主食が『玄米』から『白米』へ切り替わっていくことで、日本人の食文化が大きく変質してしまったことが見えてきたでしょうか?


その八端となったのは江戸時代中期(元禄時代)であると書きましたが、本格化したのは、言うまでもなく戦後の事でしょう。


例えば大正時代末期、脚気の原因が『白米の常食によるビタミンB1不足』だとわかって以降、当時の識者の間で、熾烈な『主食論争』が展開されています。そこで議論されたのは、主食を玄米にするべきか、食べやすさを考慮して分づき(七分づき米)や胚芽米にするべきかということ。


『この激しい論争の中にあっても誰一人として白米が良いと主張した医学者、栄養学者はいなかった。またあくまでも、日本人の主食は米ということで一致していた。間違ってもパンがいいなどと言い出した学者はいなかった』(鈴木 猛夫)アメリカ小麦戦略と日本人の食生活より。


コメは日本列島に小さな国が生まれて以降、主食として数千年にわたって、食べ継がれてきた『生命の糧』にほかなりません。


そのコメの質が低下してしまうと、生命の質まで低下してしまう。


最終的には七分づき米が事実上の公定米になったわけですが、戦争に敗れ未曽有の社会混乱を経験する中でうやむやになり、とにかく食べやすく流通しやすくという観点からいつの間にか白米のみが流通するようになりました。


しかもやがてその白米すらも、軽視され、アメリカから輸入された小麦を原料にしたパンが学校給食を手始めに全国に普及するようになったわけです。


当時それは『栄養改善』と言われていましたが結果はどうだったでしょうか?


統計データを見るまでもなく、ガンや生活習慣病、アレルギー、うつなどの心の病にかかる人の割合が年々増加しているのが現実です。


残念ながら医学も栄養学もそれを根本的に解決できていないでしょう。


玄米は硬くてまずい、炊くのに手間がかかるといったイメージを持っている人もいるかもしれませんが現在は炊飯器の機能性が向上し、圧力釜などに頼らなくてもごく手軽に玄米ご飯を炊くことができます。


長沼 敬憲