これは2006年、
片想いをしていた頃に書いた私のショートショートの小説作品です( より、再掲)
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「幻」
いっそ狂えたら楽なのにね。
Nはそう言って微笑みながら
新しく作り出したP72型ホログラムに収めた
現実にはもう亡くなって、
わずか1本だけ彼女に与えられた遺髪から
取り出したデータで作り出した
彼の姿を指でなぞった。
ホログラムはその触れた指に微量に反応して
キラキラと光を散らし
彼の幻を作り出す映像の影を少し揺らし
Nの指が惜しげに離れるその軌跡にそって
元通りの”彼”の姿を立ち現した。
ホログラムは壁にはめ込まれたスピーカーの
柔らかな弦の音に反応して
笑ったり、美酒をすする振りをした。
まるでそこに”彼”が存在して、生きている様を見るようだった。
Nはグリンドゥチェアから身を乗り出してその様を見つめるが
ホログラムに触れるとその様は
先ほどのように乱れ、形を失うので
眺めるだけで自分を収めるしかなかった。
ある時彼の幻が
愛の言葉をつい囁いた。
それは相変わらず
壁からの音楽に反応したに過ぎないが
Nは堪え切れず彼を抱きしめた。
その瞬間にNは
ホログラムの彼のデータを収めたブラックボックスを踏みしめてしまい
彼は永遠に消えた。
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