四姉妹がそれぞれの事情で家を空ける3日間、竹浪家に泊まることになった。
秋恵ちゃん曰く『一人にしとのが怖い』ということで四姉妹公認のお泊りに、正直動揺が隠せずにいる。
「……という訳でお邪魔します」
「秋恵が言ってた監視役ってそう言うことだったのか」
「です、ね。とりあえず引退したからと言って衣食住に手を抜かせるなとのことで……」
どれだけ信用されてないんだと悲しいような嬉しいような独り言を漏らす豊さんに対し、僕はふとそのまなじりの皴が少し増えたことに気付く。
あと2年もしたら50歳だものなあと当然のことを考えつつ、それでも魅力が目減りしたなどと思えないのはきっと惚れた弱みという奴なんだろうと僕はぼんやりと考えてしまう。
「何か考え事?」
「いえ、引退しても豊さんは魅力的だなあと」
素直にそう伝えると、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてこちらを見つめてきた。
「……サラッとそう言うことが言えるところ怖いな」
「何でですか?」
「もっとそう言うのは胸に秘めておくものだと思うよ」
「でも口にしなくちゃ伝わらないじゃないですか」
言いたいことはいつでも言う。嘘ついたり誤魔化したりしたってしょうがないのだ。
「なんというか、昔から素直な方だったけど今は昔以上に素直になったよね」
「だって僕が豊さんを好きだということを隠しておく必要がないんですから」
豊さんの覆った顔の隙間から、頬の赤みが小さく覗いている。
それが何よりも愛おしく思えた。



ふと思い出したように大学生の佐藤くんと引退した竹浪さん