支援される側と支援させていただく側、訪問看護の場面では支援される側は利用者さん、支援させていただく側は訪問看護師です。この関係性を継続させていく為にはお互いの距離感が大切だとつくづく感じています。距離感が上手く摘めずに支援が継続できなくなった利用者さんもいます。

 利用者さんに寄り添うことは支援として必要ですが、寄り添い過ぎるとどういうことが起きるのか。

 支援には枠組みがあります。その枠組みを崩すのは簡単なことです。
 例えば、訪問看護師が利用者さんの受診に一緒に着いて行く。利用者さんが受診できないから代わりに薬だけ取りに行く。トイレが汚れているから掃除をする。訪問前に買い出しをして訪問時に持参する、等。これだけ見ると、「そんなことしてるの?それはアカンやろ!」と感じる人は多いと思います。
 実際に支援の枠組みを超えたことをしている支援者は存在するのではないでしょうか。

 主治医から指示書をいただき、訪問看護の支援が開始されます。最初は支援の枠組みの中で支援しています。関係性を構築していく過程で利用者さんから相談を受けます。

利用者さん「実は買い物に行きたいけど脚が痛くて辛いのよ〜。来る前に明日の朝の食パンだけでも買って来てくれない?」

看護師(脚が痛くて活動しにくいのは事実、これを断ると今後の関係性に悪い影響があるかもしれない、最悪訪問看護は要らないと言われるかもしれない、大した用事ではないから受けることにするか)
「そうなんですね、分かりました、いつでも買い物に行ける訳ではないですが、今日はついでに買って行きます。」

利用者さん「ありがとう〜助かるわ〜本当にありがとう。いつもなんて思ってないわよ、今日は特別脚が痛いからお願いしただけ。本当に頼りになるわ〜」

 この後、利用者さんからの買い物の依頼が本当になくなるのでしょうか?想像するに、買い物の依頼は継続し、買い物は1品から2品、3品と増えていくでしょう。頻度も増えてくるかもしれません。訪問看護師は一度受けた依頼を断ることが出来ず葛藤し、それを誰かに発信出来れば良いのですが、枠組みを超えた支援を開始したのは自分である為に、容易に相談することもできず、悩みます。やがて利用者さんの求めに全て応じられなくなり、利用者さんから叱責を受けるかもしれません。

利用者さん「これ、お願いしていた品物と違うじゃない。この果物も少し傷んでる。もぅ、なんで頼んだことがちゃんとできないの?役に立たないわね。」

看護師(いやいや、そもそも買い物に行ってあげているのに、なんやその言い方は!本当は頑張ったら脚が痛くても歩けるの知ってるんやで、こっちも悩みながらやってあげているのに、もう限界や)
「そう言うなら、これからは買い物は出来ません。」

利用者さん「なんなの?急に出来ないって!それならもういいわよ、他の訪問看護にお願いするから、もう貴方は来なくていいわよ。」

 全てがこういう展開になるのではないのですが、多かれ少なかれ、無いことはないと感じだと思います。

 看護師の心の声の中に、「〇〇してあげているのに」という言葉があります。訪問看護は支援をさせていただく存在であって支援をしてあげているのではありません。してあげていると思った時点でそれは支援とは言えないと思います。
 また、枠組みを超えた支援をしたことは良くないことではありますが、その訪問看護師が一人で悩むのは少し違うと思います。誰かに相談が出来ていたら違う結果になったのかもしれません。

 どうしたら良かったのか?

 長くなったのでまた今度書きます。