「それを恋と呼ぶんだろうが」
焼酎お湯割りを傾けた飲み仲間が認めたくない事実を突き刺してきた。
「いやいやいや、相手男だぞ?俺ノンケなのはお前も知ってるだろうよ」
「ノンケの男でも男に落ちることはあるぞ、俺がそうなんだから」
「いや、でも、なぁ?」
否定して欲しいという気持ちでごねてみるが、飲み仲間の男は「そんなに認めたくないか」とつぶやく。
「そりゃあそうだろうよ、60近いバツ3おじさんがだよ?下手すりゃ自分の息子ぐらいの年の男に惚れたなんて認められるはずないだろうが」
「でもそのバツ3男に一途に尽くしてくれてんだろその子」
「向こうは仕事で俺の面倒見てくれてんだぞ、じゃなきゃ演技がほんのちょっと上手いだけで生き延びてきた酒飲みバツ3ジジイにモーニングコールから夕食まで面倒見てくれねえだろ」
細く長くで役者をし続けてきただけの俺にいいとこなんか一つもない。
なのに好意と優しさを向けてきてくれるからちょっと俺の脳みそが誤作動してるだけ、そうでなくちゃ絶対危ない。
「それ分かってんならモーニングコールも食事の準備も丁重に断ればいいだろうよ」
「……飯もモーニングコールも心地いいから断れねえんだろうが」
「家政婦さん雇え」
「5人ぐらい頼んだけど全然ダメだった」
「じゃあ諦めろ、君がいないと生きていけない愛してるって頭下げてこい」
「あんないい子の光り輝く人生まで俺の失敗人生に巻き込めるわけ出来るか!」



思いつきで書いたネタ。主人公のイメージは役者の六角精児さん。