螺鈿三段箱の修理(その2)打ち傷直し・・・ | 装飾工房『瑞緒 mizuo』よかよかブログ

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螺鈿細工、漆芸品、装飾品、工芸品を制作する福岡の工房。
日々の作業の様子、体験談などをご紹介します。

本日も、螺鈿三段箱修理の続きを。。。


拭き清掃が昨日までに完了し、
次は螺鈿の修理を、、、と思っていたところ、
打ち傷が思った以上に多く、
傷口周辺の剥がれが広がりやすそうな所も結構ありましたので、
その直しからやることにしました。

螺鈿修理中に傷口が広がるアクシデントが発生する可能性もありますので、
ここは安全策を取って優先順位を「傷直し」に変更です。

打ち傷は様々な種類があります。

 ・コツッと行った丸い凹み
 ・何か線状の物体をぶつけた木の葉状の凹み
 ・尖った物体が当たった点のような凹み
 ・引っかけてダダダ・・・っと帯になったもの
 ・角をぶつけてガサっと傷になったもの
 ・割れ目状の凹み
 ・原因不明の凹み

やはり長い年月を経ますと、モノはそれなりのダメージを受けるもの。
この三段箱も、実に様々な打ち傷があり興味深く思いました。


さて、作業開始。
鋭く研いだ刃で、打ち傷になった部分の漆塗膜を剥ぎます。

だいたい打ち傷になった所は、塗膜と下地の間に空間が出来ており、
このまま修理や塗りを進めても、作業中に剥げて来たり
後々剥離や凹みの原因になったりしますので注意が必要です。


剥ぐと下地が出て来ます。
削った粉の質感や刃物の感触から、下地は木ではなく、
厚み0.2~0.5mmの錆(漆パテ/生漆+水+砥の粉)であることが判明。


細かい打ち傷にも目を向けて、、、

打ち傷部分の塗膜除去は、凹みが酷いものは特に見逃さず、
可能な限り最小限度の範囲で・・・という鉄則で行います。



そして、塗膜除去した箇所、元々剥げていたところへ
今回は生漆:黒漆=3:2の割合で調合した漆を作って、
細い竹串ヘラで塗布して行きます。
余分な漆は綿棒やティッシュで押さえて吸い取り、完了です。

通常は生漆や麦漆で最初の傷口固めを行いますが、、、
既存の塗り厚が薄く、上塗り箇所があまり多くないこと、
劣化した漆塗りの色味の薄さもあって、
仕上げまでの塗り厚も薄く、工程数も少なくなることが予想されましたので、
既存の色味に近く調合した漆で最初から作業することにしました。

修理の場合は、このように特化したやり方を選択することがありますが、
自分が作ったものではないので、品物の状態を良く見て勘を鋭くし、
何が適しているかイメージして、出来るだけ的を外さないようにしています。


およそ1時間ほどで傷口固めが完了しました。
全部で50カ所はあったでしょうか。。。(;'∀')


今日は相当乾燥していて湿度30%!
これでは漆が乾かないので、、、
湿度60~65%にしたカプセルに暫く入ってもらいましょう。

古い品物は、湿度60%以内での乾燥が望ましく、
何かが起きる可能性がありますので、
湿度70%以上は禁物であります(^^;

つづく。。。