該当映像を時間内に探し出すことなんてできやしない。


東雲
「……」


(使うしかない…か)


ためらいを覚えなかったと言えば嘘になる。
それでもオレは、手帳のとあるページを開いた。


(今月…3日20時~20時25分)
(同6日…21時~22時18分)


これらはすべて、さちからかかってきた電話の記録。
「日にち」と「電話が掛かってきた時間」と「終わった時間」···
他人から見れば、きっとどうでもいい内容。
でも、オレならここから「必要な情報」を引っ張り出せる。


(まずは『関塚さんの帰宅時間』…)
(そこから逆算すれば、笹野川の行動が読み取れる…)


実は、関塚さんは笹野川の秘書だ。
しかも笹野川からの信頼はかなり厚く、行動を共にすることが多い。


(つまり笹野川が愛人と会ってるときも関塚さんは待機してるはず…)


通話メモを確認しながら、一定条件を満たした日の映像をDLしていく。
その結果、そのうちの8割に、笹野川と愛人の姿が映っていた。


(ほら、やっぱり役に立った…)

それなのに、この虚しさはなんだろう。
どうしようもない、やるせなさは。

東雲
「ごめん、さち…」


以前は、さちからの電話が楽しみなはずだった。
たとえ、延々とのろけ話を聞かされるだけだったとしても···
さちの声を聞きたいから、必ず電話に出るようにしていた。


(それなのに、こんな形で利用して…)

この時点ではまだ

さち > 公安


新人警察官の多くは「刑事部」の刑事に憧れる。
いつかヒーローになることを、心のどこかで夢見ている。
かつてのオレもそうだった。


さち
「うっ…うっ、ひっく…」

東雲
「どうしたの、さち姉」

さち
「今日ね、学校でね、大きくなったら刑事になりたいって言ったの」
「刑事になって、正義の味方になりたいって」
「そしたら『さちはバカだから無理だ』って言われたの」

東雲
「だったらボクがなる!」
「さち姉のかわりに、ボクが正義の味方になるよ!」


(ほんと、なにしてるんだろう)
(なんで、こんなこと…)


再び、スマホがプルルと震える。

(誰…また兵吾さんから?)

けれども、表示されていたのは『ウラグチ』の4文字で…


……『教官、課題の問5、溶けました!!!!!』


東雲
「……」


(…変換ミスだし)
(ビックリマークつけすぎだし)


なのに、笑ってしまった。
たぶん、泣き笑いみたいな顔で。
ヒロインちゃんのおかげで少し救われたんだよね

東雲
「ほんと、バカ…」



ひとしきり笑ったら…
締め付けられていた胸の奥が、少しだけ和らいだ気がした。

 

 

 

 

 

『期待しない出逢い』

 
 
 
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
 
 

たぶん、その日のオレは、やさぐれていたんだと思う。

黒澤
「じゃあ、このあたりで皆さんお待ちかねの···」
「自己紹介タイムといきましょう!」

 

 

幹事の透のひと声で、皆が妙にソワソワし始める。
そんななか、オレは目の前のほっけ焼きに黙々と箸をつけていた。

 

 

(今日のコたちって全員商社のOLだっけ、それとも看護師?)
(ていうか、どの子も似たような顔してんだけど)

化粧も顔も同じだよねー

 

 

仕事柄、人の顔を覚えるのは苦手じゃない。
ただ、今日は覚える気が起きないだけで。

 

 

(ま、とりあえずニコニコしておけばいいか)
(それで気の合いそうなコがいたら、連絡先を交換して···)

つまみぐい\( ˙▿︎˙ )/??w

 

そのとき、向かいの席にいた女のコのひと言が耳に飛び込んできた。

 

 

女性
「今日は『運命の人』を探しに来ましたぁ」
「よろしくお願いしまぁす」

 

 

皆が「おおっ」と拍手する。


中には「じゃあ、オレが」と手を挙げてるヤツもいるくらいだ。


なのに、何故かオレはイラッときて、つい本音を口にしてしまった。

 

 

東雲
「へぇ、『運命の人』かー」

 

女性
「はぁい」

東雲
「でも『運命』ってさー」
「なーんか安っぽい言葉だよねー」

思うのは自由だけど、言葉に出した時点で安っぽさが出るよね(°▽°)w

 

 

全員
「······」

 

 

2時間後。

 

黒澤
「ああ、もう!なんてことを言ってくれたんですか」
「歩さんのせいで、今日の合コン、一次会でお開きですよ!」

 

 

東雲
「ハイハイ」

 

黒澤
「あの女のコは泣いちゃうし」
「他のコたちも最後まで怒ってたし!」

東雲
「だから悪かったって」

 

 

確かに、余計なことを言った自覚はある。
あんなの、適当に聞き流しておけばよかったのだ。

それくらいショックだったんだもんね…

 

 

黒澤
「ていうか今日の歩さん、ヘンですよ」
「なにか嫌なことでもあったんですか?」

 

 

透は、おどけた様子でオレの顔を覗き込んでくる。
そのくせ、明らかに探るような目をしているんだからタチが悪い。

あの虚ろな目!?

 

東雲
「べつに」

 

黒澤
「······」

東雲
「ほんとだって」

そう、なんてことはないのだ。
今日の夕方、幼なじみから浮かれたメールが届いたってだけで。

 

ーー『お嫁に行くことになりましたー\(^o^)/』

 

(···バカみたい)

 

 

こんなの、覚悟できてたはずなのに。

 

(ほんと、バカみたい)
(一度も告白しないで、失恋するなんて)

 

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

 

 

 

 

そんなやさぐれた気持ちが「あきらめ」に変わり始めた頃···
オレは、仕事の傍ら、公安学校の教官を務めることになった。

 

 

(面倒くさ···)
(なんでオレが教官になんて···)

 

 

ひとまず、次期入校者の経歴書をざーっと流し見る。
今の時点では、公安として使えそうなのは一握りしかいなさそうだ。

 

 

(これを使える人材に育てあげるとか···)
(ほんと、面倒くさすぎ···)

 

 

東雲
「···ん?」

 

ふと、ある経歴書の「首席合格」の文字が目に止まった。

東雲
「ふーん···」

(今期の首席は女子なんだ)
(名前は···稲葉綾…)

 

東雲
「······」
「·········」

 

 

(···なにこれ)
(この経歴、どう見ても嘘でしょ)

 

 

PCを開いて、職員管理のDBにアクセスする。
「アクセス権限エラー」のメッセージは、ほんのひと手間ですぐに解除された。

東雲
「稲葉綾···長野県出身···」

 

(···やっぱりコレ、おかしいって)

 

 

人事部のミスか、それともなにか裏事情でもあるのか。
念のためにと内線電話に伸ばしかけた手を、結局オレは引っ込めた。

 

(ま、どうせ誰かが報告するか)
(石神さんか颯馬さんあたりが···)

 

 

ところが···

 


「え?」

 

東雲
「ん?」

 


「ご、ごめんなさい!シャワー室が空いてるって言われたもので!」

 

(この子、インチキ経歴書の···)
(もしかして、誰も人事部に連絡しなかったってこと?)
(兵吾さんはともかく、石神さんや颯馬さんは···)

 

そこまで考えたところで「ああ」と思い出す。

 

(あの人たち、昨日まで潜入捜査で忙しかったんだっけ)
(透とも、今朝まで連絡取れなかったし)

 

 

あるいは「大人の事情」が働いたとも考えられる。
なにせシャワー室に堂々と入ってくるような子だ。

 

 

(上層部の愛人とか?)
(そのわりに色気のカケラもなさそうだけど)

 

 

ひとまず着替えて、荷物をまとめる。
去り際に声をかけようと思ったのは、ちょっとした好奇心からだ。

東雲
「じゃ、鍵かけるの忘れないようにね」

 


「すみません、急かしてしまって···」

東雲
「気にしないで」
「それにキミみたいなエッチな子、キライじゃないから」

 


「エッチ!?」

東雲
「そんなに大きな声出さないの。外に聞こえちゃうよ」

 


「え、あの···っ」

なにか言いたげだったのを無視して、ドアを閉める。

 

 

 

(予想通り色気ゼロ)
(あれで『愛人』なら趣味悪すぎ···)

 

 

東雲
「······」

 

 

(···意外と颯馬さんあたりは、好きなタイプだったりして)
(あと後藤さんも···あの垢抜けない感じが好きそうだし···)

 

 

東雲
「兵吾さんは···」

 

(···ないな。ないない)
(会うたびに『このクズが!』って舌打ちされるでしょ)
(まぁ、オレ的にも絶対ないけどね)

( ̄∀ ̄)ふっふっふ

 

 

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

 

 

 

 

その数時間後···
なんと「ウラグチ」が、オレの補佐官を務めることになった。

 

(やっぱりバカだな。この子)
(どうせなら、もっとしっかり指導してくれる教官を選べばいいのに)

 

「幻のピーチネクター」を飲みながら、少し前に撮った動画を再生する。


画面には、スマホを手にうなだれる彼女が映し出されている。

 

 

ーー「そうですか···書類に嘘を···」
ーー「ありがとうございます···では失礼します」

 

 

東雲
「······っ」

(これ···いくらなんでも肩を落としすぎでしょ)
(人前なんだから、もう少し体面を取り繕えばいいのに)

 

 

よく言えば「素直」
でも、それは公安刑事としてあまりプラスに働くとは思えない。

 

(ま、適当にパシらせておけばいいか)
(1ヶ月もしないで長野に帰るだろうし)

 

 

その考えはあっさりと打ち砕かれるんだけど······

 

 

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

 

 

 

 

そんななか、最初の訓練が始まった。
潜入捜査訓練···
といっても、あくまで架空の「潜入捜査」だけど。

 

東雲
「キミには花屋の入口からスタートして···」
「30メートル先の空き地に辿り着いてもらう」

 

もちろん、ただ移動してもらうわけじゃない。
その間「監視カメラに映らない」という条件付きだ。
案の定、それを聞いた彼女は顔を引きつらせた。

 


「こんなの無理···」

東雲
「だったらやめれば?」
「どうせ裏口なんだし、荷物まとめて帰りなよ」

わざとキツめな言葉をぶつけると、彼女は悔しそうにうつむいた。

 


「···嫌です」
「このまま帰るのは絶対に嫌です」

 

 

(······やる気は合格)

 

 

裏口入学のくせに、いちおう「やる気」だけはあるらしい。
そうなると、最初の助言をどこまでするかが問題だ。

 

 

(いきなり全部を教えるのもなんだし···)
(まずはヒントを1つ与えてみるか)

 

 

東雲
「いまから10分間、この2つのモニターを観察して」

 

 


「···それだけですか?」

 

 

東雲
「それだけで十分でしょ」
「キミがこの学校で学ぶに値する人材ならね」

 

 

(これで5分ほど様子を見て···)
(なにも掴めないようなら、もういくつかヒントを与えるか)

 

 

ところが5分後。

(そろそろ次のヒントを···)

 

カツカツカツ···

 

(ん?)

 

カツカツ···カツカツカツ···

 

(なに、この音···)

 

見ると、彼女の指先が地図を軽く叩いている。
どうやらモニターを眺めながら、リズムを取っているらしい。

 

(なんなの、ただのクセ?)
(だとしたら迷惑···)

 

東雲
「······」

 

(···違う。コイツ、監視カメラの死角を発見したのか)

 

その上で、進むルートを確認しているのだ。

 

(ただの偶然?)
(それとも恐ろしく勘がいいとか?)

 

いずれにせよ、はじめて目の前の新人に興味が湧いた。
ただの「裏口入学」が、指導次第では化けるかもしれない···

 

 

 

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

 

 

 

けれども、その期待はあっさりと打ち砕かれた。

 

女性
「ひったくりよ!」

 

おばあさん
「誰か!誰かバッグを···」

 


「待ちなさい!」

 

東雲
「ちょっと!キミ···」

 

 

慌てて声をかけたものの、彼女はそのまま犯人を追い掛けて行ってしまった。

 

 

東雲
「あのバカ···!」

 

 

(ありえない。今は『潜入捜査中』なのに)

 

人によっては「ただの訓練だろう」と言うかもしれない。
けれども、訓練では常に「本番」を想定している。
これが本当の「潜入捜査」なら任務失敗なのだ。

 
 
 
 
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
 
 
 
 

そんなわけで、彼女には反省文5枚を課して帰らせた。
しょんぼりしていたけど、どこまで理解してもらえたかは分からない。

 

 

(また同じことをやらかしたりして···)

 

 

新人警察官の多くは「刑事部」の刑事に憧れる。

事件を解決し、正義のヒーローになることを、心のどこかで夢見ている。

 

 

(だったら、ここに来なければいいのに)
(まぁ、この子の場合、わからずに放り込まれたみたいだけど···)

 

 

そんなことを考えていると、スマホの着信メロディーが鳴り出した。
すぐに手帳に手を伸ばすと、素早く今の時刻を書き込む。

 

東雲
「はい···」

 

さち
『もしもし、歩くん?今、大丈夫?』

 

 

すっかり耳に馴染んだ、甘く軽やかな声。

 

 

東雲
「もちろん」
「今日はなに?『ぶりの照り焼き』の作り方?」

 

さち
『それは先週だよ。今日はねー』

 

 

電話魔のさちは、他愛のないことを楽しそうに話し始める。
もっとも、その8割は「大好きな関塚さん」のことだけど。

ツラい…( ´△`)

 

 

さち
『それでね、彼がねー』

 

 

相槌を打ちながら、オレは机の引き出しを開けた。
古びたステンドグラスの欠片が、鈍い光を放っていた。

 

 

 

゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚

 

 

結局アップしちゃったー

 

 


すごーく書きたい!
てか書き溜めはしてんだけどね…
本編は書き溜めしてないから…
いきなりカレ目線ってのもね…
後先考えず先に書きたいのだけ書いちゃって…

切なくて切なくて…
泣きそうになったんだよねー

アップしてしまおうかな( °◡͐︎°)✧︎w
でも本編ありきのカレ目線だよね…

悩むー!!!!

でもどうせアップする…w