「お母さん、
イザと言う時に俺のスマホが開けないと
嫌だから、お母さんの指紋認証させて。」


突然、そう言って指を出すように言われました。


「イザって何…やだ…。」


『イザ』と言われて、娘の事が頭をよぎった。
まさか…息子も…?
娘と同じように、死にたい気持ちになっているの?
いいようのない不安でいっぱいになった。


娘のスマホはパターンロックされていて、色々やってみたけど開かなかった。
そうならない為の保険だと言うが…やっぱり不安。


娘の話も息子からはほとんどない。
娘の死をどう思っているのか、わからない。
息子の気持ちもわからないが、聞くのも怖い。


息子のスマホをチラッと覗くと
娘の写真が待ち受けになっていた。


正直、驚いた。


やっぱり…寂しいよね…
私だけじゃない…
息子は息子で、娘を想っていた。


『イザ』って…
悪い方にばかり考えてしまう。
そんな事、絶対、あってほしくない。


大丈夫だと言われても、
不安がおさまらなかった。