酒は飲んでも飲まれるなとよく言うけれど祭りは飲まれてもいいものなんだろうか。
筋肉痛と二日酔いで目覚めた午前6時、俺の横には散らかった祭り衣装の上で眠る裸の男の寝顔があった。
ぼんやりと記憶を巡らせて昨晩の記憶を掘り起こす。
昨日は地元の祭りの最終日だった。
祭りと祝い酒でテンションをぶち上げたこの男が俺を呼び止めたのだ。
『前からきみの事めっちゃ好だと思ってたから俺の人生初彼氏になってください!』
『よく分かんねえけどいいよ!』
そして祭りでアドレナリン出まくりのバカと酔っ払いおじさんたちに祝福されてキスをし、そのまんま勢いに任せて相手の家に連れ込まれたところまで思い出すとサーッと顔が青ざめる。
「うわああああああああ!!!!!!!!」
俺のアホ!馬鹿!祭りでアドレナリン出るからってしていい事と駄目なことも分かんねえのかよ!昔からそうだ!祭りで年上のお姉さんに逆ナンされ童貞を捨てたら全然好みじゃなかったり、祭りきっかけで付き合って1か月ぐらいで蛙化して別れたり!
自分の人生の悔いが走馬灯のように駆け巡り、今すぐひもなしバンジーで☆になりたい。
「あー……大丈夫?」
「ヴァッ!」
どうやらご本人のお目覚めだった。
「昨晩はごめんね、ちょっと祭りの勢いで変なこと口走って」
「あっ、いや、俺もお互い様ですし」
昨日は気付かなかったがよく見ると優しげでおっとりした雰囲気だ、年は同じくか少し上らいだろうか。これで女の人だったらめっちゃ好みドストライクなんだけど声と体格で男だとわかるのがきつい。
うなじにはフレッシュな噛み跡やキスマークが残っておりまさか自分が?という不安が沸き上がる。
「……でも、もしよかったら、彼氏続行できないかなあって、思うんだけど、」
「責任取ります!」
全力で土下座をしながら心底思う。
酒と祭りは飲まれるな。


夜のケンミンショーのねぷたベイビーの話から思いついた話