※重い内容になります。

不快に思う方は見ないで下さい。

 

 

火葬の日。それまで、にいには“帰ってきた弟”へ会うことが出来なかった。

 

“ちゃんとあいさつしなさい。今まで沢山遊んでもらったでしょう?

ありがとうの気持ち、口にして言わないと伝わらない。今ならまだ『ここに居るから』

おじちゃん、ちゃんと聞いてくれる。今言えないと、もう、おじちゃんに『聞いてもらう』事は

出来ない。だから、後悔だけはしないで。これで最後。火葬が終わったら、

おじちゃんの体はもうこの世から居なくなってしまう。わかる?この意味。”

 

何度、この話をにいににしただろうか。。。

にいには『。。。やっぱり、、いい。。。無理。。』と、そっぽを向いて行ってしまう。

 

やっぱりにいにはまだ無理か。。。仕方ないか。。とも思いつつ。

はやり『弟がいる間に』伝えて欲しかった。

 

葬儀屋さんがやって来て、弟の棺を開け、親族にて、

お別れのお花とお金を棺へ入れた。

それまでは『ここの部屋』にだけは居れないようにと、

ちびさんを遠ざけてたけど。(ろうそくもあるし、危ないから)

今回は私がちびさんを抱っこして、ちびさんもお花とお金を入れた。

ちびさんは『おじちゃんだ』と上手に『お別れ』出来た。

 

そんな私たちを見て、にいにも勇気を振り絞った。。

 

『俺もやる』

 

と、、お花とお金を並べた。

 

やはり何度見ても。。。私には寝ているようにしか見えなかった。

 

親族でバスに乗って、斎場へ向かった。

父は、葬儀屋さんと弟と一緒に。

母はおばさんと並んで座った。

 

斎場に着き、弟はいよいよ、、あの中へ入る。

この世から存在だけではなく、肉体までもなくなってしまう。

 

父や母が大事に育てた30何年。

私と『姉弟として』過ごした今までの月日。

弟の一生懸命生きたこの30何年が、

火葬されることにより、一瞬にて無くなる。

 

何のために父や母は、育ててきたのだろうか?

我が子を送り出すためなのだろうか。

何のために、私は弟の『姉』を今までやってきたのだろうか?

本当にこれ以上虚しい瞬間はないと思った。

 

最後の最後、また弟の顔を覗いたら、、、

あんなに怖がっていたにいにもやって来て。。。

 

にいに『あっ、ママ、、おじちゃん泣いてる!!』

 

え??と思い覗いたら、、、目じりに涙(こういう状態、正しくは涙ではないのかもしれませんが)

昨日化粧師さんが、拭き取った時の涙ではない。

火葬場に来る前、お花を入れたときにはなかった涙。

 

私『おじちゃん、、お別れしたくないのかもね』

 

弟よ。今、ここで泣くくらいなら、、死ぬんじゃないよ。

何で死んじゃったのよ。泣きたいのはこっちだよ。

ズルいな。。。

 

弟は本当は『死にたくなかったかもしれない』。

本当はもっと生きたかったのかもしれない。

『何らかの理由で』死なざるを得なかったのかもしれない。

 

本気でそう思った。

 

どんなに悲しんでいても『その時』はやってきた。

 

『係の人』が弟を、、中に入れ、、扉が閉まり、、、

焼却のボタンを押した。。。

 

途端、、ボーーーーーーーーーーーーと言う着火の音が聞こえた。

 

『終わった』と思った。。

 

もう、弟は、『私の知っていた弟は』弟では無くなる。

母は泣き崩れてその場から動けなかった。

 

幸か不幸か、私はちびさんがジッとしてくれなくて、

泣き崩れている暇なかった。

とりあえず、待合室へ行き、おやつを与え、

いとこと雑談をしていた。

 

いとこ(A)の一人は、別れたご主人が借金があり、

それが原因で別れた。

 

いとこA『〇(私)、私はどうしても△(弟)が課金で借金したとは思えないんだよね。』

私『たぶん、、、課金じゃないと思う。いとこ(弟と年の近い男)はパチンコ屋でよく会ってたって。

  でも、私も、親も誰もパチンコやってたの知らなかったんだよ。それでそんなに借金出来る?

  カードとかの請求も来てたし、パチンコだけだと現金でしょ?』

いとこA『うーん、カードってことはショッピングとか?課金の請求ってどこからされるっけ?

     電話会社??』

 

など、みんなで出来る限りの意見交換がもたれた。。

 

そんな時、いとこが、、

 

いとこA『そういえばさ、私、会社に忌引きの届け出を出した時に、たまたま、その事務員に、

      “忌引きって、、もしかして、、某河川敷の???”って言われてね。。なんで知ってるの?

     って聞いたら、、その事務員の旦那さん、““その方(弟)”と同じ職場で、前の日一緒に現場に行ったのよ。

     で、その後の、、、だから旦那も参っちゃってて毎晩酒飲んでさ、、”って、、』

 

弟が戻って来てから、会いに来た3人のうちの一人、Oさんのようだ。

世の中って狭い。

 

どうせ狭いなら、、、いとこAへお願いした。

 

私『あのね、もし、聞けたらで、いいんだけど、、、弟、パチンコやってたかどうか、その人(Oさん)に聞いてもらっていい?』

 

もし、弟が『家族にだけ』内緒でパチンコにハマっていた。

知らないのは家族だけで、周りの人たちは『周知の事実』だってことはないだろうか??

 

色んな可能性が考えられる今、私は純粋に『弟の最後の悩み、最大の苦しみが何だったのか?』

知ってあげたいと思った。

例え、ここまで来て、『実はパチンコに狂ったただの自滅でした』と言うことになったとしても。。。

 

1時間が経ち、2時間が経ち、、3時間が経った頃。

 

弟は姿かたちを変えて、また、帰ってきた。

初めは『最後だから骨を拾う』と話していたにいにだが、、、

 

刺激が強すぎたのだろう。

 

『やっぱ無理』

 

と、だけ言い、ちびさんを控室へ連れて行ってずっと面倒を見てくれた。

 

おかげで私は、最後、弟と向き合えた。

 

初めは私も怖かった。

 

あの中に入るまでは、、弟は『私の知っている弟』だった。

でも、『あの中から出てきたのは』私の知っている弟の姿ではなかった。

誰かがすり替えてくれてれば、、、

 

実は弟は『あの中に入り』裏から抜けてどこかへ逃げたのでは?

なんて、訳の分からない事を考えたりもした。

認めたくなかった。ここに居るのが本当に『弟』だなんて。

あんなに大柄な弟が、こんな小箱一つに収まるなんて。

 

認めたくなかった。。。

 

でも、、、逃げてはいけない。

 

何も相談してくれなかった弟に

私が出来る唯一最後に出来ること。

 

『弟の全て』を拾ってあげること。

最後の最後まできれいに拾った。

 

 

 

頭部だけは、、、みんな手を付けられずにいた。

頭部は、、真横に一本線が入っていた。

 

そう、化粧師さんが『頭も開いたんですね』と話していた。

 

たぶんそのせいだろう。

 

父が一番大きい部分を、

私と母はその他の部分を。

 

なぜ、私たちはこんな事をしているのだろうか。

ほんの1週間前は誰がこんな光景を想像できただろうか。。。

 

本当に、世話の焼ける弟。

  

 

以前私は話したよね。。。

 

『命』程大事なものはない。と。。。

 

不思議なことに、普段は困らせてばかりのにいにやちびさん。

帰宅するまで、お利口さんにしてくれた。

 

お昼寝時間を当に過ぎていたちびさん。

グズルことなく、帰りのバスの中で、すんなり眠りについた。

『おじさん』の為に頑張ってくれたのだろう。

 

弟にそっくりなちびさん。

今度は向こうから見守ってくれるかな。。。