スペインバスクからこんにちは! その5 オペルカデットで死にそうになった事故 | 水谷孝のブログ「つれづれなるままに」

みなさんこんにちは!

 

ご機嫌いかがですか?

 

今回は、オペルカデットを買って、まだ間がない頃に起こった事故で死にかけたお話しをしたいと思います。

 

オペルカデットを買った時に、試乗をしたわけですが、試乗の段階で、すでにエンジン音に混じって、小さなカタカタ音を聞いたときに「このオペルカデットは、あまり運の良い車ではないかも知れないなぁ、、、」ということを、チラッと考えました。

 

案の定、買ってすぐの頃から、小さな修理の連続でした。

 

しかし僕も妻もオペルカデットが大好きだったので、小さな修理が多くても、あまり気にはしませんでした。

 

一番ショックだったことは、買って1年もたたないうちに、大きな事故に遭い(こちらの落ち度はゼロでした。)、死にそうになっただけではなく、大好きなオペルカデットが大破したことでした。

 

その事故は、ちょうど僕の後輩(この後輩は、僕が23才から28才の時まで勤めた、東京の月島にあった「東京○○○○ホテル」時代の後輩)のY君が、ホテルを辞めて、時間が出来たということで、僕に会いに来てくれた時に起こった事故でした。

 

その日は天気がとても良かったので、後輩のY君に、フランスバスクの町を見せてあげたいと思い、イルンの隣町のアンダイエから、サン・ジャン・デ・リュズ、そしてビアリッツまで案内したのですが、フランスバスクが、あまりにも美しいところばかりだったので、Y君はもう感激のしっぱなしで、帰りの車中では話が盛り上がっていたのです。

 

ちょうどビアリッツとサン・ジャン・デ・リュズの真ん中あたりに差し掛かった時に、対向車線の方から1台の車がやって来るのが見えました。

 

それまですれ違う車がほとんどなかったので、「今日は車が少なくて気持ちがいいなぁ、、、」と思ったその時でした、、、

 

その車は猛スピードで、僕の車に向かって突っ込んで来たのです。

 

居眠り運転だったようです。

 

正面衝突の形でしたが、正確には運転していた僕の正面(左ハンドルだったので、真ん中よりやや左側部分)に衝突してきたので、衝突の衝撃で押しつぶされた車体は、僕の足のところまで達していました。

 

普通ならば、死んでもおかしくない衝撃でしたが、衝突後すぐに自分が生きていることを知ったので、「これは奇跡だ!」と思いました。

 

しかも僕だけが無傷だったので、本当に奇跡的な助かり方でした。

 

自分が生きていると知った瞬間に、Y君のことが心配になり、Y君の方を見てみると、Y君は衝突の衝撃で頭からフロントガラスに突っ込んでいました。

 

Y君も、まさかスペインに遊びに来て、自分がこんな大きな事故に遭うとは、夢にも思わなかったでしょう。

 

人の運命とは、本当に分からないものです。

 

当時はまだシートベルトがなかったので、そういうことになってしまいました。

 

その時の体験から、後にシートベルトが出始めたときは、僕はすぐにシートベルト賛成派になりました。

 

Y君と相手の運転手は、すぐに別々の救急車で病院に搬送されたのですが、幸いにも2人とも命に別条はありませんでした。

 

この大事故があった時、すぐに「やっぱりこのオペルカデットは、良くないことを引き寄せる運命にあるなぁ、、、」と思いました。

 

そう思いましたが、それでもオペルカデットに対する恋心は消えることはありませんでした。

 

本当に「恋は盲目」とは良く言ったものです。(笑)

 

事故の後、二つの問題がやって来ました。

 

一つは、相手方の保険会社が、僕に対する損害賠償の回答として「当社の査定の結果、事故当時のあなたのオペルカデットの評価額は、80万円になりましたので、賠償額は80万円になります。」と回答してきたことでした。

 

新車で購入したにもかかわらず、たった11ヶ月乗っていただけで、オペルカデットを買った時の価格の半分以下の80万円と言ってきたのです。

 

突っ込んできた相手が100%悪いのは明白だったので、保険会社の回答を待っている間、僕は「こちらに落ち度は全くないのだから、新しいオペルカデットを買って返してもらうか(と言っても、もうオペルカデットは販売されていませんでしたが。)、さもなければ僕がオペルカデットに払った金額と同じ金額を弁償してもらうしかないだろう。」と考えていました。

 

こちらの保険会社は、こういう事故の時、どういう損害賠償をするのか、僕は全く知らなかったので、保険会社の回答を待っている間、念のためにいろいろな人に話を聞いたところ、全員が異口同音に「日本の保険会社はどうか知らないけど、こっちのヨーロッパの保険会社は、例外なくどこの保険会社も、賠償金を最大限ケチることしか考えないから、期待しない方がいいよ。損害賠償をケチられて、こっちが裁判に持っていけば、裁判が終わるまで何年もかかってしまうから、自動車事故で泣き寝入りする被害者は多いんだよ。保険会社は、それを狙って強気になるんだよ。だからヨーロッパでは、被害者になったらいいことは何もないよ。」と言ったのです。

 

結果はまさしくみんなから言われた通りの回答でした。

 

こちらは大好きなオペルカデットをめちゃくちゃにされただけではなく、死ぬ思いまでしたのですから、損害賠償額が、オペルカデットを買った金額の半分以下の80万円という、信じられないほどの不誠実な回答に強い憤りを感じました。

 

さらには、日本の保険会社ならば、どこの保険会社も、事故が起きたら、取りあえずすぐに担当者と加害者が一緒に被害者を訪ねて、「申し訳ありません。」と頭を下げて、少しでも誠意を見せて、被害者の怒りを鎮める努力をしますが、ヨーロッパの保険会社は、担当者が被害者に挨拶に来ないだけではなく、加害者と被害者も絶対に会わせないのです。

 

その方が自分たちに都合がいいからです。

 

ついでに申し上げておくならば、回答してきた80万円という金額すら、全額は支払ってこなかったのです。

 

最終的に僕に送ってきた金額は、半分の40万円だけでした。

 

妻は怒り心頭に達して「40万円しか送ってこないなんて、私たちはバカにされているのよ!こんなの絶対に許せない!何年かかってもいいから裁判で徹底的に戦った方がいいわよ!」と言ったのですが、僕はそんな裁判のために、膨大なエネルギーと時間を無駄に使いたくなかったので(患者さんの治療に専念したかったので)、妻に「もういいよ。もう頭を切り替えて忘れた方がいい。」と言って、妻を説得した結果、最後は妻も忘れることにしてくれたのです。

 

以上が、オペルカデットを買って間もなく、死にかけた事故の顛末です。

 

ちなみに、嘘のような話ですが、けっきょくこの事故後、加害者の顔も相手の保険会社の担当者の顔も、ただの一度も見たことがありません。(笑)

 

日本でこんな酷い保険会社があったら、間違いなくすぐに潰れると思いますが、ヨーロッパでは、どこの保険会社も似たり寄ったりなので、お客さんは我慢するしかないのです。

 

しかもスペイン人は、アメリカ人と違って、何でもかんでも訴えて裁判沙汰にする、という人はほとんどいないので(仕方がないと諦める人が多いのです。)、保険会社も強気になるのです。

 

こういう時に、つくづく日本はいい国だなぁと実感します。

 

続きは次回のお楽しみに!

 

それではまた来週の金曜日にお会いしましょう!

 

みなさんお元気で!

 

スペインのイルンより心を込めて、、、

 

水谷孝