映画『愚行録』 | ツケモノえんぴつ

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いろいろな物語に触れて、その時に感じたものを文章にしていきます。
経験も才能も知識もない、素人の感性。

※ネタバレしかありません。注意してください。原作未読。

 

 

 

 

 

 

 

 

登場人物それぞれが歪で、人間の醜さのようなものが煮凝りのように詰まった作品だなぁという印象を受けました。誰もが本当の意味で幸せにはなれないような。

いや、それだけの事をしているからなんだけど。

 

序盤の、武志のバスの席を譲った後の行動についても、

相手に気まずい思いをさせるための行動なのかなと思うと、なんというか後味が悪い。

席を変わるように言ってきたおじさんも、

確かに「健康な人間は席を譲るべき」と決めつけていうのもどうかと思う。

実際見えてなかっただけで、本当に足が悪いかもしれないし、

見えないところに不自由さのある人もいるかもしれないし、

人によって様々な理由もあるから、そもそも強制されることではないのではと思うけれど、

転んだり、足を引きずって歩く行為が咄嗟に出来てしまう賢さが怖かった。

 

私は女性としての立場上、浩樹や同僚の渡辺のしていた行為については

胸を相当ざわざわさせられたので

「いい奴だったのに」と泣いている渡辺に共感はできなかった。

だけど、観ているところが違えば人は「いい人」にも「悪い人」にもなるんだよなぁと

改めて考えさせられた。

それは、淳子と友希恵と孝之の関係の中でも言えることだったと思う。

 

人にはそれぞれ、見せている側面と見せていない側面がある。

人によってどこを見せるのか使い分けているから、

同じ人のことを話していても、なんとなくイメージが食い違う感じ。

食い違いはもちろん、受け取る側の認知も大きく影響していると思うけれど。

そういう状態を「八方美人」と時に表現されることもある。

でも、それは必要な社会能力だと思う。

 

淳子の気持ちはわからなくもないし、主要な人物の中で一番どこにでもいるような人だと思う。

気持ちをストレートに伝えてしまう事を良さとして捉えるのか

デリカシーのなさと捉えるのかは、相手や自分によるものだなぁと。

 

恵美もまた、嫌な感じの女だったなぁと思う。

プライドの高さがそうしてしまうのかなぁ。

この作品は登場人物誰においても好感が持てないなぁと思うけれど、

この人たちの犯した小さな闇や罪においては、

どこで誰がそうなってもおかしくないからこそ嫌な感じがする。

 

 

田向夫婦は果たして幸せだったのだろうか。

あの夫と妻で、うまくいっていたのだろうか。

利害の一致のようなものなのかなぁ。

 

 

はじめ、いろんな人に話を聞きに行って、どう繋がるのか読めていなかったけれど、

徐々に点が繋がっていく感じがぞわぞわとした。

 

ただただ光子の話は胸が痛かった。

そういう大学ではなかったから、自分は経験していないけど、

内部と外部ではカーストがあるというのは世知辛い。

ただ普通に生きていたかっただけなのに、流され利用されていく光子が痛ましかった。

生まれた環境からどうにもならない未来が決まっているのは、

現実でもよくある話なのかもしれない。

昔のほうがもっとひどかったのかもしれないけれど、

生まれてきた場所は選べないから、ただ悔しい。

 

シーンとしてはそんなに多く出ていたわけではないと思うけれど、

満島ひかりさんの印象が強く残っている。

あのか細さも危うさも、切なかった。

武志の後ろめたいような視線も気になっていて、

唯一の家族として仕方なく面会に通っているのかとはじめ思っていたけれど、

淳子の所で想いはあるんだなぁと思ったし、最後のあたりでもしかして子供は??など

いびつな愛かもしれないけれど、それだけが唯一のものだからこそ

二人はお互いから逃れられないのかもしれない。

 

 

観た後にいろいろと考えさせられる作品でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

今回の画像は何にしようかと考えて、いいのが見当たらず、自分の愚行を。

遠出して念願の赤福氷にご満悦でしたが、この後路側帯を踏み外して捻挫。

ダイエット中の食い倒れと旅先でのアクシデントの二重愚行でした。

でもとても美味しかったです。