このところすっかり秋めいて参りました。肌寒い日もありますので、体調を崩さぬようご自愛ください。自民党総裁選の候補者から、給付付き税額控除について言及がされるようになりました。本件は9月19日に開かれた、野田佳彦代表および石破総理・斉藤公明党代表が参加する党首会談にて、給付付き税額控除に関する協議体を立ち上げることが合意されたことに依拠しています。
 「給付付き税額控除」という名前だと少し難しそうに聞こえますが、内実は「消費税の負担を軽くして、中・低所得者の生活を支えるシンプルな仕組み」なのだとご理解ください。あるいは「所得税が発生しない場合、消費税の一部がキャッシュバックされる制度」と考えるとイメージしやすいかもしれません。『消費税の負担軽減』に目的を絞っている理由は、消費税は全ての人が同じ税率を支払っているため、収入が少ない人ほど負担が重く感じられるという、逆進性が課題として指摘されているためです。
 具体的には減税と給付を組み合わせた制度のことを指します。所得税の納税額から一定額を控除(差し引き)し、所得が低くて控除しきれなかった人にはその分をさらに給付で補う仕組みです。例えば、10万円の税額控除を実施する場合、納税額20万円の人は税負担が10万円に減ります。納税額5万円の人は、控除しきれなかった分として5万円が支給されます。
 これまで提案した側の説明が不足していたため、残念ながら誤った印象をお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。代表的な誤解の一つに「時間がかかり過ぎる」というものがありますが、給付付き税額控除は既に諸外国で導入実績が多数あり、様々な類型がありますので、制度設計次第では迅速に導入が可能です。例えば所得に関わらず全員一律で5万円税額控除をして、控除しきれなかった分は現金給付するという制度設計であれば、昨年実施された定額減税のノウハウが活用できますので、年単位ではなく数か月で開始できます。給付についてもコロナ時のノウハウがありますので問題ありません。加えて、マイナンバー口座の義務化が必要という言説もありますが、それは個人資産ベースの制度設計をした場合の制約に過ぎません。所得ベースの制度設計であればマイナンバーは不要です。マイナンバー口座が普及してから改めて再設計すれば良いと考えます。
 スピード感が求められる中で始めから完璧な制度を作ることは難しく、改善を繰り返しながらより良い制度に磨き上げていくことが合理的な選択だと理解しています。立憲民主党は私も所属する財務金融委員会メンバーが中心となって、5月から党内プロジェクトチームを立ち上げています。既に財源確保などを含めた実務上の課題を整理し検討を積み重ねていますので、速やかに協議を開始し制度設計をリードして参る所存です。