水谷孝のブログ「つれづれなるままに」

みなさんこんにちは!

 

ご機嫌いかがですか?

 

前回からの続きです、、、

 

僕の「幻肢痛」の治療法は、1本の鍼(はり)を右手に持ち、1分間に1ヶ所くらいのぺースで、患者さんの体のあちこちに(鍼灸学校で習った、いわゆる「ツボ」というものは考えずに)、鍼を打ちながら(この場合の鍼の打ち方は、各ポイントに1分間の間に、鍼の深さを時々ゆっくり深く刺入したり浅く刺入したりして深度を変えたり、時々深く浅く刺入する速度を速くして、なお且つ小刻みにスピードをつけたままリズミカルに、鍼の刺入深度を変えたり、時々鍼を廻旋させたりして、患者さんの皮膚や筋肉や神経に異なる刺激を与える、いわゆる「鍼灸術」のうちの一つのやり方です。)、痛みが軽減する(体外にとどまってしまったエネルギーが動く)ポイントを探す、というのが僕の「幻肢痛」の治療法なのですが、このやり方は、言わば真っ暗闇の中で何かを探すに等しいやり方なのですが、直感の助けがあればけっこう簡単に、「幻肢痛」を起こしているエネルギーを体内に戻すポイントを見つけることが出来ます。

 

第一の「幻肢痛」の患者さんの時も、第二の「幻肢痛」の患者さんの時も、この方法で30分くらいでエネルギーを体に戻すポイントを見つけることが出来たので、Aさんの時も「今回も30分もあれば、左足に残ったエネルギーを動かすポイントを見つけることができるだろう。」と簡単に考えていました。

 

とは言っても、それまでに「幻肢痛」の治療経験は二例しかなく、しかも人間の体は一人ひとり違うので、実際にはやってみなければ、どのくらいの時間で痛みを作っているエネルギーを動かすポイントを見つけることができるか、全く分からない部分があるので、念のためAさんの治療も、第一の「幻肢痛」のケースと、第二の「幻肢痛」のケースの時と同じように、次の患者さんの心配をしないで済むように、最後の夜の9時に開始しました。

 

Aさんに「少しでも痛みが軽減したら、すぐに言ってください。」と伝えて、治療を開始しました。

 

結果は、夜の9時から夜中の12時まで、180分間180ヶ所に、休むことなく鍼を打ち続けたにもかかわらず、エネルギーを動かすポイントを見つけることが出来ませんでした。

 

さすがに3時間も右手の親指と人差し指だけで、鍼を動かし続けていたら、親指と人差し指の疲労が限界に達し、どう頑張ってもそれ以上指を動かし続けることが出来なくなったので、Aさんに「申し訳ありません。これ以上続けるのは無理なので、明日また続けましょう。」と言って、翌日来てもらうことにしました。

 

まさか180分間180ヶ所に鍼を打って、結果的に痛みを軽減するポイントを見つけることが出来ないまま、指の疲労が限界に達して、治療を打ち切らざるを得ないことになろうとは予想もしていませんでした。

 

それでも自分の治療法を100%信じていたので「人間の体は複雑だし、一人ひとり反応も違うのだから、自分を信じて明日も頑張ろう!」と自分に言い聞かせて、翌日の治療に臨みました。

 

しかし翌日も結果は同じでした。

 

夜の9時から夜中の12時まで、鍼を打ち続けても痛みは全く軽減しませんでした。

 

それでも「このままでは引き下がれない、絶対に痛みを取ってやる!」という強い気持ちはあったので、Aさんに「痛みが軽減するポイントが見つかるまで、毎日治療を続けたいのですがかまいませんか?」と聞いたところ、Aさんは「私は望むところですが、あなたはよろしいのですか?」と逆に聞いてきたので、僕は「私は痛みが軽減するポイントが見つかるまで休まずやる覚悟です。そして私は絶対に痛みが軽減するポイントを見つけることが出来ると信じています。一緒に頑張りましょう!」とAさんを励まして、痛みが軽減するまで毎日治療することになったのです。

 

しかし結果は惨憺たるもので、土曜日も日曜日も祝日も忘れて、毎日夜の9時から夜中の12時まで、30日間休まずに頑張ったにもかかわらず、痛みが軽減することは1%もなかったのです。

 

自分では「患者さんの苦しみを取り除いてあげたい」という気持ちと、「最後まで戦う」という精神力だけは、誰にも負けないくらい強く持っていたつもりでした。

 

開業以来どんなに治療不可能と思えるような困難な病気でも、患者さんと一緒に闘い、少なくとも患者さんよりも先にギブアップしたことは一度もありませんでした。

 

患者さんは、数回治療して改善が全く見られないと、すぐにギブアップ(治療中止を希望する)するのが普通です。

 

しかしこのAさんのケースだけは、最初は「30分もあれば十分だろう」と思っていたものが、毎夜毎夜3時間も連続で30日間闘って、1%も痛みが軽減しなかったのですから、僕もさすがに30日目には精も根も尽き果て、初めて患者さんよりも先に「もうこれ以上やっても無駄だ。自分にはAさんを救う力はない。もう終わりにしよう」と思ってしまいました。

 

そう思ったら、正直に自分の気持ちをAさんに伝えて、治療を終わらせるのが、せめてもの誠意だと思ったので、その旨Aさんに伝えました。

 

その時Aさんから返ってきた言葉は信じられない言葉だったのです。

 

続きは次回のお楽しみに!

 

それではまた来週の金曜日にお会いしましょう!

 

みなさんお元気で!

 

スペインのイルンより心を込めて、、、

 

水谷孝