琵琶螺鈿修理③ 螺鈿接着~修理完了・・・ | 装飾工房『瑞緒 mizuo』よかよかブログ

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螺鈿細工、漆芸品、装飾品、工芸品を制作する福岡の工房。
日々の作業の様子、体験談などをご紹介します。



お預かりしている琵琶の螺鈿修理は、
割れた螺鈿の樹脂接着が完了。
接着部の状態を確認してから、、、


はみ出た樹脂を研いで、、、


全体的にも表面が劣化しておりましたので、
細かめのペーパーで研ぎを入れ、、、表側はこれでOK。


裏面に回った樹脂も研ぎを入れて、、、OKです。


そしていよいよ琵琶本体への螺鈿接着です。
まずはセッティングしてみて、キチッと嵌るか確認です。


各螺鈿パーツは問題ないということで、
接着剤として使う膠づくりであります。。。
膠の材料棒をゴリゴリと削って、、、


小瓶の中に入れ、水を垂らしておきます。


温かい電気温水器の上に一時間ほど置き、、、
膠が溶けてドロドロになったところで、
防腐剤を2滴垂らして、またかき混ぜて、、、


さぁいよいよ接着です!
大きいパーツは特に一発勝負、、、

ドライヤーで温めてドロッとなった膠を
冷めないうちにたっぷり目に一気塗りして、サッとくっつけます。

失敗すると相当厄介ですから、集中力が必要。
予めスマホにスタンバらせていましたが、
この余裕のない場面でよく写真が撮れたものかと。。。(^^;


15分ほど冷ました後に、
ぶにゅっとはみ出た膠を拭き取り、、、


指で軽くたたいて、音を確認。。。
接着が上手く行っているか打刻検査します。


これで覆手前板螺鈿が接着完了!


次に、いまくっつけた覆手前板螺鈿裏側左右に嵌める
爪型の螺鈿を接着です。。。


まずはサッとくっつけて、、、


隙間に膠を練り込みます。。。


はみ出た螺鈿を拭き取って、
爪型螺鈿も完了!!


そして、今回の最大の山場、、、
最も難しい糸巻部分の螺鈿接着を。。。


まずは既存の劣化した膠を拭き取りまして、、、


そこから第1の難関に入ります。。。
実は、糸巻部分の向かって左側にある、
既存の細長い外角ラインの螺鈿が、膠が弱まって
剥がれかかってパカパカと動いているのであります(^^;


テープで仮止めしておりましたが、
これをまず剥がし、、、


水をしっかり裏側まで浸透させ、
非常に細い針でコスコスと、、、(^-^;


しつこくコスコスと粘り強く、、、
既存の膠を水でふやけさせつつ、こそぎ出します。


慎重かつ粘り強いこの作業を終え、、、
新たな膠でしっかりと固定させました。。。


そして、糸巻部分両サイドの螺鈿欠損部に、
補完螺鈿をしっかりと圧着です!

複雑な形状ですので、手先の感覚を頼りに
神経をかなり集中させて一気にくっつけました。
何とか無事接着出来ましたが、
この部分の作業はこれで終わりではありません。。。


既存螺鈿と補完螺鈿の継ぎ目には、、
真珠貝の微粉を指で擦り込んだ上で膠を浸透させ、、、


継ぎ目が目立たなくなる様な補修処置も施しました。


糸巻部分にはもう一つ小さい山場が残っておりまして、、、
糸巻突端の帯状螺鈿に空いた二つの穴の補修を実施です。。。


こちらの穴=凹みには、まず真珠貝微粉を膠で練り込み、
ある程度この穴を埋めた上で、、、


白蝶薄貝の厚手タイプを穴の形状にカットして
膠で埋め込んだ上で研磨し、補修完了です!


非常に小さい穴でしたので、形状カットや嵌め込みに手間取り
思った以上に時間がかかりましたが、、、
何とか補修できて良かったです(^.^)


これで糸巻部分が全て完成!!


海老尾(糸巻の折り返しパーツ)を嵌めても問題なし。

接着修理が完了した後は、新旧螺鈿の違和感を無くす処置も実施。
新しい補完螺鈿は白く初々しく、既存螺鈿は表面が劣化し汚れも付着。
この差異を埋めるため、既存螺鈿の表面を研磨して
それぞれの印象を近づけるようにしました。



これでやっと修理が完了です。
修理完成写真は、お客様へメールでご確認頂き、
ご了承を頂けましたら琵琶をお返しすることに。。。

今回も中々難しいご依頼ではありましたが、
当方でお請けする修理案件にしては
比較的短期決戦にて終えることが出来そうです。

膠は使い方は難しいですが、微妙な表現も可能と分かり、
今回の修理を通して更に新しい技を身に付けることが出来ました。

いつもながら、古い品の奥深さに学ぶべき点は多いですね。
有難いことです(^.^)