論文試験での俺の思考(行政法試験問題) | 人生賭けた学習塾「松塾」【第15期】

論文試験での俺の思考(行政法試験問題)

   屋外広告物法は,都道府県が条例により「屋外広告物」(常時又は一定の期間継続して屋外で公 衆に表示されるものであって,看板,立看板,はり紙及びはり札並びに広告塔,広告板,建物その 他の工作物等に掲出され,又は表示されたもの並びにこれらに類するもの)を規制することを認め ており,これを受けて,A県は,屋外広告物(以下「広告物」という。)を規制するため,A県屋 外広告物条例(以下「条例」という。)を制定している。条例は,一定の地域,区域又は場所につ いて,広告物又は広告物を掲出する物件(以下「広告物等」という。)の表示又は設置が禁止され ている禁止地域等としているが,それ以外の条例第6条第1項各号所定の地域,区域又は場所(以 下「許可地域等」という。)についても,広告物等の表示又は設置には,同項により,知事の許可 を要するものとしている。そして,同項及び第9条の委任を受けて定められたA県屋外広告物条例 施行規則(以下「規則」という。)第10条第1項及び別表第4は,各広告物等に共通する許可基 準を定め,規則第10条第2項及び別表第5二は,建築物等から独立した広告物等の許可基準を定 めている。
広告事業者であるBは,A県内の土地を賃借し,依頼主の広告を表示するため,建築物等から 独立した広告物等である広告用電光掲示板(大型ディスプレイを使い,店舗や商品のコマーシャル 映像を放映するもの。以下「本件広告物」という。)の設置を計画した。そして,当該土地が都市 計画区域内であり,条例第6条第1項第1号所定の許可地域等に含まれているため,Bは,A県知 事に対し,同項による許可の申請(以下「本件申請」という。)をした。
本件広告物の設置が申請された地点(以下「本件申請地点」という。)の付近には鉄道の線路が あり,その一部区間の線路と本件申請地点との距離は100メートル未満である。もっとも,当該 区間の線路は地下にあるため,設置予定の本件広告物を電車内から見通すことはできない。また, 本件申請地点は商業地域ではなく,本件広告物は「自己の事務所等に自己の名称等を表示する広告 物等」には該当しない。これらのことから,A県の担当課は,本件申請について,規則別表第5二 (ハ)の基準(以下「基準1」という。)に適合しない旨の判断をした。他方,規則別表第4及び 第5のその他の基準については適合するとの判断がされたことから,担当課は,Bに対し,本件広 告物の設置場所の変更を指導したものの,Bは,これに納得せず,設置場所の変更には応じていな い。
一方,本件申請がされたことは,本件申請地点の隣地に居住するCの知るところとなった。そ して,Cは,本件広告物について,派手な色彩や動きの速い動画が表示されることにより,落ちつ いた住宅地である周辺の景観を害し,また,明るすぎる映像が深夜まで表示されることにより,本 件広告物に面した寝室を用いるCの安眠を害するおそれがあり,規則別表第4二の基準(以下「基 準2」という。)に適合しないとして,これを許可しないよう,A県の担当課に強く申し入れてい る。
以上を前提として,以下の設問に答えなさい。 なお,条例及び規則の抜粋を【資料】として掲げるので,適宜参照しなさい。

〔設問1〕
A県知事が本件申請に対して許可処分(以下「本件許可処分」という。)をした場合,Cは,こ れが基準2に適合しないとして,本件許可処分の取消訴訟(以下「本件取消訴訟1」という。)の 提起を予定している。Cは,本件取消訴訟1における自己の原告適格について,どのような主張を すべきか。想定されるA県の反論を踏まえながら,検討しなさい。


〔設問2〕
A県知事が本件広告物の基準1への違反を理由として本件申請に対して不許可処分(以下「本 件不許可処分」という。)をした場合,Bは,本件不許可処分の取消訴訟(以下「本件取消訴訟2」 という。)の提起を予定している。Bは,本件取消訴訟2において,本件不許可処分の違法事由と して,基準1が条例に反して無効である旨を主張したい。この点につき,Bがすべき主張を検討し なさい。