こんにちは!

この記事は第7回となりますので、

まだ過去の回をご覧になってない方は

そちらをご覧になってからこの回を読む事を

推奨させていただきます。


アルバムDangerousに関わった

3人のプロデューサーの1人

Bruce Swedien

ブラッド氏いわく"パイオニア"

のような存在で、

音のミキシングや、細かい作業に

長けていたそうです。

クインシージョーンズは、

ブルースの仕事ぶりについて

「綿棒で飛行機に色を塗るようだ」

とその丁寧さを褒めていました。


「ボーカルコンピング」

皆さんは"ボーカルコンピング"という

手法を聞いたことはありますでしょうか。

ボーカルコンピングとは、

複数回録音したボーカルから最良の部分を

切り取って、パズルのように組み合わせて

1つのボーカルにする手法のことです。

(フランケンシュタインのようなやり方

とブラッド氏は呼んでいました。)


ブルースはこの手法を非常に得意としていて、

アルバムDangerousの中で

いくつかの曲で用いられていたとの事です。


例として、Gone Too Soonの曲の

終盤の部分の一節

Born to amuse to inspire to the light

という部分では

Born to amuse(7テイク目)

to inspire(6テイク目)

to the light(8テイク目)

となっているそうです。


そして、この手法を最も活用した曲が

Jamなのだそうです。

例えば、Jamのサビの部分にあたる

Go with it. Go with it. Jam!!

という一説はなんと

34テイク目だというのです。

(この部分だけでも録音した回数は

46テイクにも及ぶそうです。)


当時は現代のように

コンピュータのソフトでトラックを

管理し、編集できる時代では無いため

テープマシーンを使って、手動で

編集していたそうです。


マイケルはこの手法を気に入っていたようで、

止めるまで何テイクでも歌おうとしていた

そうです。

(実際はもっと録音出来る余地があっても、

20テイクしか録音できないと嘘をついて

止める必要があったそうです。)


「Keep the Faith(demo)の謎」

アルバムDangerousの終盤、

12曲目に収録されている

Keep the Faith

この曲はMan In the Mirrorの作曲をした

サイーダギャレット、グレンバラード

が作曲、コーラスを務め、

ブルースがプロデュースを

行った曲です。


この曲は2000年代に

デモバージョンがリークされましたが

昨年、このデモとも違う、

別のデモがリークされました。

両者の違いは、

新デモの方が"キーが高い"ことです。

(実は、他の違いが全くありません。)

もし良ければ、YouTubeで聴くことが

出来ますので、お聴きいただければと

思います。


今回、ブラッドからこの新デモの

存在に関するお話を聞く事が出来ました。


実は、Keep the Faithは

Dangerous制作の初期に完成していた

曲でした。

メインボーカルの録音のみを残し、

他の曲を優先したのだそうです。

(これが、昨年リークされた

キーの高い新デモです。)


そして、制作が佳境に差し掛かった頃、

入念な準備をしてメインボーカルの録音に

望んだそうですが、

ここで問題が生じました。


それは、マイケルが

高音を出せなくなってしまった。

ということでした。


3回録音し直したものの、いずれも

同じ部分で声が出なくなってしまった

そうです。

ブラッドは、高音が出なくなった理由を

年齢の変化によって声がわずかに

低くなってしまったからではないか

と推察していました。


マイケルはこの事で、

スタジオを離れて1人になろうとしたほど

かなり落ち込んでしまったらしく、

これを見たブルースとブラッドが

曲のキーを下げる決断をしたのだそうです。

(こうして新デモのキーを下げたのが旧デモです)


それから2~3日たった頃

キーを下げたバージョンでのレコーディングに

臨んだマイケルは

「この曲を倒してやる」

と相当意気込んでいたようで、

あまりにも力が入り過ぎて

ボーカルが音割れしてしまった部分も

ありました。

しかし、ブルースはその音割れを

直すことはしなかったそうです。

こうして、我々の知る

Keep the Faithが出来たという

お話でした。


この曲は、ブラッドにとっても

これらのエピソードと共に

非常に大切な曲だそうで、

この曲の力強さやメッセージが

どう生まれたのかを聞くことが出来て

とても貴重な体験でした。


ここまでご覧いただき

ありがとうございました!

次回は3人のプロデューサーの1人

Bill Botrell

に関する内容をお送りしていきます。

また次回の記事でお会いしましょう!


(文章:シュン)