　『たかる』という言葉にはあまりポジティブなイメージがありません。むしろ犯罪の臭いすらするんですが、重罪というより軽犯罪。ちんぴらがしでかすイメージですね。ねえねえ、おっちゃん、俺らにカネめぐんでよー、いいだろー？　けちけちしないでさー、みたいな。（笑

　『たかる』は漢字で書くと『集る』。何かに群れ集まることなので、虫に使われることが多いんです。特にハエ。あーあ、出しっ放しにしてるからハエがたかっちゃってるじゃない。どうすんのよーという感じで。都市部だとハエそのものが激減していますので、『ハエがたかる』は死語化するかもしれません。
　ただ園芸の世界では、丹精込めて育てた草花に虫がたかる嬉しくない事態がよく起こります。特に、図体のでかいのがいっぱいたかると、見栄えが悪いですし、実害も出ます。そういうたかり屋の中でもピカイチで目立つのが、花にたかるハナムグリたち。そのたかりっぷりをご覧いただきましょう。

　オオカナメモチの花にこれでもかとたかっている虫たち。羽を広げて飛んでいるのはほとんどがハナムグリです。
　もともと図体のでかい甲虫が羽をいっぱいに広げて飛びますので、すごい羽音がするんです。スズメバチも飛んできますが、ここまで大挙してたかることはないので、羽音のやかましさから言ったらハナムグリたちの方がずっと上ですね。

　無事オオカナメモチの花に着陸してお食事中のコアオハナムグリ。
　昆虫採集の初心者は、ここらへんから始めるといいかも。なんの道具もいらず、手づかみでなんぼでも捕まえられます。

　コデマリの花の上で食事中のコアオハナムグリ。天気がよければもうちょいぴかぴかに撮れるんですけどねえ……。

　サンショウバラの花で食事中のナミハナムグリ。これくらい光が当たると、しっかり輝きます。とてもきれいなんですが、花はぼろぼろになります。(^^;;

　ノースポールの花で食事中のナミハナムグリ。ハナムグリの仲間は羽の色や斑点の変異が大きく、識別がなかなか難しいです。こいつは、赤褐色がかかっているタイプですね。

　ノースポールの花で食事をしていたヒラタハナムグリ。ハナムグリの中では小型で地味な種類になります。ハナムグリ類としては珍しく、幼虫のご飯が腐植ではなく朽木です。ちなみにメスは朽木から離れないので、花に飛来するのはオスだそうです。

◇　◇　◇

　ハナムグリ類の多くは花粉＆蜜食。花弁をかじることはないはずなんですが、でかい図体で花をごそごそ動き回りますので、花弁を傷めてしまうことがあるんですよね。園芸家にとっては頭の痛いところです。ただ、植物にとってハナムグリ類は大事な花粉媒介者。開花時期に合わせて花にたかるハナムグリたちは上得意様ということになるのでしょう。
　またハナムグリの幼虫には腐植食のものが多く、土を醸成させる重要メンバーなのです。ちゃんと評価してあげないとね。

　花の時期にはうんざりするほどいっぱいいるハナムグリも、花の時期を過ぎると姿を消します。主役は、樹液にたかるカナブンたちになりますね。彼らもぶんぶんうるさいですが。（笑

　　万艘の舟で揺れゐる花潜り

At The Table　by Josh Garrels

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