スペインバスクからこんにちは! その8.スペインとフランスの関係 | 水谷孝のブログ「つれづれなるままに」

みなさんこんにちは!

 

ご機嫌いかがですか?

 

今回は、スペインとフランスの関係についてお話ししたいと思います。

 

ヨーロッパの地図をご覧いただくとお分かりのように、スペインとフランスは隣同士の国です。

 

僕が住むイルンという町は、ちょうどスペインとフランスが、スペイン側から見ると北東部、フランス側から見ると南西部の海沿いのところでくっついているところ、つまり国境のところにあるスペイン側の町がイルンなので、幸運にも両方の国の文化・習慣や人々に接する機会に恵まれています。

 

それは同時に「スペインとフランスは、隣同士なのにどうしてこんなにもライバル意識(対抗意識)が強いのだろう?」と考えさせられる機会がとても多いことでもあります。(笑)

 

例えば、ラグビー一つ取っても、フランスのラグビーは、フランス代表も、そして14チームが所属する一部リーグ(このリーグはトップ14と呼ばれています)も、ヨーロッパでは(おそらく世界でも)屈指の強豪として知られています。

 

その強豪のフランスの隣のスペインのラグビーはと言いますと、スペイン代表とスペインリーグを強くするために、協会の関係者、指導者、選手たちが、もう何年も前から(少なくとも僕が来た34年前には、すでに強くなる努力をしていました。)、それなりに努力をしているのですが、ひと昔前の日本のラグビーに似て、いくら頑張っても、なかなかレベルアップしないので、今だにラグビーの二流国に甘んじているのが実情なのですが、そんな状況にもかかわらず、ライバル意識(対抗意識)が邪魔をして、となりの強豪国のフランスに、頭を下げて教えを乞う、ということは絶対にしないのです。

 

僕などは単純に「せっかく隣に、世界屈指の強豪国があるのだから、教えてもらわない手はない」と思ってしまうのですが、スペイン側は死んでもフランスだけには頭を下げたくないと思っているようです。

 

フランスはフランスで、「スペインが頭を下げて協力を求めて来ない限り、フランスの方から歩み寄って助ける必要はない」という態度なので、今だにスペインとフランスの間には、ラグビーの交流(例えば親善試合とか練習試合のようなもの)がほとんどありません。

 

一般的に隣国同士の関係はライバル意識(対抗意識)が強い、というのは世界共通のようですが、スペインとフランスのライバル意識(対抗意識)は、よくある隣国同士の単純なライバル意識(対抗意識)とは、やや性質が違うように思えます。

 

これはあくまでも僕が個人的に感じることなのですが、お互いの過去の歴史の中で、世界一になった頃の栄光が、深いところで関係しているように思えます。

 

僕が知る限りでは、スペインの人々もフランスの人々も、世界一だった頃の過去の栄光を口にすることはほとんどないのですが、僕が人々を観察する時に、両者の心の底(あるいは本人たちも気づかない、潜在意識か無意識の中)に、そういう過去の栄光によるプライドのようなものを感じるのです。

 

ではスペイン人にとって忘れることが出来ない、過去に世界一になった栄光とは何か?

 

それは世界の半分を支配したとまで言われた、15世紀から始まった大航海時代から、スペイン無敵艦隊がイギリス艦隊に敗れた1588年までの栄光だと僕は感じています。

 

現在でも世界には、スペイン語を母国語とする国が多くありますが(特に南米諸国)、今でもスペインは宗主国だという強いプライドを持っています。

 

ではフランス人にとって忘れることが出来ない過去一番の栄光とは何か?

 

それは17世紀頃から、フランスが欧州屈指の大国になって以来、第二次世界大戦後に、世界最強国になったアメリカの英語にその地位を奪われるまで、フランス語がヨーロッパのみならず、国際的な外交において公用語の地位にあったことが、フランス人が今だに忘れることが出来ない過去の栄光ではないかと僕は感じています。

 

フランス人が、いまだに頑なに英語を話さないことは有名な話しですが、その理由は今だにフランス語が世界で第一公用語だった頃の栄光が忘れられないせいだと僕は推測しています。(フランス人は、意地でもそんなことは言いませんが、、、)

 

人と言うのは、一度国の栄光という名のプライド(鎧)をまとってしまうと、なかなか脱げないのかもしれません。(もちろん我々日本人にもそういうものはあると思います。)

 

もう一つ、スペインとフランスが、ライバル意識(対抗意識)が強い理由として、現在までの国の発展の仕方の違いが大きいと思われます。

 

フランスは、第二次世界大戦後に、第一公用語の座だけは、アメリカの英語に取って代わられましたが、それでも欧米列強(先進国)としての地位は、昔も今も変わることなく守り続けています。

 

ひるがえってスペインはどうかと言いますと、1588年に世界最強と言われていた、スペイン無敵艦隊がイギリス艦隊に敗れて以降は、軍事的にも政治的にも経済的にも、二度と欧米列強(先進国)と肩を並べることはなく、常に欧米列強(先進国)よりもだいぶ遅れた国、という評価をされてきましたし、やっとECの仲間入りが出来たと思っても、フランスのスペインに対する評価はあまり変わっていません。

 

スペインは、フランスに対して強いライバル意識と言うよりも、対抗意識に近いものを強く持っているのですが、フランスの方は、スペインを下に見ているので、ほとんどライバルとも思っていないようなので、そういうところも、スペインとしては面白くないようです。

 

スペインとフランスが仲良くなれば、良いことが増えそうな気もするのですが(例えばラグビーの交流など)、フランスとあまり仲がよくないおかげで、フランスの悪い影響を受けないで済んでいる、という良い点もあります。(笑)

 

続きは次回のお楽しみに!

 

それではまた来週の金曜日にお会いしましょう!

 

みなさんお元気で!

 

スペインのイルンより心を込めて、、、

 

水谷孝

 

追記・3月31日の日曜日の夜中の2時(土曜日から日曜日の朝にかけて)を持ちまして、スペインは夏時間になり、1時間繰り上がって3時となりましたので、今後は日本との時差は8時間ではなく7時間となりますので、ブログの公開時間は、今回から毎週金曜日の朝6時とさせて頂きますのでどうぞご了承ください。