餅という食い物ほど使い道に困るものはない。
まだ500グラムはあろうかという切り餅のセットを前に俺は溜息を吐いた。
「ほんとどうするかなこの餅……」
年末に合わせて帰ってきた両親が1キロパックを3つも買って客人という客人に雑煮を振舞ったのはいいが、まだ500グラム近く餅が残っていた。
その両親は松の内が終わるとバリへ戻っていったので三人で食うほかないのだ。
カレールーに入れたり、もちきんちゃくを作って鍋に入れてみたり、三枝がネットで見かけたミルクもち(牛乳ともちをレンジでチンして混ぜるだけとか書いてあったが上手くいかなかった)を作ってみたりしてみたがやはり減るもんじゃない。
とりあえず肉うどんに餅を入れて肉力うどんにして食っているがそろそろもちも食い飽きてきた。
しかし放置してカビだらけにするのも何となく気が引けた。
(……たぶん、俺も似たような状況なんだろうなあ)
ラグビーをやめて家にこもったままこうして暮らしているというのは、きっと世間的には宝の持ち腐れなのだろう。
同年代でキャップ持ち(※日本代表として試合に出場した数をキャップと呼ぶ)だっていて、たぶんその気になればまたあの舞台に戻れるのかもしれない。でも、もうあの場所に俺を連れてきてくれる神様はどこにもいないのだ。



……これは、未練なのだろうか。