支持率の低下が続いていた岸田首相が、自民党総裁選に立候補せず、首相を退くと表明しました。重責を担われたことに、まずはお疲れ様でしたと伝えたいです。他方、約3年にわたった岸田政権について冷静に振り返る必要があると考えます。

 まずは経済です。岸田首相は就任当初「新しい資本主義」を掲げていましたが、結局その中身は空っぽのままでした。ロシアのウクライナ侵攻以降、世界的に食料やエネルギー価格が高騰しました。日本では円安による物価上昇が続き、家計や企業の負担となりました。給与は一部企業で上がったものの物価高に追い付かず、実質賃金は26か月連続のマイナスとなり、比較可能な1991年以降の記録で過去最長を更新し続けています。所得の再分配機能を強化して消費拡大を目指すとしていましたが、機関投資家や富裕層のみが潤いました。前回の総選挙で約束していた「分厚い中間層の再構築」は全く果たされませんでした。
 次に旧統一教会への対応についてです。岸田首相は「教団との決別」を宣言したものの、一昨年に公表した党内の自己点検資料は大甘な内容でした。また継続的な調査もしませんでした。解散命令請求を出したこと自体は評価しますが、教団側との関係断絶は不透明なままです。自己点検ではシロだったにもかかわらず、関係性が発覚した盛山文科大臣は、当初「知らない」と否定するも最後は「うっすら思い出した」と述べました。解散命令請求を出す担当省のトップがあいまいな答弁に終始していることからも、いびつな関係の継続が懸念されます。
 最後に裏金問題です。「自民党とカネ」の問題こそ、岸田首相が強みとしていた「聞く力」を発揮すべき場面だったはずですが、その意思決定は独善的な唐突感と強引さが目立ちました。結果として政治資金規正法の改正内容は、企業団体献金の禁止には全く触れず、パーティーも温存させる「天下のザル法」となりました。根本的な問題解決に至っていない中、自身が退任することで幕引きしようとする、姑息な裏金温存策が今回の不出馬表明だったと理解しています。
 今後予想されるのが「ご祝儀相場」狙いの解散です。しかし表紙を変えたとしても、中身が変わるわけではありません。リクルート事件の時も「自民党は変わる」と言い続けていました。しかし36年経った結果はどうでしょうか。変わらない自民党の具体例として、派閥は解消したと言いながらも、総裁選に向けて派閥ごとの動きが復活をしていることが挙げられます。大臣規範を無視して政治資金パーティーをする議員が増えてきています。要は本気で反省をしていないのだと認識しています。自浄作用がなくなった自民党に、お灸を据えなければなりません。
 立憲民主党も同時期に代表選があります。政権交代後に総理大臣となる人物を選ぶ、大切な選挙です。私は師である野田元総理と密に連携をして、代表選に臨んで参ります。