看護の仕事をしていると相手の話しを聴く場面が多々あります。「きく」の漢字は「聞く」ではなく「聴く」です、なんて学校や研修ではよく学ぶ内容です。積極的に聴くということなのですが、これがそう簡単なことではないと感じています。
 相手の話しを聴く、そんなに難しい?と思っている人は本当の意味での傾聴の難しさを知らないのだと思います。実は傾聴にも技術が必要なんです。

 書籍やネット等で調べると色々なことが書かれていますが、概論的であったり、実際の場面でどう使えばいいのか分からなかったり、と情報がある割に使えないのは何が問題なのかといつも思います。
 きっと相手の話し聴くことが、誰にでも簡単に出来ることだから、情報を入れても、自分はできていると思ってしまっているのかもしれません。

 私は話しをするのは好きな方ですし、相手を楽しませる為にたくさん話しをするのは苦ではない人間です。だから看護の場面でのコミュニケーションは感性で実践していました。それがある研修を受けてからはコミュニケーションは看護技術の一つであることを学びました。コミュニケーション技術の中に傾聴の技術も含まれています。その研修の話しはまたの機会に書きます。

 私が働く訪問看護ステーションでも新入職者が入ってきます。コミュニケーションが苦手な人も来ます。利用者さんと関係性がとれていないので何を話せばいいのか?話しが続かない、沈黙が続く、等の悩みはよくあることです。そんな時私はいつもこう伝えます。

 私「訪問看護は看護師の話しを聴かせに行く場ではなく、利用者さんの話しを聴かせていただく場です。しっかりと傾聴していますか?」

 多くの新入職者は「傾聴しています。」と答えます。

 私「どんな風に傾聴していますか?」

 新入職者「どんな風に?どんなって、ちゃんと聴いています、しっかり聴いています。」

 ちゃんとやしっかりは具体的な説明が出来ない本人にしか分からない感性的な部分であり、それは他人には伝わりにくいことです。言い換えればちゃんと何をしているのでしょうか?しっかり何をしたのでしょうか?

 あまり質問ばかりしてもスタッフは怒られていると感じてしまうので、答えが出ない時は私の考えを伝えます。

 「『私はあなたの話しを聴いていますよ。』というサインを利用者さんに送って下さい。関係性ができていない相手なので利用者さんが話しにくいことは当たり前です。だからこそ聴いています、聴かせて下さい、あなたに興味があります、という気持ち、その気持ちを相手に伝わるように表現して下さい。それが『私はあなたの話しを聴いていますよ。』というサインです。そのサインを送り続けることで利用者さんは話しを聴いてくれたとの感覚になり、利用者さんに安心できる存在と認識されてくると思います。」

 そこから具体的なサインの送り方を伝えていきます。

 傾聴に技術が必要だなんて知らない人は多いので、この技術を知ると仕事以外にもプライベートでも役に立つと思います。