「またフラれたんだ」
「うん……」
嘉穂は半ば呆れたように呟きながらも私を部屋に迎え入れた。
中学を出た後、女子ラグビーの名門校である石見翡翠館高校に進学した私たちはともに楕円球を追いかける日々を過ごしていた。
けれど私は楕円球と同じぐらい運命の恋も追いかける日々を過ごしている。
「高校入って半年ちょっとで5人も好きになれるって逆に凄いよね」
「しょうがないじゃん、好きになっちゃうんだもん」
6畳一間にドンと置かれたベッドの硬いスプリングに寝転がって深いため息を吐く。
「あと好きになる子のタイプが徹底して同じだよね。年上で線の細い文系男子」
「うっ……」
痛いところを突かれて思わずしかめ面になった私をよしよしと撫でてくれる。
私が好きになるのはいつも同じようなタイプで、いつもどこか佐藤くんの面影があった。
「初恋の穴埋めにされてるって思えばそりゃあみんなフるよね」
「別に穴埋めにしてるつもりはっ!」
「そう言う風に感じられるのが問題なんだって、もう黙ってラグビーボールと私を恋人にしな」
「なんで嘉穂まで恋人にしなくちゃいけないのさ」
「好きだから」
けろりとそんな台詞を吐いて来た彼女の目はどこまでもフラットで冷静だ。
「そうじゃなきゃ失恋した春賀のために一緒に島根くんだりまで行かないよ」
「……私のために一緒に島根まで来たの?」
「うん、私は春賀とラグビーが好きでここに来たんだから」
「そっか」
それからは少しだけ恋をするペースが落ちたのはまた別の話である。


春賀ちゃんと嘉穂ちゃんの話