平成3年、お正月休みがあけるとすぐ入院した。
それまでに本を読んだりして病気に関する知識を仕入れていた。
その結果、
「たとえがんでも初期なら恐るるに足らず」
という心境になっていた。
一通りの検査が終わり、
手術前日に手術の説明が行われることになり、
夫と二人で病室で待っていた。
そこへ看護師さんが呼びに来て、
「ご主人にだけ説明しますから」と夫を連れていった。
私は「なぜ、一緒に説明を聞けないんだろう」と
イライラしながら待っていた。
しばらくして夫が戻ってきて、
「本人にはもう説明してあるからって先生が言ってた」
と言うではないか。
「私聞いてないよ」とあわてて看護師さんに訴え
先生に取り次いでもらった。
小部屋で受けた説明は、そのときの私にとっては衝撃的だった。
ごく初期のがんで子宮だけを取ると思っていたのに、
子宮と卵巣、リンパ節も郭清という広汎子宮全摘術というものだったのだ。
「悪いものになる可能性」とかのレベルじゃない。
りっぱながんで、しかも初期でもない。
私は先生に「本当のことを言ってほしい」と訴えたが、
先生はあくまで「悪性に変わる可能性がある状態」としか言わない。
押し問答に疲れはて、病室に戻ると手術承諾書が渡され
サインしてナースステーションに持ってくるよう言われた。
手術承諾書には「十分説明を受け納得し・・・」という文言があった。
「私は十分な説明受けてないし、納得できない」とサインを拒否。
夫は途方にくれたような顔をしていたが、
しばらくして自分で私の名前を書いて、持っていった。
先生から「必ずサインさせるように」と
厳命されていたらしい。
ナースステーションでは筆跡が違うのに気づかないのか、
気づいても関係ないのか、だまって受け取ったそうだ。
こうして、私は承諾書にサインしないまま、手術を受けることになった。
つづく